Googleは、現バージョン(ユニバーサルアナリティクス)を2023年7月1日に停止すると発表しました。まだ1年以上の猶予がありますので、どのように対応すればいいのかを説明します。2022年3月17日時点の内容です。
なお本記事は、2020年11月4日に公開した記事「本格導入は半年~1年後でいいかも EC事業者目線で考えるGoogle アナリティクス 4」を、執筆時の最新情報をもとに書き直したものです。
前提として年商が数億円までのEC事業者向けの内容です
何百万円がポーンと出せるような企業や、自社内にエンジニアがたくさんいてどうにでもなる企業は対象としておりません。いわゆる店長がいて数人~20人程度の規模を対象にした内容です。大企業は大企業で切り替えの費用対効果を説明しないといけなくて大変かもしれませんが、そこには触れません。
ASPカートを使っている人は本格導入ができない
BASE、フューチャーショップ、ShopifyなどのいわゆるASPのカートではやることがありません。答えは簡単でカート側がGA4に対応していないからです。これからのカートではGoogle アナリティクス設定などの画面でUA-で始まるIDを入力するものが多く、執筆時点ではその設定画面がまだ作られていません。
ASPカートでGoogle アナリティクスを使うと、eコマースや拡張eコマースの設定を自動でやってくれるので便利ではありますが、システム面から考えればカートの部分に影響することになりますよね。カートは購入の肝の部分ですし、ここで不具合が起きると注文が処理できずに大問題になりますので、ベンダー側も簡単には変更することができないです。また、Google タグマネージャー経由で設置したり、テーマやテンプレートに直書きをして設置するにしても、商品ページなどだけでカート部分には設定ができないことが多いです。
GA4をゴリゴリ使いたくても使えない状況ですので、ベンダーからの発表を待っておくのが良いでしょう。
EC-CUBEなど自力で設置できる場合もリスクが高い
カート部分がいじれるとしてもリスクが高いです。というのもGA4の仕様がまだまだ固まっていないからです。工数をかけて設置したあとでそれをイチからやり直すことになる可能性もありますし、マメに変更しないといけない可能性もあります。
どうしてもGA4でないとできないことがない限りは様子見で良いでしょう。しばらくすると有償でもプラグインが出てくるかもしれませんし、ノウハウも公開される可能性がありますからね。
レポート、昨対比が現実的な問題
ここが一番の問題だと思われます。GA4ではセッションではなくてイベントベースになっていますので、計測の考え方自体が変わっています。単純に比較できるものはないので、今まで作成したレポート(報告書)は使えなくなります。そうすると導入後は昨年対比もできなくなります。さらにGA4ではレポートの画面が大きく変わっていますので、今まで取っていたデータがどこにあるのかがわからなくなりますし、ツールを使っていたとしてもそれが使えなくなってしまいます。
社内の報告用にGoogle アナリティクスを使っている企業も多いでしょうし、広告の効果測定にGoogle アナリティクスを使っている企業も多いでしょうが、今までの継続でGA4は使えないと思ったほうが良いです。
レポート画面が大きく変わったと書きましたが、GA4ではあらかじめ用意されているレポートがかなり少なくなっています。探索という機能から自作するか、BigQueryという聞きなれないツールと連携して、データポータルというちょっとだけ聞いたことがあるツールで加工すると、詳細まで見ることができるようになっています。つまり、自力で生データに近いものからレポートを作らないといけないということです。簡単にレポートが作成できるツールを誰かが作ってくれるのを待つか、独学で勉強して作成するしかありません。
現段階での対応
- 既存のGoogle アナリティクスとGA4を併用する
- できる範囲でGA4のタグを設置し取れる限りのデータを取っておく
- コンバージョン、イベントなど今後も使えそうなデータも取っておく
- GA4の変更など最新情報を押さえておいて導入のタイミングを決める
- 代理店、制作会社と情報を共有し必要であればセミナー参加、勉強会を開く
- レポーティングに必要な項目を洗い出しデータポータルなどで作成できないかを検討する
という対応が良いかと思います。
完全なデータではなくても過去のデータがあれば、ある程度は比較することができます。eコマース機能は使えないもののコンバージョンは設定できるので、完了画面にタグが設置できればGA4を導入してデータを取っておくと良いですね。
移行に関してはこちらの記事が参考になります。
代理店、制作会社との情報共有は今から始めたほうが良いです。代理店とはGoogle 広告連携をしている場合に調整が必要です。現在どのようなことをしていて、どのようにデータを活用しているかを把握し、GA4で取得しないといけないデータを調べます。
制作会社とはタグの実装について打ち合わせをしましょう。ブログなどのカートの機能で設置していないページもあったりしますので、どこにどのような修正が発生するかを把握して費用も出してもらいましょう。これを機に、Google タグマネージャーを導入する場合もあるでしょうから、そこについても検討が必要です。
最新情報はこのあたりを見ておきたい
最新情報を押さえておくのも大切で、急にたくさんのことを覚えるよりはちょっとずつ変化に対応していったほうが楽です。最初は長い時間画面に向かうことで慣れてきますので、産みの苦しみだと思って我慢して使ってみてください。私も重い腰を上げて半日ぐらい操作していたらわかってきましたので。
フォローしておきたいTwitterアカウント
HAPPY ANALYTICSの小川さんの資料は必須
こちらにある「Google Analytics 4」説明資料です。変更があると更新されますので前述の小川さんのTwitterをフォローして見逃さないようにしましょう。
アユダンテさんの動画もチェック
こちらにGA4への移行やeコマース設定の動画が公開されています。今後も更新されると思いますのでチャンネル登録しておくといいですね。
営業電話に注意!
しばらくは情報が錯綜するでしょうから間違った情報に振り回される可能性もあります。特に今すぐ移行しないといけないのでこのサービスを!みたいな営業電話には気をつけましょう。GA4の機能を利用して……も怪しいです。仕様が定まっていない状況でそれを利用したサービスが出てくるとは考えづらいからです。
前述のように既存のパートナーと相談していれば焦ることはありませんので、知らない人よりも知っている人を頼りましょう。
GA4時代のECサイト分析はどうする?
今までは直帰率、かご落ち率、コンバージョン率などデータをひと塊にして見てきました。これからはこの流れを踏まえて、ユーザーの行動も重点的に見ていく必要があります。GA4では「測定機能の強化」の機能を使えばスクロール、外部リンクのクリック、サイト内検索、動画の視聴、ファイルのダウンロードを自動で取得してくれます。よりユーザーの細かい行動を見ることができるようになるということです。
商品ページを見たユーザー、ではなくて、商品ページを見る→30%スクロールする→動画を50%まで見たユーザーなどを見ていかないといけません。お店に入って、ぐるっと店内を回った後に、ある商品をじっと見たユーザーと同じように、実店舗の接客に近いイメージになってきました。量に頼った機械的な接客は通用しなくなってきます。
先に述べたようにレポートもあらかじめ用意されたものではなくて、自分たちで作成するものとなっています。見たいデータが決まっていないとレポートを作ることすらできませんので、形式だけの無駄なレポートになっていないか?売上に影響しない無駄なデータを取っていないか?などを振り返りつつも、今まで以上にKPIを決めることが重要になってきます。
自分たちのお客様像を明確にして、その人たちがどこで困っているのか、どこに満足しているのかをGA4のデータから読み取っていきましょう。