レジ袋有料化の効果に関する基礎知識
レジ袋有料化の効果を検証する前に、なぜレジ袋が有料化されたのか、辞退率はどのくらいなのかなど、レジ袋有料化に関する基礎知識を押さえておきましょう。
レジ袋有料化の目的
レジ袋有料化は脱プラスチック・脱石油を背景に、環境保護を目的として実施されました。
2018年にG7(先進国首脳会議)で採択された『海洋プラスチック憲章』など、国際社会は脱プラスチック・脱石油に積極的に取り組んでおり、後れを取らないようにと全国で実施されたのが、レジ袋の有料化です。
経済産業省は『プラスチック製買物袋を扱う小売業を営む全ての事業者が対象』とし、スーパーマーケット・ドラッグストア・コンビニエンスストアなど、私たちの生活に密着した事業者が対象となっています。
レジ袋有料化後の辞退率
環境省が実施した『レジ袋に係る調査(平成21年度)』によると、次のような調査結果が報告されています。
- 政令市・中核市・特別区では8割超の割合でレジ袋削減に取り組んでいる
- 有料化に伴いレジ袋の辞退率・マイバッグ持参率は80%を超えている
この調査結果からは、レジ袋有料化によって80%近い国民がレジ袋を辞退していることがわかります。中でも特筆すべきは、コンビニエンスストアのレジ袋辞退率です。
レジ袋有料化前は23%だった辞退率が、レジ袋有料化後には75%にまで上がっています。仮に1枚3円~5円程度の出費だとしても、テープのみやマイバッグの持参が可能であれば、レジ袋を辞退する傾向が顕著だといえるでしょう。
有料化対象と対象外のレジ袋
レジ袋の有料化には、対象になる袋と対象外の袋があります。
有料化の対象となる袋 | 有料化の対象にはならない袋 |
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同じプラスチック製の袋でも、海洋で分解されるなど環境性能が認められているケースについては、今回の有料化の対象外です。
生鮮食品を入れる持ち手のないビニールなどは、有料化の対象ではないですが、今後は環境性能の認められた製品に移行されていくことが考えられます。
レジ袋有料化で得られた効果とは
レジ袋有料化で辞退率が上がったことは事実ですが、レジ袋有料化で得られた効果とはどのようなものがあるのでしょうか?
レジ袋有料化でプラスチックごみは減ったのか?
環境省の調査では、日本で排出されるプラスチックごみの量は約900万tにも及ぶとされています。
その中でレジ袋の占める割合は2~3%程度。決定的な削減につながるには少ない数値ではありますが、レジ袋有料化による流通量などは確実に減少しています。レジ袋有料化でプラスチックごみが減ったという調査結果はまだ報告されていません。
しかしこれから長い目で見ると、レジ袋有料化はプラスチックごみの削減に貢献する施策であるといえるでしょう。
消費者の意識の変化
レジ袋有料化でもっとも効果があったのは、消費者の意識が変化したことです。
環境省が行った意識調査では、マイバッグを持っている人は93.7%に及び、マイバッグを常に携帯している人は51.9%、プラスチックごみ問題への関心が高まりマイバッグを進んで使うようになったと回答した人は75.1%に達しています。
最初は『買い物のたびに袋代を支払うのはもったいない』『代用できるものがあれば利用する』といった程度の意識だったとしても、レジ袋が有料化されることで脱プラスチックを意識した人は少なくないということです。
レジ袋という身近な存在を意識することで、プラスチックごみ削減につながる行動を起こしている人が多いことが、一番の効果として挙げられます(参考:令和2年11月レジ袋使用状況に関するWEB調査|環境省)
レジ袋有料化の裏側
消費者の意識変化につながったレジ袋の有料化ですが、その裏側にはいくつかの問題が起きていることも知っておかなくてはいけません。
レジ袋有料化の裏側で起きている3つの問題についてご紹介しましょう。
レジ袋有料化後に増えた新たな問題
レジ袋有料化は、プラスチックごみ削減の取り組みとして行われたものですが、実施後に増えてしまった新たな問題があります。それは何か、レジ袋の代用品を利用する人が増えたことです。
もともとレジ袋は、買い物時だけではなく、ゴミ袋として再利用している人が多く、レジ袋がもらえないことで家庭のゴミ袋がないと困るという声がありました。
レジ袋は無料だったから使っていたけれど、有料化されてしまってゴミ袋がないと困ると、100円ショップなどでレジ袋と同じような袋を購入する人が増えたのです。
100円ショップの袋は、通常のレジ袋とほぼ同じものです。もらうレジ袋は辞退しても、レジ袋を使いたいから単価の安い代用品を購入するということではプラスチックごみが削減されるという結果にはつながらないことになります。
エコバッグは環境問題NG
レジ袋のかわりに利用されるエコバッグは、プラスチック製の袋より環境問題に良くないという問題も起きています。 エコバッグの製造過程で排出される物質は、レジ袋の製造過程よりも大気・水質の汚染物質の排出が多く、リサイクルも難しいといわれているのです。
繰り返し使えるという点ではエコバッグは非常に優れていますが、製造過程や輸送などを考えると、レジ袋の方が環境に良いとされています。
近年では大きさ・素材・形状などに工夫を凝らし、使い勝手の良いエコバッグが多く販売されていますが、確かにリサイクルのことを考えると、レジ袋よりも環境に負担がかかることは想像できます。
レジ袋有料化でもプラスチックごみは減らない
レジ袋有料化でレジ袋を辞退しても、代用品として販売されている同じ形状のものを利用していたら、プラスチックごみは削減されません。
レジ袋有料化対象外の『厚さ50マイクロメートル以上の袋』は再利用が目的とされていますが、ほとんど再利用はせずに、自宅でゴミの袋になっているという実態もあります。
どんなプラスチックの袋があるのか、どんな目的で利用するべきなのかという点を理解することができていなければ、プラスチックごみが減るということにはつながりません。
レジ袋有料化の効果は消費者の意識がカギ
レジ袋有料化は、店舗におけるレジ袋の消費量や流通量の削減としては、一定の効果が見られています。しかし環境問題の観点から見ると、実際にプラスチックごみが大幅に削減したという結果にはつながっていません。
レジ袋有料化の効果をあげるには、『レジ袋をもらわないこと』だけにフォーカスするのではなく、さらに『レジ袋を使わない』という意識に変えていかないと、いつまでたってもプラスチックごみの削減にはつながらないといえるでしょう。
レジ袋有料化の効果は、今後消費者の意識がどこまで変化することができるかという点にかかっているのです。