物流データの活用は足し算の視点で新たな発想を
今回の特集テーマは「Roads to 2025~ブランドを進化させるテクノロジーと顧客交流~」。これを物流にあてはめて考えると、やはり重要になるのがデータドリブン、さらに物流データを活用した購入体験全体のCX向上が欠かせないと伊藤さんは言う。
「物流のテクノロジー活用と言うと、効率化やコスト削減など、まだまだ引き算の発想をされる方が少なくありません。しかしながら、実は物流にまつわるデータを掘り下げて分析してみると、宝の山であることがおわかりいただけると思います。物流データを活用し、顧客満足度を上げていく。そのような取り組みをすることで、物流のテクノロジー活用は引き算でなく、足し算の活動になっていくのではないかと考えています」
たとえば従来の配送の仕組みは、地域の営業所が個別のEC事業者からそれぞれ集荷し、大型のベースに集めてエリアごとに仕分けをして幹線輸送、着地した先のベ ースで再度仕分けされ営業所から配送、という流れである。この仕組みで動いている以上は、最短でも翌日配送にしかならない。だが、データを活用することで当日配送も可能になるのではないかと伊藤さんは考えている。
「蓄積した配送情報のデータを分析し、当社、EC事業者、配送会社の3社で取り組み、当日出荷するオーダーの商品とその配送先住所から、どのルートをたどってお届けすれば、当日中に配送できるかを考え、即日配送の仕組みを作った事例があります。翌々日着から翌日に、翌日着から当日着にリードタイムを短縮したのは画期的だと思います。また、通常の宅配便では扱うことができない、大型サイズの商品を同日中に複数箇所に送り届けることで、1個あたりの配送料を削減した例もあります」
物流関連では、4月26日の日本経済新聞がワークマンは5年以内にECの宅配を全廃し、店頭受け取りのみにすると報じ、話題になった。
「今後10年をかけて全国に1,500店舗を展開するとのことで、3km圏内にかならず店舗があり、そこで受け取ることができる状態を整えたうえでの宅配全廃でしょう。オープンロジでも全国400の拠点を目指しています。物流拠点を網の目で考え、それぞれの配送の仕組みを整えることで、従来なかった物流サービスを提供することは可能だと思います。そのためにも、足し算の視点での物流データの活用は不可欠だと考えます」