ハンドメイド作品でも品質表示は必要?
個人が作製するハンドメイド作品であっても、品質表示の必要な場合があります。次の4つの製品に関しては、「家庭用品品質表示法」で定められた情報を品質表示として明記しなくてはなりません。
繊維製品
洋服やタオルなどが該当します。品質表示には素材とその割合、洗濯などの取り扱い方法、はっ水性の記載が必要です。ハンドメイド作品の中でも取り扱うケースが多いため、よく確認しましょう。コートやスカートなどの洋服には縫い付ける必要がありますが、ハンカチやポーチなどの小物類は下げ札につけておけば構いません。
雑貨工業品
石鹸、入浴剤のほか、革製のバッグやサングラス、漆器なども該当します。繊維製品に次いでハンドメイドで取り扱うことが多いので、該当する人は必ず確認してください。表示義務の内容は製品ごとに異なりますので、この点にも注意しましょう。
合成樹脂加工品
主にペットボトルや容器といったプラスチック製品のことを指し、ハンドメイド作品としては取り扱いが少ないジャンルです。製品によって素材の種類、耐熱・耐冷温度、容量・サイズ、取り扱い方法などを記載します。
電気機械器具
洗濯機、冷蔵庫、エアコンなど電化製品のことを指します。ハンドメイドで取り扱うケースは少ないですが、該当する場合はしっかり品質表示を行いましょう。
いずれの場合も表示者名と連絡先を記載しなくてはならないことに注意が必要です。今回は、ハンドメイド作品の中でも特に取り扱う人が多く、表示内容がほぼ一律である繊維製品の品質表示についてご紹介します。
品質表示しなくても良い製品がある?
ハンドメイド作品の中でも、上記に当てはまらない製品は、品質表示に法的な規定はありません。例えば、ぞうりやアイピロー、舞台用衣装としての帽子などは家庭用品品質表示法の対象となりませんので、法律上は品質表示をしなくても販売して良いことになります。
表示者名は必要なの?
品質表示の「表示者名」や「連絡先」には、法人でない限りは個人名を表記し、連絡先には固定電話を表記しなくてはならない、と規定されています。これは、個人でハンドメイド作品を販売する人にとっては個人情報を公開することになり、表示したくないと考える人も多いことでしょう。
このため、品質表示を行う際には、「消費者からの問い合わせがあれば遅滞なく情報を開示する」という意思があり、かつ、その措置を講じているのであれば、必ずしも個人の住所や本名、固定電話の番号などを記載しなくても構いません。これは消費者庁の「特定商取引法ガイド」に詳しく記載されています。
とはいえ、消費者からの問い合わせに遅滞なく対応するためには、メールアドレスや携帯電話番号など、公開しても構わない連絡先を記載しておくことは忘れないようにしましょう。
ハンドメイドの洋服に品質表示する方法
では、実際にハンドメイドの洋服に品質表示をする場合、どのような情報が必要なのでしょうか。ここでは、必須項目の1〜4に加え、表示者の判断に任されている5〜8の項目についても説明します。
[1]繊維の組成
使っている繊維の種類と、その割合を%で表記します。各繊維の名称は国ごとに定められており、日本では消費者庁が「繊維の名称を示す用語」で示しています。割合の多いものから順に、以下のように記載しましょう。
- 表地 綿 70%, ポリエステル 30%
- 裏地 綿 100%
[2]取扱い絵表示
洗濯絵表示とも呼ばれ、平成28年12月から世界共通の絵表示に変更されました。繊維製品の適切なお手入れ方法を表すため、品質表示の中でも非常に重要な項目です。組み合わせの順序は、以下の番号順に左から右に並べることが決まっています。
- 洗い方
- 塩素漂白して良いかどうか
- 乾燥方法(タンブル乾燥の可or不可)
- 乾燥方法(自然乾燥の可or不可)
- アイロンのかけ方
- クリーニング(ドライの可or不可)
- クリーニング(ウェットの可or不可)
これら7つの記号のうち、省略されたものがあればそれは「該当の処理が可能」という意味になります。もし、絶対にしてはいけないことがあれば、必ず絵表示を記載しておきましょう。
[3]表示者名、または名称
作製者の名前や屋号、法人の場合は会社名のことです。ハンドメイド作家の場合は個人名を指し、原則として俗称やニックネームは認められません。ただし、前述のように遅滞なく速やかに開示する意思と措置があれば、品質表示タグに記載する内容はハンドルネームや屋号でも構いません。
[4]連絡先
原則として、住所または電話番号のいずれかを記載する必要があります。表記する内容は次の通りです。ただし、速やかに開示する意思と措置を示してあれば、メールアドレスやホームページのURLを記載しても構いません。
住所
都道府県名から部屋番号まで省略せず、すべてを表記する
電話番号
市外局番からすべてを表記する。フリーダイヤルは可能だが、FAX・PHS・携帯電話などは不可
[5]品番・サイズ
品番やサイズの表記があると、商品が管理しやすくなります。また、購入者にもサイズが一目でわかりますので、親切でしょう。
[6]取扱いに関する文章
主に洗濯絵表示では伝えきれない内容を表示する場所です。「陰干ししてください」「色移りに注意してください」など一言表記があると、洗濯トラブルの防止になります。
[7]ロゴ
独自のロゴがあれば、ぜひ使いましょう。作家名や屋号を覚えてもらいやすくなります。
[8]原産国
「MADE IN JAPAN」などの表記のことを指します。これも義務ではありませんが、あえて表記しておくのも良いでしょう。
ハンドメイド作品の品質表示タグの作り方
最後に、ハンドメイド作品の品質表示タグの作り方をご紹介します。自作する方法と会社に注文する方法の2種類がありますので、お好みで選びましょう。いずれの場合も、洋服の場合は出来上がったタグを縫いつける、貼りつけるなど、簡単に取れないようにする工夫が必要です。
自作する場合
自作する場合は、インクジェット対応の布製シートや布シールなどを使って作成すると良いでしょう。使いたい布が決まっている場合は、シルクスクリーンなどを利用して作る方法もあります。
※シルクスクリーンとは…版画の一種。メッシュ状の版を作り、孔の部分にだけインクを通すことで印刷する技法。
注文する場合
アパレル系のラベル・ネームを作成する印刷会社、タグ制作を専門としている会社に注文することもできます。小ロットからでも取り扱いできる会社もありますので、必要な枚数を注文しましょう。
カスガイ株式会社
50枚500円から注文可能。テープの素材はナイロンかポリエステルから選べるほか、品質表示の内容は注文サイトに入力するだけで簡単に作れます。
Precious Infinity Japan inc.
サンプル用の1枚から注文可能。品質表示の内容に迷ったときは、繊維製品品質管理士に相談することもできます。
ハンドメイド作品でも、品質表示義務を守って安心・安全に販売しよう
ハンドメイド作品であっても、家庭用品品質表示法で定められた内容をきちんと表記する必要があります。また、個人情報保護の観点から住所や連絡先を必ずしもタグで公開しなくても構いませんが、問い合わせがあればすぐ開示できるよう準備しておきましょう。
品質表示義務は、購入者に作品を末長く快適に使ってもらうためのものでもあります。ぜひ、正しい品質表示でハンドメイド作品を愛用してもらいましょう。