アパレルECの特徴は「運営難易度の高さ」「モールの多さ」
――アパレルECの特徴や、運営するEC店長がまず意識すべきことをお教えください。
アパレル業界にもさまざまなブランド形態が存在するため一概には言えませんが、一般的にアパレルECは、他ジャンルに比べて「同一商品を継続的に販売することが難しい」という特徴があります。型番商品を除き、流行の変化などによってシーズンごとに展開する商品が変わるため、商品登録や在庫管理、キャンペーン施策など、運営にかかる工数が非常に多いジャンルだと言えます。
「ささげ業務」という言葉がアパレルECを中心に使用されていることや、EC運営委託事業がアパレルECから発展してきたことを考えると、同ジャンルにおけるEC運営の難易度の高さがうかがえます。ただし、数千・数万個単位で生産が必要なケースも多い電化製品ECや、食品衛生責任者などの資格が必要な食品ECと比較すると、参入障壁がそれほど高くないこともアパレルECの特徴のひとつです。
また、アパレルと他ジャンルのECで、もっとも大きな違いだと言えるのは、対応するECモールの数がアパレルだけ圧倒的に多いことです。同ジャンルには、ZOZOTOWNやMAGASEEKをはじめ、ルミネが運営するi LUMINEや三井不動産グループの&mallなど、あらゆるECモールが存在します。単一ジャンルだけで成立するECモールがこれほど多いのは、アパレルくらいだと言えるでしょう。
そして、こうしたアパレルECモールは、Amazonや楽天市場などの管理で利用する受注管理システム(OMS)と連携できないケースも多々あるため、「ALIS(アッカ・インターナショナル)」や「SCS(ダイアモンドヘッド)」など、アパレル特化型OMSが存在しています。ただし、他ジャンルのECモールなど、アパレル特化型OMSだけでは管理できない出店先もあることから、OMSをふたつ導入している企業もめずらしくありません。さらにZOZOTOWNは、そもそもシステム連携ができない仕様となっているため、独自開発のシステムを用いて、他チャネルとのデータ連携を実施するなどの支援もコマースメディアでは行っています。
このようにアパレルECは、商品展開の特徴からささげ業務が多いことに加え、さらにそれらを複数ある出店先に対応させるという2重の手間がかかります。これを前提とした上でいかに工数を削減し、効率的な販売を実現できるかが同ジャンルのECを成功させる重要な鍵となるでしょう。ECモールに出店する場合も、手当たり次第に出店するのではなく、自社の顧客と親和性の高い場所はどこなのかを想像し、適切なECモールのみを選択することをお薦めします。
また、ECモールを選択する際にもうひとつ重要な視点となるのが、「ECモールの施策に適応できるかどうか」です。ブランド認知拡大が重要なアパレルECにとって、集客力のあるECモールへの出店は、有用な戦略のひとつだと言えます。しかし、一方でたとえばECモール独自のセールが行われるなど、必ずしも自社の意思だけでコントロールできないケースも往々にして発生します。各ECモールの施策を理解し、セールになったとしても利益を残すことができるか、ブランディングに影響しないかなどをあらかじめ考えておくことが大切です。