株式会社電通は、2月24日に日本の総広告費と、媒体別・業種別広告費を推定した「2022年 日本の広告費」を発表した。2022年(1~12月)日本の総広告費は、国内外の社会情勢などの影響を受けながらも、社会のデジタル化を背景にした「インターネット広告費」の成長により、通年で7兆1,021億円(前年比104.4%)となった。
媒体別広告費の概況
マスコミ四媒体広告費 2兆3,985億円(前年比97.7%)
「ラジオ広告費」は増加したものの、「新聞広告費」「雑誌広告費」「テレビメディア広告費」は減少。
インターネット広告費 3兆912億円(前年比114.3%)
社会のデジタル化を背景に、前年比114.3%の二桁成長となった。総広告費における「インターネット広告費」(インターネット広告媒体費、物販系ECプラットフォーム広告費、インターネット広告制作費の合算)の構成比は43.5%となり、2兆円超えの2019年からわずか3年で約1兆円増加。3兆円規模の市場となった。
「インターネット広告媒体費」は2兆4,801億円(前年比115.0%)、とくにコネクテッドTVの利用拡大を受け「テレビメディア関連動画広告費」は前年に続き350億円(同140.6%)と大きく増加した。「インターネット広告制作費」は、動画広告市場の拡大や運用型広告における広告制作数の増加などにより、4,203億円(同109.2%)と増加。また、「物販系ECプラットフォーム広告費(※)」も引き続きの在宅需要の高まりに伴い、1,908億円(同117.0%)と増加している。
※「日本の広告費」における「物販系ECプラットフォーム広告費」とは、生活家電・雑貨、書籍、衣類、事務用品などの物品販売を行うECプラットフォーム(これを「物販系ECプラットフォーム」と呼ぶ)上において、当該プラットフォームへ出店を行っている事業者(これを「店舗あり事業者」と呼ぶ)が当該プラットフォーム内に投下した広告費と定義。
プロモーションメディア広告費 1兆6,124億円 (前年比98.3%)
コロナ禍からの回復に伴い行動制限の緩和や国や自治体による全国旅行支援施策の実施などもあり、各種イベントや従来型の広告販促キャンペーンが再開したものの、通年では減少した。一方で、人流が戻ったことで「屋外広告」「交通広告」「折込広告」など前年を上回る媒体も出ている。
媒体別広告費詳細(抜粋)
新聞広告費 3,697億円(前年比96.9%)
業種別では、「交通・レジャー」が前年比117.8%と、コロナ禍による低迷から回復。レジャー施設・興行関連のみならず、旅行・宿泊や交通業種も大きく伸び、通年で増加した。一方で、「薬品・医療用品」はシニア向けの薬品を中心に同88.1%、「情報・通信」はコロナ禍の反動でコンピューター類を中心に同91.8%と減少した。
雑誌広告費 1,140億円(前年比93.1%)
業種別では、コロナ禍からの回復に伴う行動制限の緩和や国・自治体の全国旅行支援施策の実施などにより「交通・レジャー」が増加。一方で、雑誌広告費シェアの高い「化粧品・トイレタリー」は前年に続き減少した。
ラジオ広告費 1,129億円(前年比102.1%)
業種別では、コロナ禍からの回復を受け「ファッション・アクセサリー」(前年比122.5%)と「外食・各種サービス」(同113.4%)、および前年に続き「化粧品・トイレタリー」(同117.3%)が大きく増加した。
テレビメディア広告費(地上波テレビ+衛星メディア関連) 1兆8,019億円(前年比98.0%)
スポット広告費は、1-3月期は人材領域の出稿がけん引し「外食・各種サービス」が好調。10-12月期は、「外食・各種サービス」の好調に加え、半導体不足の影響を受けていた「自動車・関連品」で復調の兆しがみえたものの、「情報・通信」の低調を補うレベルには至らず、地域別では通期で基幹8地区全てが前年を下回った。
インターネット広告媒体費 2兆4,801億円(前年比115.0%)
インストリーム広告を中心とした動画広告の需要増が寄与し、前年に続き大きく増加。企業の販売促進活動におけるデジタル活用が進み、リスティング広告やデジタル販促も好調という結果となっている。
雑誌デジタル 610億円(同105.2%)
前年に続き主要ウェブメディアのPV(ページビュー)/UU(ユニークユーザー)数、主要SNSのフォロワー数などは増加。DMP(データマネジメントプラットフォーム)を活用したデータソリューション、SNS活用施策、オンラインイベント、広告主のオウンドコンテンツ制作、動画制作・配信など、出版社のデータ・コンテンツ制作力・コミュニティ力を強みとした企画が行われ、出版系ウェブメディアおよび雑誌ブランド・コンテンツ事業の成長を大きく後押しした。
また、ファン・コミュニティの事業化、コミック事業の拡大、XR(クロスリアリティ)およびメタバース領域、NFT(非代替性トークン)を活用した価値の高いコンテンツの取引など、「出版IP(知的財産)」を駆使したさまざまな研究開発が進んだ。
「日本の広告費」における「物販系ECプラットフォーム広告費」 1,908億円(前年比117.0%)
物販系ECプラットフォームの利用が消費者の中で定着したことで、前年に続き増加。日用品や食料品を中心に堅調で、外出の機会が増えたことにより、コスメやファッション、旅行、スポーツ関連商品の流通量が増加した。
インターネット広告制作費 4,203億円(前年比109.2%)
制作物別では、ウェブ動画広告の伸長が顕著となっている。中でも動画サイトやアプリなどのコンテンツ内に表示されるインストリーム動画広告の制作数が大きく増加した。
折込 2,652億円(前年比100.8%)
業種別では、スーパーやホームセンター、家電量販店を含む流通・小売が増加。サービス業は、前年に続き買い取り業者が好調という結果になった。メーカーは前年に続き通信販売が好調で大きく増加した。
POP 1,514億円(前年比96.2%)
デジタルサイネージやスマートフォン利用施策に代表される双方向コミュニケーションツール、リアル店舗の強みを生かした体験型のPOP施策などの活用が見られたものの、全体的に実施数が減少し、広告費は前年を下回った。