矢野経済研究所は、国内の健康食品市場を調査。各セグメント別の動向、参入企業の動向、将来展望を明らかにした。
市場概況
健康食品の市場規模はメーカー出荷金額ベースで、2021年度が8,825億円(前年度比1.9%増)と推計し、2022年度が8,925億円(同1.1%増)と見込む。
新型コロナウイルス感染症拡大の中で、健康・免疫や、コロナ禍での新生活様式において生まれたストレス・睡眠問題や、運動不足による肥満への対策需要が高まった。特に巣ごもり需要の恩恵を受けた通信販売市場が中心となってインバウンド需要の消失を穴埋めし、市場は拡大基調を続けている。
ただし、通信販売は2021年度に4%台の伸長を見せたが、2022年度以降は競合激化や新規顧客の獲得単価(CPO)の悪化などの影響を受け、市場は微増にて推移していくとみる。
そのほか、訪問販売は営業活動に制約が生じたコロナ禍でも、大手を中心に積極的なデジタルツールの活用により堅調に推移した。店頭販売は2021年度から2022年度にかけて、出足が徐々に回復したことにより復調基調を辿っている。
注目トピック
購入しやすさが鍵 〜一般食品での商品化が進む機能性表示食品〜
機能性表示食品を食品種類別にみると、一般食品の売上構成比が増加傾向にあり、2021年度には一般食品の売上構成比がサプリメントの売上構成比を上回った。今後一般食品を中心に活発な商品開発・展開が続くことが期待される。
サプリメントに関しては、2020年度までは大型商材の機能性表示食品化や、積極的な広告展開によるヒット商品の誕生などがみられ市場が急拡大していたが、これらの動きは一巡化し、2021年度以降は成長が鈍化した。
一方、一般食品に関しては、清涼飲料などで大型商材の機能性表示商品化やヒット商品の誕生がみられ、2021年度には前年度比80.5%増と大幅に伸長。機能性の付加により高付加価値食品として販売できること、また、スーパーやコンビニエンスストアといった一般消費者に身近な小売店で機能性表示の内容が訴求できることから、消費者の購買意欲を喚起している。身近な販売チャネルで購入でき、手軽に飲用が可能であることから、トライアル(試飲)の喚起が図りやすく、積極的な広告宣伝により売上を伸ばす商品が散見される。
生鮮食品に関して、市場規模は小さいものの2021年度は前年度比42.9%増の伸長率に。消費者庁による2015年の機能性表示食品制度導入以降、生鮮野菜や果物の届出が多かったが、最近では鮮魚や卵、生鮮肉など届出される食品が多岐に渡り、2022年度も市場の拡大を見込む。
将来展望
コロナ禍で意識がさらに高まった健康・免疫への対策需要は、コロナ禍での特需的な動きは沈静化しつつも、消費者の健康意識の高止まり、ストレス・睡眠問題など新生活様式の中で高まった健康問題への対策需要を中心に、今後も維持が期待される。さらに、コロナ禍以前に活況を呈した中国を中心とする健康食品のインバウンド需要の回復が期待されるほか、ロックダウンなどの影響で一時低迷した越境EC、一般貿易を通じた海外展開の回復・拡大が期待され、健康食品市場は緩やかな成長が続く見通しである。
調査概要
- 調査期間: 2023年1月~3月
- 調査対象:健康食品製造・販売企業(健康食品メーカーを中心に一般食品メーカー・製薬メーカーなど)、健康食品関連団体、管轄官庁など
- 調査方法:同社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話によるヒアリング、郵送・メールによるアンケート調査、ならびに文献調査併用