矢野経済研究所は、国内ベビー・こども服市場の調査を実施した。
2019年の国内のベビー・こども服小売市場は、前年比99.5%の9,141億円と推計した。市場規模は微減と微増を繰り返しており、ほぼ横ばい推移となっている。背景としては、消費税増税や実質賃金の伸び悩みによる消費マインドの低下、さらには少子化傾向が挙げられる。
横ばい推移のなかで実績を伸ばしているのは、楽天市場やZOZOTOWNなどモールへの出店に加え、自社オンラインショップなどEC事業に注力している企業・ブランドである。
個別ブランドを見ると、しまむらはベビー・こども服の新ブランド「manina(マニーナ)」を、2020年9月に自社で全国展開する専門店「バースデイ」で販売した。「manina」は、「子ども服にもっと自由な楽しさ」をコンセプトにしたバースデイオリジナルの新ブランドで、カタチとカタチ、イロとイロ、いろんなMIXからうまれる新しい楽しさや、モードな配色をベースに、エッジを効かせたシルエットや柄をプラスしている。ベビー・キッズウェアを中心に、服飾雑貨も含めたトータルコーディネートができる商品展開となっている。
また、ナルミヤ・インターナショナルは2020年10月に、SNSなどのトレンドワードになっている"量産型女子"のための新ブランド「Melteen(メルティーン)」を公式オンラインショップで販売した。トレンドやカルチャーに敏感な小学校高学年からが対象で、量産型ファッションや「ヲタ活」を楽しむための、ガーリーファッションを提案している。
ユニクロは、「子どもの肌に安心な綿素材のあったかインナーがほしい」という消費者の声から開発された綿素材を使用したあたたかい商品、「ウォームコットンストレッチインナー」を発売する。 このように、ベビー、こども用に考案・製造された衣料品(洋服・洋品)についても、新ブランド、新商品が積極的に展開されている。
矢野経済研究所では、2020年の国内のベビー・こども服⼩売市場は、前年⽐90.1%の8,240億円と予測。近年は、市場はほぼ横ばい推移のなかで⼆極化が進んでいる。⼤⼿各社の増収傾向が顕著に表れている⼀⽅で、チャイナリスクや円安傾向の影響、売上不振などで倒産したアパレル企業も多い。その代表としていえるのがマザウェイズ・ジャパン、RONI WORLDなどで、業界において厳しい状況がうかがえる。
なお、2020年の⼤幅な落ち込みの主要因は、新型コロナウイルス感染拡⼤の影響によるもの。コロナ禍によるさらなる消費マインドの低下、ウィズコロナ時代の新しい⽣活様式の実践など、ベビー・こども服だけではないが、あらゆる産業を巻き込んだ「⽇常の変化」 が、結果的にベビー・こども服⼩売市場の低迷へと影響を与えていると考察している。
調査概要
- 調査期間︓ 2020年9⽉〜11⽉
- 調査対象︓ ベビー・こども服市場に参⼊している⼩売業、卸売業、製造業、その他関連企業
- 調査⽅法︓ 同社専⾨研究員による直接取材および郵送アンケート調査、⽂献調査併⽤
本調査におけるベビー・こども服とは、ベビー、こども⽤に考案・製造された⾐料品(洋服・洋品)を指し、「ベビー(0〜1歳程 度、サイズ50〜80cm)」「トドラー・キッズ(2〜6歳程度・園児、サイズ80〜120cm)」「スクール・ジュニア(7〜14歳程度・ 児童、サイズ120〜160cm)」のサイズを対象とした。なお、企業によってサイズ分類の仕⽅は異なるが、概ね上記を⽬安としてお り、⾐料品以外の雑貨類は含まない。