衣服生産にデータ連携と円滑なコミュニケーションを
2014年3月に熊本県熊本市で創業したシタテル。創業の経緯について河野氏は、「同市内のセレクト形態の小売店舗のオーナーが抱える、多品種・小ロット生産ができないという悩み相談がきっかけだった」と話す。
「小規模のアパレル企業では在庫リスクなどの観点から、ひとつの商品に対して50枚単位で生産するなど、比較的小ロットでの発注に需要があります。しかし、生産工場にこうした依頼を引き受けてもらえないと悩む企業の声もよく耳にしていました。そこで、依頼が通らない理由を調査したところ、発注時期によっては小ロット生産も可能だと判明しました」

生産工場の稼働状況は、大企業などの大ロット生産の依頼によって大きく左右され、繁忙期と閑散期の差が激しいことが判明。閑散期ならば小ロット生産も引き受ける生産工場も見つかったため、河野氏は各工場の空き状況を把握し、そのデータを可視化することでアパレル企業の悩みを解決できると考えた。また、生産工場では閑散期でも機械の維持費用など固定費が発生しているため、アパレル企業と生産工場の需給をつなぐことは、どちらにとってもメリットが大きいと判断し、両者をつなぐネットワークの構築を開始した。
シタテルでは、このネットワークをを拡大し、生産工場以外にも生地や副資材を提供するメーカーともつながるなど、衣服生産の自由取引を実現するプラットフォームを構築してきた。現在では、同ネットワークに登録する衣服・ライフスタイル関連企業は約2万2,000社ほど。そして、その生産を支えるサプライヤーは約1,500社存在する。
また、同社はサプライヤーネットワークを構築する中で、クラウドを活用した生産ワークフロー支援も開始。アパレル企業とサプライヤーのコミュニケーションをデジタル化し、業務効率を改善するパッケージとして2020年4月より「sitateru CLOUD 生産支援」を提供している。
「改めてアパレル企業やサプライヤーの課題を見直したところ、分断されたサプライチェーンにより、各所でデータ連携が適切にされていないことが大きな要因だとわかりました。いわゆる川上、川中、川下の工程がそれぞれ個別に最適化されており、各企業のコミュニケーションまでもが複雑化。業務効率の低下を引き起こしていました。こうした課題を解決し産業構造そのものを変え、サプライチェーン全体の最適化を実現すべく、クラウドを活用してデータ連携とコミュニケーションをスムーズにする『sitateru CLOUD 生産支援』の開発および提供を行っています」
河野氏は、従来のアパレル業界における企業間のコミュニケーションとして、電話やFAX、メール、個別のチャットサービスなどを活用したやり取りが複数回に渡り行われることや、状況に応じて複数のコミュニケーションツールを使い分ける必要があるなど、データ連携や一元管理がされていないことによる工数増大が課題となっていたと話す。また、それにより企画から商品化までのリードタイムが増幅することで、市場の需要を即時的確に反映した商品展開が難しいケースも発生していた。
「sitateru CLOUD 生産支援」では、仕様書・原価など商品に関するデータ管理や、企業間のコミュニケーションをすべてクラウド上で完結させることで業務工数を削減し、生産性の向上を実現する。また、業務工数の増大によるミスや事故を削減するほか、商品展開のスピード向上による受給ギャップの削減、消化率向上も目指す。こうしてサステナビリティな産業構造構築につなげていくことも、シタテルが担う重要なミッションだと河野氏は言う。

さらに河野氏は、シタテルのプラットフォーム上で実現できることとして、ワークフロー支援のほかに大きくふたつの軸を持っていると続ける。ひとつは生地などの資材を売買できる「マーケットプレイス」としての役割だ。生地や副資材メーカーなどのサプライヤーが自社の商品を出品し、アパレル企業が購入するといったBtoB向けECモールのような機能を有する。同機能においてシタテルは、中小事業者向けに地球環境に配慮した素材を積極的に扱う取り組みも大手企業と連携し、実施している。
そしてふたつめの軸は、シタテルが創業当初より構築していたサプライヤーや様々な企業との「ネットワークを連携」させた機能だ。サプライチェーン全体の企業間取引を円滑にするネットワークとしての役割を持つと河野氏は語る。
「従来のアパレル業界では、アパレル企業起点でサプライヤーとの単一取引が開始される構図が一般的でした。この構図では、アパレル企業が新たなサプライヤーと取引をする際、ウェブで検索した生産工場に電話で交渉し、そこからすり合わせを行うなど不確実で手間がかかる方法を採る必要があります。また、サプライヤー側としてはアパレル企業の発注を待つ姿勢となるため、自ら積極的に仕事を獲得することが難しい状況でした。これでは、技術力があってもあまり名の知れていないサプライヤーが活躍できずに事業縮小を迫られる可能性が生じてしまうと考え、アパレル企業の手間を解消しつつ、サプライヤー側が自社を売り込むことができるネットワークの構築に注力しています」