目的を持ってオンラインサポートを始め 企業全体のCXを見つめ直そう
プレイドが4月24日にリリースした「いますぐ始めるKARTE オンラインチャット」は、その名のとおり、オンラインサポートの迅速な立ち上げ・開始をサポートするもの。CXプラットフォーム「KARTE」から、FAQ接客やチャットボット等、オンラインサポートにかかわる機能を切り出して提供。コロナ禍による外出・営業自粛により、急遽オンラインでの顧客対応を求められた企業に向けたサービスである。
「実店舗やコールセンター等の営業が難しくなったことで、顧客とオンラインでコミュニケーションしたいというニーズが3月から急増しました。この状況下でプレイドができることは何かを議論したところ、KARTEから顧客サポートに関する最小限の機能を切り出し、リモートワーク環境下でもクイックに立ち上げられるパッケージとしてご提供できると良いのではという結論に至り、『いますぐ始めるKARTE オンラインチャット』をリリースしました。機能を提供するだけでなく、その価値もすばやく実感していただきたいとの考えから、セットアップサポートもオプションでお付けしています」
オンラインサポートに関する最小限の機能とは、「計測タグの設置」「FAQ/チャットボットのセットアップ」「ウェブチャットのセットアップ」の3つである。オンラインサポートと言うと、すべてのコミュニケーションを有人対応することだと考える人も少なくないが、必ずしもそれが最適解ではない。例えば、共通する問い合わせについてはFAQを案内し、それだけでは解決できない問い合わせに対し、有人チャットで手厚く対応するといった組み合わせにより、コミュニケーションの質の向上が期待できるほか、オンラインサポートに充てる人員が少なくとも、スモールスタートが可能になるといった利点がある。
プレイドでは2020年9月末まで、本サービスの月額費用、セルフセットアップガイドを無料で提供している。セルフアップガイドだけでは立ち上げが難しい場合には、オプションで「特別セットアップサポート」を利用できるのも心強い。
リリースから1ヵ月後の取材だったが、ゴールデンウィークを挟みながらも反響は大きかったと言う。
「2018年、KARTEはそれまでのウェブ接客プラットフォームからCXプラットフォームへとサービスの立ち位置を再定義しています。これに伴い最近のKARTEのお客様は、どちらかというと規模の大きい企業様が中心でした。それが時勢と本サービスのリリースもあってか、さまざまな規模・業種業態の企業様からお問い合わせをいただいています。KARTEをご利用中ながらチャット機能は導入されていなかった企業様についても、オンラインコミュニケーションの幅を広げようとチャット機能の導入を決められているところも増えています」
問い合わせからわずか1週間でオンラインサポートを立ち上げた企業もある。これまでオンラインサポートを実施していない企業だったが、「いますぐ始めるKARTE オンラインチャット」の導入により迅速なスタートが可能になった。
「FAQへのナビゲーション設計や有人チャットでのコミュニケーションの取りかたなどは、プレイドからレクチャーさせていただいております。『一度開設すると、すべての問い合わせがチャット経由になり対応しきれないのではないか』といった声もよく聞かれますが、設計によって必要な顧客にだけチャットをご案内することも可能です。いざ始めてしまえば難しいことではありませんし、ご懸念な点についてご相談も承りますので、少しでも気になったらまずはお問い合わせいただければと思います」
重要なのは機能の使いこなしではなく、オンラインコミュニケーションの目的を定めることだと清水さんは言う。たとえば実店舗における接客は、来店した顧客に対して仮説を立て会話をし、その反応から次のアクションを選択し、実行していく。オンラインにおいても、同様のPDCAを回すことが求められる。ありがちな失敗例としては、オンラインコミュニケーションの目的を「売上アップ」に設定してしまうというもの。心当たりはないだろうか。
目の前の1人ひとりの顧客とコミュニケーションを取り、反応を見てコミュニケーションを変えていく。その積み重ねがCXとなり、最終的には売上にもつながっていくという長期的視点が必要だ。早くオンラインコミュニケーションをできるよう仕組みを整えたいと焦りがちだが、仕組みを整えながらも、自社のCXの根本から考え直すという長期的な視点を持ちたいところである。
「オフラインの営業が困難になったからオンラインでという発想では、単なる事象への対応にとどまってしまいます。企業・ブランドとして、今後も含めて顧客とどのような関係を築いていきたいのかを議論し、見直すと、企業全体がより顧客基点に変化していけるのではないでしょうか。CXが重要であること、オンラインとオフラインの境目がなくなっていくことなど、多くの方が少し先の未来の『あるべき世界』として認識されていましたが、すぐに自社を『あるべき形』に移行することは難しかったと思います。コロナ禍によって、あるべき世界に移行するきっかけができたとも考えられるのではないでしょうか」
目の前の顧客を知り、合わせることの積み重ねがCXとなる
withコロナとも言われるように、緊急事態宣言が解除されたからと言って、生活がビフォアコロナとまったく同じに戻るわけではない。オンラインコミュニケーションはその場しのぎのものではなく、当たり前のチャネルのひとつとして存続していくだろう。KARTEはサービス開始当初「ウェブ接客」を打ち出し、5年間をかけてオンラインコミュニケーションのためのさまざまな機能を追加し、進化してきたという経緯がある。
「KARTEは、サイトにポップアップメッセージを表示するところから始まり、チャットやアプリからのメッセージ配信、行動データのリアルタイム解析など、さまざまな機能を追加してきました。オンラインコミュニケーションを積み重ねるうちに、プレイドとしても『もっとこんなことができたら』という発見があり、ユーザー企業様からもご要望をいただいたからです。KARTEの根幹は、1人ひとりの顧客をより深く知り、顧客により合わせること。今回、チャットによるオンラインサポートから始めていただいた場合にも、『もっとこうしたい』という発想が湧いてくると思います。そのための仕組みはKARTEに備わっていますし、顧客をより深く知ることで得た知見を、ほかのマーケティング施策にも活かしていただけると思います」
チャットツールはあまたあるが、KARTEの特徴は、目の前の顧客の背景や文脈を知ったうえでコミュニケーションが取れることだ。どんなサイトの、どのページをどれだけ閲覧したか、どのような回遊を行っているか、こうした過去の行動から顧客について想像することができる。そのうえでチャネルやメッセージを選択できるか否かは、最終的にはCXの質を大きく左右するはずだ。
「オフラインでは、目の前の顧客に合わせ、反応を見て接客が行われています。それがオンラインでは、PVやCVRと数字に置き換わり、そのハックに重点が置かれてしまっていました。オンラインでも1人ひとりにあわせた接客が重要だとの考えから、『ウェブ接客』という言葉を作り、KARTEをリリースしました。『顧客を知る・合わせる』を深め、広めていくうちに今のCXプラットフォームにまで進化しました。しかし、ウェブ接客という単語に込めた『顧客体験をより良くしたい』という思いは、今と変わりありません」
とくに実店舗を持つ企業から「ECでは接客ができない」との声がもあり、ニーズはあった。EC市場の拡大とともに、ウェブ接客も成長し、ひとつの市場と言える規模になった。一方で、クーポン表示やチャットツールを導入することそれ自体がウェブ接客と解釈されることも起きていた。
「KARTEリリース当初の機能はミニマムでした。それでもお付き合いいただいた企業様は、メッセージに共感いただき、ともに歩んでくださいました。それから5年、KARTEの機能が充実していくにつれ、導入企業様のKARTEユーザーが、ひとりのマーケターからチームへ、企業全体へと広がっていきました。今では、CXに真剣に向き合い、先進的な取り組みを行っている企業として注目されるKARTE導入企業様も多くいらっしゃいます。KARTE利用当初から顧客体験を重んじ、コミュニケーションに試行錯誤を重ね、企業全体としてCXを考えてこられたからだと思います」
そしてCXが注目を浴びたことで、KARTEのユーザー企業はECだけでなく、金融業界のカスタマーサポート、メーカーのオウンドメディアなどさまざまな業種業態に広がっている。
「ウェブ接客はマーケティングのひとつの要素でしたが、 CXになると企業全体の取り組みです。経営層の方も課題感を持ってプロダクトに触れていただけるなど、もう少し広く、大きい概念として認知されていると感じます。KARTEは拡張性と自由度が高いことも特徴ですから、将来的にもっと広く活用できるとご期待をいただけているのかもしれません」
たとえばアパレルのPAL CLOSETでは、プライベートDMPのような役割を期待して、顧客データや行動データ、オフラインデータなど分断されたデータベースを統合する「KARTE Datahub」を採用し、顧客を「深く知る」取り 組みを実施。そして、MAやBIなど多様な外部サービスとの連携することで顧客に「合わせる」を実行。さらには、実店舗の販売員の支援をKARTEから行うなど、オムニチャネルにも貢献している(参考記事)。
オムニチャネルを説かれても、組織構造やビジネスモデルから、個人や部署の売上やUI/UXを追いかけることが継続されていたビフォアコロナ。今回のコロナ禍をきっかけとしてうまく活用し、企業全体のCXまで視野を広げてアクションが行えるかが、大きな分かれ目となりそうである。
「顧客はオンライン/オフラインの境目のない行動をしています。顧客が接するすべてのチャネルで、どのような体験を提供できるかを考える時に来ているのではないでしょうか。KARTEがまず貢献できるのは、オンラインでの体験です。数字、データ、効率といった言葉から、オンラインに対し冷たい印象を抱く方もいらっしゃいますが、オンラインの向こうにもやはり人がいます。オンライン上の顧客も数字ではなく、オフラインと変わらない人である。そういう感覚を持てるお手伝いがKARTEによってできるのではと考えています。プレイドでは、長期的にCXをともに考えていくパートナーとしてお付き合いをさせていただきたいと考えていますので、ぜひご相談いただければと思います」