「指示通りあがってこない」をあきらめない
さまざまなタスクを抱えるEC事業者だが、バナーやLP、商品画像などのクリエイティブは、売上を左右する重要な仕事のひとつである。しかし、クリエイティブの修正指示→チェックという、レビュー作業に特化した使い勝手の良いツールはほとんどなかった。
クリエイティブ制作の豊富な実績を持つクリエイターズマッチでは、その課題を解決すべく、ECサイト構築に携わって長い取締役の布田茂幸さんが企画段階から入り、ツール開発に取り組んだ。そして、2019年1月にリリースしたのが、直感的デザインレビューツール「AdFlow Proof(アドフロープルーフ)」である。
今回、そのAdFlow ProofをECエバンジェリストの川添隆さんに、実際に試してもらうことにした。川添さんの前職はガールズアパレル。EC担当者あるあるの「専門知識がない担当者がバナー作成、コーディングをする」ことを自身で手掛けるところから、急成長を遂げたEC責任者までを経験。そして2013年には、メガネスーパーの企業再生でのEC事業改革、自社ECサイトリニューアルを手がけた。実務としての設計から商品タイトル、商品画像、ボタンのコピーなど、細部のクリエイティブまでディレクションに携わり、現在はマネジメントの立場から管轄。ECのクリエイティブ制作の課題を熟知している人だ。
まずはメガネスーパーのECサイトのコンタクトレンズの商品詳細ページから。AdFlow Proofは、URLを入力するだけでそのページの画面キャプチャを撮ることができる。キャプチャの拡大・縮小表示も自由自在だ。それを、作業にかかわるスタッフのメールアドレスを入力して共有するとプロジェクトがスタートする。
AdFlow Proofを使っての川添さんのレビュー作業の様子
さっそく修正の指示を始めよう。該当箇所を赤い四角形で囲み、コメントを書くとその都度メールが飛ぶ。「To」に特定のメンバーを指定することで、担当者を決めることにもなる。画像を差し替える場合はツール内に添付(ファイルひとつあたり1GBまで)できるため、オンラインストレージを使わずともツール内で完結するところもありがたい。
担当者が修正を終えコメントを入れたら指示者にメールが飛んでくるので、それを確認すれば良い。完了のチェックを入れると「対応済み」ステイタスとなる。修正1つひとつをこのように終わらせていくので、1枚のLPに複数の修正指示があった場合もヌケモレをなくすことができる。また、修正指示を受けたクリエイター側から、その指示ごとに質問することも可能だ。メールで箇条書きになった質問に、インラインで回答していく手間が省けるわけだ。さらに過去のやりとりの履歴が残るため、古いバージョンのクリエイティブと比較して付き合わせることも可能である。
――川添さんのクリエイティブ制作へのかかわりかたと課題、AdFlow Proofを使ってみた感想をお聞かせください。
川添 メガネスーパーでは入社当時から、週に一度、ECの数字と施策の振り返り・翌週の施策を決める定例ミーティングと、現在はクリエイティブのリソースを確認するミーティングを設けています。前者は課題や施策内容で終わらず「どんなメッセージとして伝えるか?」というところまで大枠を決め込んでいき、後者はその週のクリエイティブ制作のキャパシティと制作予定を確認し、全社と部門の優先度とあっているかをチェックをしていきます。
我々はスピード重視型なので、基本的には自社ECの店長や担当者に判断をゆだねます。施策とクリエイティブの一貫性をチェックしたり、クリエイティブの提案をすることはあります。また、新サービスがスタートするときはなるべく細かく見るようにしています。その指示出しやチェック過程のコミュニケーションにおいて、ストレスを感じる機会はあります。これは前職でも同様です。
たとえばメガネスーパーでは、LPを紙に印刷したり、PowerPointに例となる画像を貼って指示を書き込んだり、手書きでラフ案を描いたりしていました。前職では見様見真似ですが、EC運営代行先にクリエイティブの指示書をPowerPointで作成していました。その指示がうまく伝わらないことも多々あるので、時には参考となる画像や素材を集めて、ほぼバナーに近いレベルまでこちらで作るというようなことも行っていました。
ストレスを感じるのは指示を出す側だけでなく、指示を受けるクリエイティブ担当も同様だと思います。外部の会社に委託し、顔をあわせてコミュニケーションできない場合はなおさらです。また、ECでクリエイティブを内製している場合は、専門的にクリエイティブ制作を学んでいない人や、完成イメージの脳内のストックが少ない人もいると思いますので、認識と伝えかたのズレが、さらにコミュニケーションのストレスを増加させているのでしょう。
皆さんもご経験があると思いますが、指示を出す側は、修正が的確に行われないとあきらめちゃうんですよね。もちろん、マネジメント側の立場の人はあきらめてはいけないのですが、ある程度のブレを許容するようになると感じています。我々のECの場合はスピードも重要ですから、あきらめてとりあえず現状でいったん掲載する。私は、その次の依頼のタイミングで、「前回は◯◯だったから、今回はこう改善してみてはどう?」とコミュニケーションするようにしています。
AdFlow Proofを使ってみてまず思うことは、レビュー対象のページのURL入力だけで画面キャプチャを取得してくれるのが便利ですね。しかも、スマホサイトのキャプチャも取得してしまう。こうした点からも指示出しの作業が効率化されますし、クリエイティブ担当とのコミュニケーションの円滑化も期待できます。かつ、指示ごとにチャットで質疑応答を重ねることができ、ステータス変更もできるため、ヌケモレが減りそうですね。
しかし、改めて自社サイトを見つめてレビューしてみると、気になるところが続々出てくるものですね。そしてデモのつもりだったけれど、AdFlow Proofはレビューするのが簡単だから、次々本気でレビューしてしまいます(笑)