言葉に踊らされるな 向き合うべきは「お客様が求めること」と「自社に必要なこと」
まずはじめにひとことお伝えしたいのですが、当連載ではもしかすると少し厳しい言葉が出てくることもあるでしょう。しかし、その言葉は何かを批判するわけではありません。ビジネス環境や業績向上が改善の積み上げに起因するように、現状を受けとめて改善につなげていってほしいという願いを込めたメッセージです。
世の中にマーケティングの考えかたやECという商売が浸透する中で教科書のような法則ができあがり、それを見た人々が頭でっかちになりすぎて「自分の頭で考えること」や「目の前にいるお客様と向き合うこと」を疎かにしてしまっているのではないか? と、僕は危惧しています。そこで、当連載では僕なりにマーケティングやECの仕事をする際に忘れてはならないこと、大前提として持つべき考えかたなどについて、お伝えしていければと考えています。
ECの世界に10年以上身を置き、デジタルマーケティングを含むマーケティングについてのさまざまなデータやメディアの記事などを見ていて、よく考えることがあります。それは「専門用語が乱立し過ぎていないか?」ということです。
たとえば、「O2O」「オムニチャネル」「OMO」「D2C」といった言葉は、今突然生まれたものではありません。従来のものの売りかたから徐々に変化を遂げ、流行り始める前から存在する考えかたです。しかし、あたかも「今生まれた新しいもの」として語られ、「今すぐやらねば!」と躍起になる人が出てくる点に、僕は「ちょっとなんだかな」と違和感を覚えています。
もちろん言葉が生まれ、領域や定義が明確になることで役割分担ややらねばならぬことなどが整理しやすい、専門知識のない人にも説明がしやすいとなることはあるでしょう。そのため、こうした言葉を使って物事を語ること自体が悪いわけではないと思っています。
しかし、あくまでお客様が求める形に売りかたを変え、良いサービスを提供し続けるという行為は、昔から商売をしている全員が行っていることであり、行うべきことです。また、正直こうした単語でセグメントをしたがるのは「売り手だけ」と言えます。
お客様にとってはO2OでもオムニチャネルでもOMOでも、サービスが改善されれば「便利だね」となり、使いにくいものであれば「なんか違うね」となるだけです。流行り言葉に踊らされ、「OMO実現に向けて何かしよう」という視点から考えるのではなく、自分たちのビジネスに何が必要なのか、お客様は何を求めているかを軸に考え、取り組みを進めるべきだと僕は考えています。