矢野経済研究所は、国内の鞄・袋物市場を調査し、製品セグメント別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
市場概況
2019年度の国内鞄・袋物小売市場規模は前年度比5.0%増の1兆2,501億円となった。国内富裕層需要が好調だったことに加え、ラグジュアリーブランドによるミレニアル世代をターゲットとした戦略が奏功したことで、2019年の高級インポートブランドの鞄・袋物小売市場(欧州・米国からの輸入品)は7,006億円と大きく伸長した。インターネット販売の拡大やインバウンド(訪日外国人客)を中心とした空港商業施設内需要の増加も追い風となった。2020年度は、一転して新型コロナウイルスの影響によるインバウンド需要の消失により大幅に縮小し、これまで好調だった百貨店や直営店が一転、苦戦を強いられる結果となる見込みである。
ミレニアル世代
諸説あるが、同調査では1980年代~1990年代後半に生まれ、2000年頃に社会に出てきた世代とし、2019年時点では、20代前半から30代後半くらいの若者世代を指す。
注目トピック
旅行鞄小売市場
2019年度の旅行鞄の国内小売市場規模は前年度比1.3%増の1,540億円。日本政府観光局(JNTO)によれば、2019年は初めて日本人の海外旅行者数が2,000万人を突破するなど海外旅行への需要を背景として、市場規模が堅調に推移した。
2020年度は新型コロナウイルスの影響により、感染拡大防止のための店舗の営業時間短縮や自粛要請などによる販売機会の減少により市場規模は大幅に落ち込む見込みである。スーツケースを購入する直接の機会である海外旅行者数減少の要因がもっとも大きいが、訪日外国人観光客が消失したことも需要減に影響した。1人旅行者用のスーツケースなど一部の国内旅行用鞄は好調となるものの、引き続き厳しい状況が続くものと考える。
将来展望
2020年度の国内鞄・袋物小売市場規模は前年度比17.7%減の1兆291億円を見込み、2021年度は同5.0%減の9,778億円と予測する。
2020年は新型コロナ感染拡大防止のための店舗の営業時間短縮や臨時休業など自粛要請による販売機会の減少により、市場規模は大幅に落ち込む見込みである。特に旅行鞄などの分野は海外旅行者数の減少やインバウンド需要の消失により大きな打撃を受けている。
このような厳しい状況のなか、2021年以降は新型コロナウイルス対策商品や新しい生活様式を取り入れた商品開発による需要喚起が積極的に行われている。たとえば1人旅用のスーツケースや抗菌・抗ウイルス機能を搭載した商品など、新しいアプローチにより同市場の盛り返しが期待されており、市場を下支えする見込みである。
調査概要
- 調査期間:2020年12月〜2021年2月
- 調査対象:鞄・袋物および服装用ベルト業界に携わるメーカー、卸、小売業ならびに、周辺関連事業者(皮革・布帛・合皮など素材供給メーカー、卸ならびに副資材事業者など)、輸出入事業者、関連団体など
- 調査方法:同社専門研究員による直接面談、電話・e-mailなどによるヒアリング調査および文献調査併用