クーリング・オフ制度とは?
クーリング・オフ制度とは、特定商取引法に基づき、一旦契約の申し込みや契約を締結した場合でも、一定の期間であれば無条件で契約の申し込みを撤回したり、契約を解除したりできる制度だ。クーリング・オフ(COOLING-OFF)という名のとおり、頭を冷やして冷静になり、契約を考え直せるようにすることが目的。消費者が自分の意志ではなく、事業者の強引さや不意打ちによって結ばれた契約が前提となる。
クーリング・オフできる契約とできない契約
クーリング・オフ制度を使って解約できる契約と解約できない契約がある。また、解約できる期間が設けられている。クーリング・オフできる契約とできない契約の一覧は以下のとおりだ。
クーリング・オフできる契約
クーリング・オフできる契約は、次の6種類となっている。期間は、契約書または申込書を書面で受け取った日を含む期間だ。なお、書面に不備がある場合、期間が過ぎてもクーリング・オフが可能となっている。
期間 | 取引の種類 | 説明 |
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8日間 | 訪問販売 |
事業者が消費者の自宅などを訪問して、商品やサービスの販売または提供を行う契約をする取引 |
電話勧誘販売 |
事業者が消費者に電話をかけて勧誘し、申し込みを受ける取引 |
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特定継続的役務提供 |
長期的・継続的なサービスの提供に対して高額な支払いを約束させる取引(以下、7種類)
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訪問購入 |
事業者が消費者の自宅などを訪ねて、商品の買い取りを行う取引(貴金属など) |
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20日間 | 連鎖販売取引 |
個人を勧誘して商品やサービスを購入させ、さらにその個人に次の人を勧誘し商品やサービスを販売させる形で、連鎖的に組織を拡大し商品やサービスを売買させる取引 |
業務提供誘引販売取引 |
「仕事を紹介する」と言って消費者を誘引し、仕事に必要だからと商品などを買わせる取引のこと |
クーリング・オフできない契約
上記6種類の契約であっても、クーリング・オフの条件に該当しないケースがある。具体的には、以下のようなものだ。
- 自分の意思で店舗に出向いて結んだ契約(ただし、特定継続的役務提供を除く)
- 自分の意志で事業者の訪問を要請した場合(訪問販売にあたらないため)
- 営業や仕事を目的とする契約(ただし、連鎖販売取引(マルチ商法)を除く)
- 化粧品や健康食品などの指定消耗品を使用・消費した場合(未使用分は可能)
- クーリング・オフ期間が過ぎた場合(ただし、契約書面の不備、事業者によるクーリング・オフ妨害があった場合などは、期間を過ぎてもクーリング・オフ可能)
- 総額3,000円未満の現金取引
- その他、葬儀や乗用自動車(リースを含む)など特定商取引法適用外の商品やサービス
冒頭で述べたとおり、クーリング・オフが使えるのは、強引な勧誘や不意打ちで冷静に考える時間が与えられなかった場合などが対象だ。例外はあるものの、基本的に自分の意志で事業者に依頼した場合には、クーリング・オフの対象外となるので注意しよう。その意味で、通信販売は、クーリング・オフの対象外となる。
クーリング・オフの通知方法
クーリング・オフで契約を撤回・解約する場合には、ルールにのっとって事業者に通知しなければならない。必要事項を記載の上、クーリング・オフできる期間内に通知しよう。クレジット契約をしている場合には、クレジット会社にも通知が必要だ。
書面(はがきやFAX、内容証明)の場合
記載が必要なのは、契約(申し込み)年月日、商品名、契約金額、販売会社名、担当者氏名、契約者氏名、住所、通知日を記入し、申し込みの撤回または契約を解除する一文を書き添える。クーリング・オフは通知を発信した日から効力を持つため、必ず通知日を記載しよう。
送付前、忘れずにはがきの両面をコピーしておこう。通常の郵便で送付するのではなく、特定記録郵便や簡易書留など、送付の記録が残る方法を選ぶことがポイントだ。送付の記録も保管する。クーリング・オフの意思表示に関わる記録の保管期間は、5年間だ。
書面の場合の書き方例は、次のとおり。
販売会社宛
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通知書
次の契約を解除(または申し込みを撤回)します。
契約年月日 〇年〇月〇日
商品名 〇〇
契約金額 〇〇円
販売会社 株式会社〇〇
〇〇支店・営業所
担当者〇〇
商品の引き取りと支払った代金〇〇円の返金をお願いします。
〇年〇月〇日
住所
氏名
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クレジット会社宛
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通知書
次の契約を解除(または申し込みを撤回)します。
契約年月日 〇年〇月〇日
商品名 〇〇
契約金額 〇〇円
販売会社 株式会社〇〇
〇〇支店・営業所
担当者〇〇
クレジット会社 〇〇株式会社
〇年〇月〇日
住所
氏名
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念のため、内容証明を送りたい場合には、文房具店などで内容証明郵便の用紙を購入するか、ネット経由で送付できるe内容証明を利用しよう。郵送の場合、はがきと同様の内容を書き、封をせずに郵便局へ持参。カーボン複写の3枚1組となっているため、販売会社と本人、郵便局がそれぞれ1枚ずつ書類を保管する。相手に配達されたことだけではなく、内容も証明されるという流れだ。e内容証明の場合は、Webゆうびん専用サイトを参照してほしい。なお、書き方例は、次のとおりだ。
販売会社宛
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契約の解除(申し込みの撤回)通知
契約者住所
契約者電話番号
契約者氏名(印)
被通知人
株式会社〇〇
代表取締役〇〇殿
令和〇年〇月〇日付で貴社と締結した(貴社に申し込んだ)
〇〇(商品名)の購入契約(申し込み)を撤回(解除)します。
なお、貴社の費用で速やかに商品の引き取りと
既払い金〇〇円の返金をお願いします。
令和〇年〇月〇日
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電磁的記録(メールなど)の場合
電磁的記録とは、具体的にはメールや販売会社のウェブサイトに設けられているクーリング・オフ専用の送信フォームなどだ。メールの場合、契約書に書かれている通知方法を確認しよう。送信先メールアドレスや返金希望口座など、通知に必要な情報が書かれているはずだ。書き方は、書面の場合と変わらない。必要事項を漏らさず記載しよう。
送信フォームの場合、送信した情報が確認できる画面のスクリーンショットを保存しておこう。書面同様、保管期間は5年間だ。
クーリング・オフには一定の条件があるが、その条件を満たしていれば、消費者が契約を撤回できる。消費者の不意をつこうとするよからぬ業者のいいなりなったり、泣き寝入りしたりすることはない。困ったときには、消費者ホットライン(局番なし188)など、力を借りられる行政サービスがあることを思い出してほしい。