クラウドファンディングサービスは日本にもいくつかあるが、アニメ映画『この世界の片隅に』を生み出したことで、クラウドファンディングそのものを、広く知らしめる役割を果たしたのが「Makuake」だ。2013年5月に、株式会社サイバーエージェント・クラウドファンディングとして設立し、2017年10月にサービス名と同じ、株式会社マクアケに社名変更している。立ち上がったプロジェクトはすでに3,000を超える。
Makuakeでいくつかプロジェクトを見ると、思い描いていたクラウドファンディングのイメージと違うなと感じる人も少なくないだろう。ガジェットや伝統工芸を活かした小物、日本酒やこだわりの野菜など、ECサイトで販売しているものと比較しても遜色ない「商品」が並んでいるのだ。その感想を伝えると、「サービス開始当初から新しい“ビジネス”が生まれる場にしたかった」と答えてくれたのが、創業メンバーにして取締役の坊垣佳奈さんだ。
Makuakeの商品はなぜ欲しくなるのか
「応援したい」という新しい物欲
魅力的なプロジェクトが次々とアップされ、新たなビジネスが生まれる場になっているクラウドファンディングサービス「Makuake」。
「私は、クラウドファンディングの定義は広いと考えています。日本においては、個人の活動支援や社会貢献活動支援が目的のプロジェクトが強いのですが、世界的に見るとその傾向は特殊で、ビジネスやコンテンツが生まれるきっかけの場として、主に活用されています。Makuakeは当初から、後者を目指そうと考えました。理由は、日本はモノづくり、アニメやマンガなどのコンテンツが強いからです。メーカー企業やクリエイターなら、こういう仕組みを使わない手はないですよね。その領域を担うサービスが見当たらなかったため、私たちが始めたというわけです」
もちろんMakuakeにも個人や社会貢献活動支援のプロジェクトはあるが、サイトを見ていると、小売事業者が取り扱いたくなるような魅力的な商品が多数並んでいる。
「個人活動を応援する場合は、『人』に魅力を感じての支援が多いと思います。Makuakeの傾向として特徴的なのは、支援者の関心となる対象が『モノ』に向かうという動きがあります。『この商品が欲しいから支援する』という物欲になぞらえた形になっている。私たちも、そこをかなり意識してサイトを設計しているし、それぞれのページも作っています。そういう意味では、Eコマースに近いのかもしれませんね」
EC黎明期は、特殊でも一部のユーザーから圧倒的な支持を得ている商品の販売が、ネットだからビジネスになるという要素が強かった。Makuakeのプロジェクトが実際に商品になっていく盛り上がりは、その頃のECへの熱狂を彷彿とさせる。
「これはあくまで私の考察でしかないのですが、情報が増え、Eコマースも増え、何をどこから買ったらいいのかわからなくなっている消費者が多いのではないでしょうか。プラスアルファで、モノを買う理由が必要になっている。Makuakeのプロジェクトが持つ、『今世の中にない、新しいものを支援することで一緒に作る』という要素は、その理由になるのだと思います。『モノが欲しい』プラス『応援したい』。これが新しいですよね。モノが届くことが前提なので100%寄付ではないけれど、でも、まだ出来上がっていない、クチコミもない、実際に届くのは少し先と、リスクがないわけじゃない。応援の気持ちがなければできないことでもある。そういう、これまでになかった感情が後押ししているということはあると思います」