ボーダレスなオンライン環境を活用し、オンライン海外市場に挑戦するためのSTEPを解説する当連載。とくに「コミュニティ」に焦点を当て、第1回・第2回ではSTEP1「海外オンラインコミュニティがどこに存在するのかを探す」、そして第3回ではSTEP2として「コミュニティへアプローチするにあたっての国ごとの留意点」をご紹介しました。今回はSTEP3「顧客獲得のためのコミュニティ創出と活用」について、具体的な事例を紹介しながらお伝えします。
顧客理解とアプローチの成功例 AURAFICの美容師はさみ
ヘアケア・スキンケア製品の研究開発や美容師はさみの製造販売を行う福岡県の企業 AURAFIC株式会社は、InstagramやFacebookなどのSNSを活用し、イギリス、フランス、アメリカ、オーストラリアへの美容師はさみの販売に成功しています。
代表の岩永氏は元々美容師としてのキャリアを積んでいましたが、美容師、ヘアサロンだけではなく、ヘアケア製品や美容師はさみの海外販売によって美容師が安定して利益を得るビジネスモデルを構築したいと考え、2017年にAURAFICを設立しました。国によって水質やそこに住む人の髪質はさまざまですが、創業当初より海外販売も視野に入れて、グローバルに対応できる製品を開発。そしてヨーロッパなどのサロンへ直接営業を行うだけでなく、Instagramを使ったアプローチによっても海外販路を開拓しています。
「Instagramでのアプローチ」とお伝えすると、一般的には「インスタ映え」する写真の投稿や情報発信を積極的に行うことを想像するのではないかと思います。しかし、AURAFICでは、よりターゲットを絞って取り組みを行いました。
まず、同社はヘアケア製品や美容師はさみなどの投稿写真・動画をハッシュタグ検索し、積極的に情報発信をしている美容師やヘアサロンを調査しました。加えて、大手のヘアケアブランドのアンバサダーなど、美容業界におけるインフルエンサーをフォローし、こうした人々の投稿に「いいね!」や絵文字、コメントなどを送りました。とくに積極的に投稿を行ったのは、リアルタイムでやり取りができるInstagramストーリーズです。必ずしも返事がもらえるわけではありませんが、毎日これを継続することで、マスではなくアプローチしたいターゲットからの認知を地道に得ていきました。
Instagramの投稿で同社は、写真だけでなく製品の様子がよりわかる動画も投稿しています。また、商品価格を円、ユーロ、ドル、ポンドで併記する、英語で製品の特徴を記載するなど、海外ユーザーが購入の判断をしやすいよう、掲載する情報にも工夫が見られます。
なお、同社は日本語・英語併記で、海外決済に対応したECサイトを開設しており、Instagramで認知拡大した後の購入につなげています。こうした地道な発信を続けつつ、自社開発したヘアケア製品の販売活動を行う中で、ヨーロッパの美容師から職人の手仕事による日本の美容師はさみの需要が予想を超えて高いことがわかり、現在は美容師はさみの販売にさらに力を入れています。
AURAFICは、獲得したい海外市場に適した商品開発とInstagramでのアプローチ、ターゲットに向けた直接的な情報発信、海外向けECの開設といったように、商品開発から認知、販促、購入までの導線をきちんと引いていました。顧客の属性などを理解した上で、求められている高品質な商品と購入判断時に必要な情報提供を適切に行ったことによる成功例だと言えます。