なぜ?を問う 定性データから顧客の声を
「カスタマーリングス」は、日本発のCRM/MAツールとして9年の歴史を持つ。先進的な取り組みを行う企業とともに、CRMの成功実績を積み重ねてきた。一方で、次々と登場する新たな広告プロダクトをはじめとする新規獲得施策のほうが目立ちがちだったのも事実。コロナ禍や国を挙げてのDX推進を経て、CRMへの意識は変わっただろうか。
「コロナ禍以前は、社内に散財するデータを統合管理する第一段階でしたが、最近は管理されたデータを活用する第二段階に入っています。そもそもデータを統合管理する目的は、データを活用した施策により新たな価値をお客様に提供するためですが、手段が目的化に陥っていました。歴史があり企業規模が大きくなるほど、社内のあちこちに大量のデータが散在していたため、データ統合プロジェクトが大掛かりになったという背景もあります」
データを活用したCRMを行う上で重要になるのは、定性データを重んじることだと言う。
「定量データの重要性はご理解いただけることが多いのですが、それだけに限定すると、次はどのような施策を打つべきかの示唆が生まれてこないのです。なぜ頻繁に購入してくださるのか、なぜ突然購入をやめてしまったのか、お客様がその行動に至った理由を考えることが示唆が生まれるきっかけになります。単価、頻度、回数といった定量データによる顧客分析だけでは、CRMはなかなかうまく進みません」
実は、オフラインの接点を持つことができた時代は「なんとなく」それを感じ取ることができていた。しかしコロナ禍で非対面接触が中心となり、その機会が激減したのだ。カスタマーリングスのユーザー企業は、その機会を補うように7割がアンケート機能を利用するようになっている。「お客様の声を聴こうという姿勢の表れだと理解しています」
先進企業がCRM第二段階に入ったとして、コロナ禍ではじめてデジタライゼーションを進めた企業は、そろそろCRMへの取り組みを検討する時期だろうか。実際、そのような企業からの問い合わせも増えていると山崎さんは言う。
「CRMの経験がないためノウハウを知りたいといったご要望もいただきますが、私自身は、CRMのノウハウはその企業でコツコツと蓄積していくべきものだと考えています。他社の成功事例を模倣するところから始めるのもひとつの手ですが、それはあくまで穴埋め。穴埋めを終えたら、自社なりのCRMの試行錯誤を重ねていくべきです」
飲食や観光業など、コロナ禍で打撃を受け、従来はアナログ中心だった業界でも、デジタルに積極的な企業からも引き合いがあると言う。
「オフラインでお客様と接してこられたからでしょう、顧客理解の重要性をお伝えするとすぐにご理解いただけます。デジタル、DXと頭でっかちにならず、本質的にはオフラインでやってきたことをデジタルでも実行するだけですよね」
しかしながら、CRMにおけるプッシュチャネルは、メールに加えてLINE、アプリ、SNSなどさまざまある。初心者ほど、何から始めれば良いか混乱するのではないだろうか。
「全部やるのはもちろんたいへんです。しかし、本当に全部やらなくてはいけないのでしょうか。流行っているから、他社がやっているから取り組むのであれば、模倣にすぎません。当社のユーザー企業にサンスター様がいらっしゃいます。さまざまなチャネルに積極的にお取り組みになるので理由をお尋ねしたところ、『お客様の多様性を重んじ、お客様が使いやすいと感じるチャネルを増やすことは企業努力である』とのことでした。同じデジタルチャネルを増やすにしても、なぜ増やすのかの理由が重要なのです」