レジ袋有料化の基礎知識
レジ袋有料化の効果を検証する前に、まずは基礎知識を押さえておきましょう。
レジ袋有料化の背景と目的
レジ袋有料化は脱プラスチック・脱石油を背景に、環境保護を目的として実施されました。
2018年にG7(先進国首脳会議)で採択された『海洋プラスチック憲章』など、国際社会は脱プラスチック・脱石油に積極的に取り組んでおり、後れを取らないようにと全国で実施されたのが、レジ袋の有料化です。
経済産業省は『プラスチック製買物袋を扱う小売業を営む全ての事業者が対象』とし、スーパーマーケット・ドラッグストア・コンビニエンスストアなど、私たちの生活に密着した事業者が対象となっています。

有料化対象と対象外のレジ袋
レジ袋と一口にいっても、実は有料化の対象となるレジ袋は定められています。有料化対象となるのは、持ち手のついたプラスチック製の買物袋です。持ち手のないプラスチック製の袋や、紙袋などは有料化の対象ではありません。
また、持ち手のついたプラスチック製買物袋でも、以下の条件の買物袋は有料化の対象外となっています。
条件 | 理由 |
---|---|
厚手のもの(プラスチックのフィルムの厚さが50マイクロメートル以上) | 繰り返し使用できるため、プラスチック製買物袋の過剰な使用を抑制できる |
海洋生分解性プラスチックの配合率が100%のもの | 微生物によって海洋で分解されるため、海洋プラスチックごみ問題対策に寄与する |
バイオマス素材の配合率が25%以上のもの |
植物由来がCO2総量を変えない素材のため、地球温暖化対策に寄与する |
出典:経済産業省「レジ袋削減にご協力ください」
レジ袋有料化の効果・メリット
レジ袋有料化によって、どのような効果・メリットが得られたのか見ていきましょう。
生活者の行動・意識の変化
レジ袋有料化により、生活者の行動や意識が変化したのは事実です。チラシ・買物情報サービス「トクバイ」を運営する株式会社くふうカンパニーが2024年9月に行った調査の結果「【トクバイ × Zaim調査】10月は3R推進月間!有料レジ袋は約75%が「購入しない」と回答。有料化から4年、生活者の行動・意識に変化」を基に解説します。
バック持参率が大幅アップ
本調査では、買物の際にいつもマイバッグを持参している人の割合が85.4%という結果になりました。ときどき持参しているという人は12.0%で、合計すると97.4%の人がマイバッグを持参しているようです。
有料レジ袋を購入しない人が75%
有料となったレジ袋を購入しているか聞いたところ、39.3%が「まったく購入しない」、36.0%が「ほとんど購入しない」となり、75.3%が有料レジ袋は購入しないことがわかりました。
一方、「ときどき購入する」は19.8%、「よく購入する」は4.9%で、その理由は「マイバッグを忘れたとき」が最も多い結果となっています。
レジ袋有料化は時代の流れと受け止める人が5割弱
レジ袋を有料化している店に対する意識をたずねると、「時代の流れとして当然のことと思う」という人が約半数という結果に。多くの人が、レジ袋有料化を受け止めているようです。
プラスチックごみの量の削減
生活者の行動・意識が変化しましたが、実際にプラスチックごみが減って環境保護につながっているのか気になる人も多いのではないでしょうか。
日本経済綜合研究センター『包装資材シェア事典 2021年版』によると、レジ袋有料化前の2019年はレジ袋の国内流通量が約20万トンでしたが、有料化後の2021年には約10万トンに減少しています。
レジ袋の流通量が半減したということは、その分プラスチックごみも減っていると捉えて良いでしょう。

レジ袋有料化のデメリット
レジ袋の有料化により、生活者の行動や意識が変化してレジ袋の流通量も減少していますが、デメリットともいえる問題も散見されるようになりました。
ごみ袋購入者の増加
レジ袋有料化は、プラスチックごみ削減の取り組みとして行われたものですが、実施後に増えてしまった新たな問題があります。それは、レジ袋の代用品を利用する人が増えたことです。
もともとレジ袋は、買物の後にごみ袋として再利用している人が多く、レジ袋がもらえないことで「家庭のごみ袋がないと困る」という声がありました。
レジ袋は無料だったから使っていたけれど、有料化されてしまってごみ袋がないと困るため、100円ショップなどでレジ袋と同じような袋を購入する人が増えたのです。
100円ショップの袋は、通常のレジ袋とほぼ同じものです。もらうレジ袋は辞退しても、レジ袋を使いたいから単価の安い代用品を購入していてはプラスチックごみが削減されるという結果にはつながらないことになります。
万引きの増加
レジ袋が有料化してから、万引きが増えたというデータもあります。
静岡県警生活安全企画課の調査では、2020年1月~6月における万引きの認知件数が月平均で188件だったのに対し、有料化後の7月は213件、8月は222件と増加したという結果になりました。
買物の際にマイバッグを持参するのが当たり前になったことで、買物中にマイバッグを持ち歩いている人も見受けられるようになりました。精算前でもマイバッグに商品を入れやすくなり、万引き犯にとって都合の良い状況となってしまったのです。
エコバックは環境に良い?悪い?
プラスチック製のレジ袋が有料化されたことに伴って、エコバッグの持参率が増加しています。エコバッグはエコロジーを目的としたバッグで、買物などの際にレジ袋の代わりに商品を入れる袋を指し、「マイバッグ」ともいわれます。
レジ袋とエコバッグならエコバッグの方が環境に良さそうなイメージがありますが、実際はどうなのでしょうか。
エコバッグは環境に良くないといわれる理由
レジ袋のかわりに利用されるエコバッグは、プラスチック製の袋より環境問題に良くないとも言われています。 エコバッグの製造過程で排出される物質は、レジ袋の製造過程よりも大気・水質の汚染物質の排出が多く、リサイクルも難しいといわれているのです。
繰り返し使えるという点ではエコバッグは非常に優れていますが、製造過程や輸送などを考えると、レジ袋の方が環境に良いとされています。
近年では大きさ・素材・形状などに工夫を凝らし、使い勝手の良いエコバッグが多く販売されていますが、確かにリサイクルのことを考えると、レジ袋よりも環境に負担がかかることは想像できます。
環境に配慮したエコバックとは
レジ袋を辞退するためにエコバッグを持参するのは悪いことではありませんが、素材に気を付けなければ環境問題につながりかねません。そのため、環境に配慮したエコバッグの使用をおすすめします。
環境に配慮したエコバッグとは、製造・廃棄過程で多くの二酸化炭素を排出するポリエチレンや、製造時に大量の水資源を消費しなければならない綿(コットン)などの素材を使わないエコバッグです。
たとえば、ブルーシートをアップサイクルしたエコバッグや、米袋をリメイクしたエコバッグなどがあります。また、廃棄されたプラスチックを使用した再生原料を使用したエコバッグを開発している企業も見られます。
このようなエコバッグを使用することで、環境問題の改善へとつながるでしょう。
レジ袋有料化の効果は消費者の意識がカギ

レジ袋有料化は、店舗におけるレジ袋の消費量や流通量の削減としては、一定の効果が見られています。レジ袋有料化の効果を高めるには、『レジ袋をもらわないこと』だけにフォーカスするのではなく、さらに『レジ袋を使わない』という意識に変えていかないと、いつまでたってもプラスチックごみの削減にはつながらないといえるでしょう。
また、レジ袋の代わりに使うエコバッグに関しても、環境に配慮した素材のものを選ばなければ環境問題へとつながるリスクがあります。2024年には、大手コンビニエンスストアが、プラスチック製のスプーンなどのカトラリー有料化の取り組みも始まり、紙ストローなどもよく目にするようになりました。
レジ袋やカトラリー有料化などの効果は、今後消費者の意識がどこまで変化することができるかという点にかかっているのです。