矢野経済研究所は、国内の画像解析技術を活用した店舗向けソリューション市場を調査し、事業モデル、普及課題、将来展望を明らかにした。
市場概況
2020年度は、新型コロナウイルス感染拡大とそれに伴う緊急事態宣言の影響で、ユーザー企業各社が検討していた案件が一時的に導入検討の中断に追い込まれた。また、このタイミングで従来のクラウド系の店舗向け画像解析ソリューションベンダーの多くが当該事業から撤退したり、事業の縮小を行った結果、市場は一時的に縮小し、2020年度の店舗向け画像解析ソリューション市場は前年度比78.2%のマイナスに陥った。
2021年度には、新たに市場に参入してきたエッジAI系の店舗向け画像解析ソリューションベンダーの動きが本格化するとともに、中断していたユーザー企業の導入検討が再開され、案件数も増加し、巣ごもり需要で業績が拡大した消費財系の量販店や、EC化の進展に伴って本格化したOMO(Online Merges with Offline)の動きなどが需要を後押しする形で市場は持ち直す見込みである。2021年度の店舗向け画像解析ソリューション市場(事業者売上高ベース)は再度拡大基調を取り戻し、前年度比141.4%の15億7,000万円を見込む。
注目トピック
店舗向け画像解析ソリューションベンダーの参入動向
店舗向け画像解析ソリューション市場の参入企業に関しては、以前参入していたクラウド系のベンダーの一部が既に撤退していることが確認された一方、特にAIカメラ系のソリューションベンダーの新規参入が認められ、ベンダーの入れ替わりと平行して、市場全体としてもクラウド系からエッジコンピューティングでの画像分析処理へと、ソリューションサービスのシフトが進んでいる。
また、参入しているソリューションベンダーによって市場における立ち位置は異なっており、AIアルゴリズムを提供しているベンダーから、カメラの製造販売、エッジAIデバイスの提供、分析結果を可視化する店内分析プラットフォームの展開など、さまざまな方法で当該市場にアプローチしている企業(ベンダー)が入り乱れている状況である。
3.将来展望
2022年度から2023年度の市場は、現在各所で検討されている案件での本格導入が期待され、これまでの市場規模が非常に小さかったことから、成長率としては非常に大きくなる見込みで、2021年度から2024年度までの年平均成長率は40.9%に達すると予測する。
特にこれまで店舗向け画像解析ソリューションのサービス対象とは言い難かったGMSや量販店での導入が次第に進むと見られる。また、ファッション系やブランド業界のユーザー企業では、リアル店舗施策の見直しやRaaS(Retail as a Service)、D2C(Direct to Consumer)といった小売店舗の形態の転換に伴って、データビジネスへの参入が進むと考える。
調査要綱
- 調査期間: 2021年7月~9月
- 調査対象: 画像解析をマーケティング目的で活用するソリューション展開事業者
- 調査方法: 同社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用