調達パワーを持続性のある社会実現に
SAP Aribaは世界最大の調達ネットワーク「Ariba Network」を展開するSAPの事業部で、その年次イベントが「SAP Ariba Live!」です。アメリカと欧州で開催されており、欧州版としてスペイン・バルセロナで6月に開催されたイベントに参加しました。
ドイツ企業であるSAPは2012年にAribaを買収しました。Ariba Networkには現在、190ヵ国から420万社以上がサプライヤーとして参加しており、同ネットワーク上ではネジひとつから備品や専門の機械まで、さまざまなアイテムが売買されています。やりとりの合計金額はなんと2兆6,000億ドル以上。Amazon、Alibaba、eBayの3大BtoCネットワークの合計金額を2倍以上も上回るそうです。
これまでSAP Aribaとして展開してきましたが、SAPは2019年初めに、同じく買収により取得した外部人材管理「SAP Fieldglass」、経費管理クラウド「SAP Concur」と合わせた3事業を統合することを発表、段階的に統合が進んでいます。
イベントの参加者は4,000人――多くが企業の調達担当者です。テーマは「3 Trillion Reasons」――「3兆もの理由」とでも訳しましょうか。Aribaのネットワーク上の売買総額が3兆ドルに近づきつつあるので「3兆」ですが、Aribaを選ぶ理由は3兆あるということのようです。Aribaのメッセージは「Spend Better(もっと良い使いかたを)」です。ひとつはAIなどの利用がありますが、もうひとつのメッセージは持続性です。企業の調達が経済に与える影響は大きく、そのパワーを持続性ある社会実現のために使おうという意味が込められています。
ハイライトは、初日の基調講演に登場したAmal Clooney氏でしょう。George Clooneyの夫人であるAmal氏は人権を専門とする弁護士であり、スピーチではその立場から企業に対して人道的なビジネスを行うように求めました。
「企業がどのような取引をしているのか、社会やコミュニティはちゃんと見ている」――Amal Clooney氏はそう述べましたが、その後メディアでスウェーデンの環境保護活動家Greta Thunberg氏が取り上げられるたびに、Amal Clooney氏の言葉を思い出しました。ちなみに、Salesforce.comの最高イクオリティ責任者 Tony Prophet氏に取材した時も、なぜダイバーシティやインクルージョンの取り組みを進めるのかという質問に、多様な視点があることでイノベーションが生まれるだけでなく、「どこで働くか、どこと取引するか、企業を選ぶ際に重要な指標になる」と述べていました。
国連が推進するSDGs(持続可能な開発目標)が、日本でも注目を集めています。単に貢献ではなく、ビジネスとして、調達でもできることはたくさんありそうです。