矢野経済研究所は、国内の健康食品市場の調査を実施した。本調査における健康⾷品とは、錠剤、カプセル、粉末、ミニドリンク形状等の健康維持・増進、美容等を⽬的とした⾷品となる。
2019年度の健康食品市場規模はメーカー出荷金額ベースで、8,623億円(前年度比0.1%増)、2020年度は8,680億1,000万円(同0.7%増)を見込む。
2019年度は市場の牽引役であった、テレビCMや新聞広告などオフラインを中心に単品通販型にて展開してきた通信販売企業の受注が全般的に軟調であり、通信販売の市場成長率が鈍化するなど頭打ち感が鮮明になった。また、後半には新型コロナウイルスの影響で、インバウンド(訪日外国人客)需要が激減した影響を大きく受けた企業が散見された。
2020年度は上期を中心に、コロナ禍による顧客在宅率の増加や、多くの企業が業績悪化に伴う広告出稿抑制を行ったことで広告媒体費用が低下し、オフラインの通信販売での新規獲得効率の上昇、費用減少によるCPO(Cost Per Order)の改善につながった健康食品製造・販売業が多く見られた。
品目別にみると、「コロナ太り」の問題が顕在化する中でダイエット関連や、新型コロナウイルスの第一波収束後に運動関連の需要が急増し、プロテインが大きく伸長する動きが見られた。また、全般的に健康意識への高まりが強まる中で、ビタミンなどの基礎栄養素関連や、血圧や体脂肪など自身で計測できる生活習慣病予防関連指標への対策を機能とする機能性表示食品などが好調に推移している。
機能性表示食品の市場規模はメーカー出荷金額ベースで、2019年度が2,542億8,000万円(前年度比13.5%増)、2020年度は2,843億4,000万円(同11.8%増)の見込み。
制度当初から展開する一部の大型ブランドにおいて、競合激化の影響などから苦戦を強いられるものが散見されるものの、健康食品製造・販売企業各社からの積極的な届出と受理件数の増加、商品展開により、市場規模が大きく拡大している。
機能性表示食品の食品種類別にみると、一般食品については受理件数が多いものの、季節限定のフレーバー展開品が多いほか、商品のライフサイクルが短い傾向が見られ、受理件数に比べて市場規模の伸びが緩やかである。
一方、サプリメントに関しては、機能性表示内容を前面に押し出した広告宣伝を積極的に実施し、売上を伸ばす主軸商品に加え、商品の品揃えの一つとして、既存顧客向けに展開を行う商品も多い。それらの商品は個々の売上高は僅少でありながらも、新発売または販売中の品数が多く、結果として市場規模の大幅な拡大に繋がっている。また機能表示(保健用途)の広がりも、市場規模の拡大に寄与している。
また、生鮮食品に関しても、生産者団体やメーカーからの届出と受理件数が増えており、機能性表示食品市場規模の拡大につながっている
健康⾷品市場の今後の見通しは、当面緩やかな成⻑基調か横ばいの状態にて推移する⾒通しである。新型コロナウイルスの感染拡⼤を契機として、⾃⾝の健康を改めて⾒直すなど、健康を維持することの意識が⾼まり、その補助⼿段として健康⾷品を改めて活⽤する動きの広がりが期待される。
健康⾷品の主⼒ユーザー層である⾼齢者における健康⻑寿に対する関⼼の⾼まりや、定年延⻑など⾼齢者の労働⼒活⽤が本格化し、健康を維持し動ける⾝体づくりへの対策、アンチエイジング意識の⾼まりは、今後も⾼⽌まりの状態が続く⾒込みである。
また、中年層における⽣活習慣病や加齢に伴う⾝体変化への対策、若年層における⾝体づくりや健康・美容への配慮、といった意識が今後も強まる⾒通しである。さらに、特に機能性表⽰⾷品における機能(保健⽤途)の拡⼤により、⾝体状況に合わせた商品選択がより可能になり、⾃⾝の健康維持のひとつの選択肢としての認知が進むことも期待される。
調査概要
- 調査期間:2020年8⽉〜12⽉
- 調査対象:健康⾷品製造・販売企業(健康⾷品メーカーを中⼼に⼀般⾷品メーカー・製薬メーカー等)、健康⾷品関連団体、管轄官庁等
- 調査⽅法:同社専⾨研究員による直接⾯談、電話によるヒアリング、郵送・メールによるアンケート調査、⽂献調査併⽤