ネクトラス株式会社 中島郁氏らをはじめとする、ECの成⾧に懸念を持つ有志は、2024年11月28日に「本気でECに取り組む研究会」を設立。同日に第1回研究会を開催した。
同研究会は、ECに対して本気で取り組む事業者の悩み相談、問題解決、考えるヒントを提供する場を作り、さらなる成⾧機会や刺激の場となるような会を目指すもの。会の冒頭では、株式会社Commerble 橋本圭一氏より同研究会の概要や趣旨が説明された。
これまで、1,000億円以上の自社EC取引を見てきた橋本氏いわく、ECに本気で取り組んできた事業者は必ずといっていいほど成長の機会があったという。こうした「本気」で取り組む「組織」「人」「ビジネス」「仕組み」などの共通項を見つけ出し、言語化することでEC停滞期にありがちな課題共有や、それらを打破してビジネスを前進させる手助けをするのが、同研究会の目的だと説明した。
続いて、中島氏から「『本気』のECとは何か?」をテーマとした講演が実施された。同氏は、2023年度のEC売上高ランキングを参照し、EC売上100億円以上を記録する日本企業はわずか119社であると言及。成長率が2桁以上の企業はトップ100社中25社と4分の1の割合である点にも触れ、「トップ事業者を除いて、まだ本気ではない状況なので伸びしろはある」と評した。
さらにECを「本気」で考える上で必要なのは「根底の考えを作ること」だと中島氏は強調。「なぜECをやることになったのか」「会社の期待はどれほどか」「会社の状況/位置付け」「会社の中でのECの位置付け/立ち位置」「顧客へ提供したい体験」などの言語化なしに、目指すゴールや描くべき構想/コンセプトを定め、運用するのは困難だと補足した。
「また、『商品の顧客体験』と『ECの顧客体験』が同じとは限りません。ECと関連する既存事業がある場合は、そこと矛盾しないようにすることも大切です。根底の考えを言語化するのが難しいという方は、自社は何者なのか、自社が顧客の届けられるバリューは何なのかといった『What』から考え始めても良いでしょう。
なお、EC運営を本気で円滑に推進するには、トップの協力も必要です。個人的に、オーナー企業は社長さえ理解してくれれば物事が進むので、ECに本気になりやすい環境だと思っています」(中島氏)
ECに本気になるには、「メンバー」「経営」「会社」三方向の足並みをそろわせる必要がある。また「考えるフェーズ」と「実行するフェーズ」を分けるべきだと中島氏は勧めた。
たとえば、構想やコンセプトを考えた次のステップで即現場に実行させるのではなく、事業戦略や人事・精度・組織体制といった各セクションにとって土台となる部分の検討・決定・徹底をまずは進める。その上で、各セクションが同様に検討・決定・徹底のサイクルを回せるようになるのが、この会の名前にもなっている「本気でECに取り組む」の理想図だといえる。
続くセッションでは、「ECと物流の『本気』の関係を一緒に考えてみる」をテーマに、合同会社インフィニティーオクターバーの栗田由菜氏が講演を行った。
通販の受注以降のコンサルティングを担当する同氏は、ワークショップによる意見交換を交えながら講演を実施。参加者がグループに分かれ、「TPS(トヨタ生産方式)作業改善」に基づき言語化された「7つのムダ(加工のムダ、在庫のムダ、造りすぎのムダ、手持ちのムダ、動作のムダ、運搬のムダ、不良・手直しのムダ)」を軸に自社の物流における課題点などを共有した。
栗田氏は、課題の言語化と問題解決方法を探る上で、改善が必要な事象を「トピック」ではなく「ストーリー」で語る重要性を説明。複数の事象をまとめてトピックで語ってしまうと、課題の本質が見えにくくなるため、本当のムダにたどり着けなくなる可能性が高まるという。問題解決の具体的な手法については、次回以降の研究会で解説されるとのこと。
最後は、橋本氏が「ECを本気でやるなら『継続改善』」というテーマを掲げて、講演を実施。Commerbleの仕組みを活用するアウンワークスやTOOLBOXの事例を挙げながら、自分ごと化、工夫などを施し「本気」でEC運営に取り組む事業者に共通する継続的改善などといった傾向を解説した。
なお、同研究会は今後、対面型でのセッションやワークショップを隔月で開催予定で、次回は2025年2月開催を予定。詳細が決定次第、コアメンバーのSNSなどで告知されるとのこと。