セールスフォース・ジャパン(以下、Salesforce)は、「2024年版 接続性ベンチマークレポート」の日本語版を発表した。なお、同調査は、SalesforceがMuleSoft事業の一環として、世界中のCIOおよびITリーダーを対象に実施したもの。調査結果は次のとおり。
AI戦略の成功によるROIと事業価値の向上は、データ統合と一元化次第
AI戦略を成功させ、業務効率、生産性、従業員体験、顧客体験を改善するには、強力なデータ統合戦略が重要となる。
AIの指標
ITリーダーは、LLM(大規模言語モデル)の平均使用数が、今後3年間で69%増加すると予想。また、80%の企業は「現時点で既に複数の予測AIモデルや生成AIモデルを使用している」と回答した。
AIイノベーションの課題はデータ統合
AIによって効率性と生産性が高まるが、それはデータの統合次第といえる。連携しているアプリの割合は平均で28%と推定されており、95%以上のITリーダーはデータ統合に関する課題がAI導入を妨げていると考えている。
導入を妨げる障害は依然としてセキュリティと信頼性
64%のITリーダーは、AIの倫理的な利用と導入について懸念している。
データサイロを解消してAIの可能性を十分に引き出す
日本では、調査に参加した人の44%が「データサイロがDXへの取り組みを妨げている」と回答。適切なデータ統合によってすべての構造化および非構造化データを一元化し、あらゆる事業領域に信頼性の高い適切なAIを導入する必要性が高まっている。日本の企業の調査結果は次のとおり。
企業がデータとAIアプリケーションを連携させるのは困難
68%のITリーダーは、現在使用しているインフラストラクチャが過度に相互依存的(密結合)なシステムを生み出していると考えている。また、所属する組織について、70%は「まだデータシステムを完全に連携させてAIテクノロジーを活用する準備が整っていない」と回答した。
データに基づくインサイトの活用が不十分
44%の企業は、データに基づくインサイトを統合して顧客体験につなげることに苦労している。
デジタル顧客体験が未成熟
すべてのチャネルで「完全に一貫した顧客体験を提供している」と回答した企業の割合は13%だった。
業務のオートメーションを推進する鍵はIT部門が握っている
多くの場合、IT部門がオートメーション導入の責任を担っており、ビジネス部門がセルフサービスでオートメーション(自動化)を利活用することに慎重な様子がうかがえる。「最新の戦略によって、ITエンジニアではないビジネス部門のユーザーがアプリやデータソースを統合できるよう支援している」と回答した日本のITリーダーの割合は8%だった。
また、IT部門内のスキルギャップも障害となっている。企業がオートメーションを最大限に活用してイノベーションと優れた効率性の両方を実現するには、戦略的なコラボレーションやアップスキリングによって、ギャップを埋める必要がある。なお、日本では次のような調査結果が得られている。
巨大なプレッシャーにさらされるIT部門
IT部門は、効率的なデータ統合の推進に苦戦しており、DXについて「課題に直面している」と回答した人の割合は100%となった。課題の上位には、スキルギャップとコンプライアンスの懸念が挙げられる。
AIによってIT部門のパフォーマンス向上の支援が可能に
79%のITリーダーは、AIによって開発者の生産性が向上すると予想している。
ロボティックプロセスオートメーション(RPA)を利用して負荷を軽減
大きな需要に対応するために、IT部門は、ますますオートメーションを導入するように。現在では、3分の1のチームがRPAを求めているとわかった。この割合は、2021年には13%だったが、2023年に31%へと大きく増加した。
APIは戦略的な成長手段となり得る
APIによって、様々なアプリケーションやシステムがシームレスに統合され、データへのアクセスとデータの利活用が効率化される。それにより、事業成長が促される。
実際に、日本では全収益の29%がAPIやAPI関連のサービスから生まれている。戦略的にAPI活用をしていない場合、その分の収益機会を失う可能性がある。
APIが収益機会を創出
「APIが収益の向上に寄与した」と答えた人の割合は41%、「運用コストの削減に寄与した」と答えた人の割合は49%だった。
APIによって業務効率と生産性が向上
ITリーダーのうち、43%が「APIによって機動性が向上し、セルフサービスが促進されている」、56%が「生産性が向上している」、35%が「ビジネスチームの要求が満たされてメリットがもたらされている」と回答した。
データ統合はAPI次第
過半数(60%)は、APIによって適切なデータ統合の構築が継続的に支援されているとしている。
調査概要
- 調査範囲:米国、英国、フランス、ドイツ、オランダ、オーストラリア、シンガポール、香港、日本
- 調査期間:2023年10月~11月
- 調査対象:世界的な企業のITリーダー
- 調査人数:1,050人