矢野経済研究所は、国内の物流ロボティクス市場を調査し、市場規模、参入企業の動向、将来展望を明らかにした。
市場概況
2019年度の物流ロボティクス市場規模(事業者売上高ベース)は、前年度比155.3%の131億4,000万円と推計。
物流は労働集約型産業であるがゆえに人手不足が他業界より深刻であり、近年その課題が浮き彫りになっている。そこで、倉庫現場における物流ロボットの導入が現在注目を集めている。
日本で物流ロボティクス機器に注目が集まるようになったのは2014年頃のことであり、市場に新たに投入されるロボットの種類は年々増加。2019年度は人と協働で働くピッキングロボットAMR(Autonomous Mobile Robot)の販売展開が始まったほか、ピックキング作業を行うGTP(Goods To Person)型AGVやロボット自動倉庫の伸長により、市場規模は好調に推移したとのこと。
注目トピック
今までの物流ロボットの役割は労働力不足を補うための無人化や省人化の促進といった意味が大きかったが、現在はBCP(事業継続計画)という観点からも注目が集まっている。
新型コロナウイルスの感染拡大にともない、物流倉庫でもクラスター発生防止のため、ソーシャルディスタンスの確保などの感染症対策が必須となり、今までは密集をいとわなかった作業現場が変化した。非常時に、人が来ること・集まることができずに倉庫内作業を行えなくなった場合でも、物流ロボットは通常通り稼働することができる強みを持つ。
物流は「止めない」ことが大前提。止めない物流を実現するために、BCPの観点からも物流ロボットが果たす役割は大きいといえる。災害など有事の際に対応できる物流倉庫は、顧客企業の信頼獲得につながるため、そうしたBCPという観点からも今後は有事対応が可能な物流倉庫が検討されるようになっていく可能性があるという。
将来展望
物流ロボットの展開・活⽤はまだ始められたばかりであるが、物流ロボティクス機器は、引き続き拡⼤する⾒通し。物流現場においては、新型コロナウイルスの感染拡⼤により密にならない作業環境や、さらに物流のBCPを維持するため、ロボット活⽤についての関⼼が⾼まり、実証実験を含め今後導⼊は今までより早いスピードで進んでいく⾒込み。2020年度の物流ロボティクス市場規模(事業者売上⾼ベース)は、前年度⽐133.4%の175億3,000万円になると予測している。
さらに、今回市場には含めていないが、現在実証実験が進められているラストワンマイルの配送を担う屋外での配達ロボットやドローンも、道路交通法や航空法の改正や緩和が⾏われていくことで、5年以内には実際に稼働していく可能性が⾼い。こうした屋外向け物流ロボットも加わることにより、当該市場も伸⻑していく⾒通しで、2025年度の同市場規模は583億円、2030年度には1,509億9,000万円になると予測しているという。
調査概要
- 調査期間:2020年4⽉〜8⽉
- 調査対象:物流ロボットに関わるメーカー、サービス展開事業者、物流ロボットを活⽤する事業者
- 調査⽅法:同社⾨研究員による直接⾯談、ならびに⽂献調査併⽤