情報の透明性が進む中で問われるインフルエンサーの信用問題
艸谷氏のキャリアはアパレル販売員からスタートした。新卒として入社した株式会社STUDIOS(現:株式会社TOKYOBASE)では、入社3ヵ月で月間個人売り上げ全国1位を獲得。入社1年で店長に抜擢された後も年間最優秀賞を受賞するなど、華々しい活躍を見せた。
販売員の仕事を辞め、専業主婦として過ごしていた艸谷氏は、テレビ番組のインスタグラマー特集からInstagramに興味を持った。アカウントを作成し、戦略的にアカウント運用を行ったところ、10ヵ月後には1万フォロワーを獲得し、企業からはPR案件や運用代行の依頼が続々と舞い込むようになった。
トップ販売員とインスタグラマーのキャリアを通して培ったノウハウをもとに、艸谷氏はSNSマーケティングの支援会社 gramsを起業。昨年5月に発売された自著『「こだわり」が収入になる! インスタグラムの新しい発信メソッド』(同文舘出版)の販売部数は、まもなく1万部を超えようとしている。
艸谷氏はまず冒頭で、SNSの発達によって生じた最大の変化は「情報の透明性」にあると述べた。これまではマスメディアの声が大きく、テレビや雑誌で取り上げられた店舗に行列ができ、商品は完売していた。しかし、SNSによって誰もが発信者になることのできる現代になり、状況が変化した。個人の意見が拡散されやすくなり、正直な声を生活者が拾いやすくなっている。
このことは、情報を発信する個人の信用問題にも大きく関わると艸谷氏は指摘する。とくに、PR案件を受けることの多いインフルエンサーが自身で使ったことのない商品を良いものとして発信し、仮にその商品が粗悪だった場合は、商品だけでなく発信者の信頼も当然損なわれることになるからだ。
「お金で情報操作することが難しい時代なので、企業は真に良いものを作って届けるべき人に届けなければいけません。どういう時に生活者はSNSで発信したくなるのかを踏まえて、商品や売りかたを設計する必要があると思います」(艸谷氏)
インフルエンサーマーケティングの多くは、企業とインフルエンサーの間に広告代理店が入り、両者をマッチングさせる形で行われている。商品の利用者ではないが、影響力のあるインフルエンサーに広告費を支払って宣伝してもらう従来のやりかたではなく、そのぶんの広告費を商品に還元し、商品愛用者である従来の顧客をインフルエンサーに育てていくD2Cのような動きがマーケティングにも求められている。