ECにおける物流のトレンドと課題とは
――現在の物流業界全体のトレンドについて教えてください。
小橋 ヤマト運輸が値上げを発表したことで、配送料の問題が取り沙汰されていましたが、たどり着く先は、これから送料が下がることはないよね、ということ。以前の盛り上がりは、収束してきていると思います。それに代わって最近は、徐々にロボティクスの話題が増えてきましたよね。Amazonがドローンでの配送を始めたときと同じように、最初は遠い未来でしかなかったロボットにも、興味が集まり始めているように感じています。
川添 やむなく事業者側が値上げを予算に組み込むようにしているんでしょうね。物流を宅配まで含めるのであれば、日本郵便が事前に指定した場所に荷物を置いておく「置き配」を強化したり、安価な宅配ボックスや、OKIPPAのような宅配袋をサービス化するベンチャーなどが多く登場するようになりました。物流は、既存のプレーヤーが強いイメージがありましたが、そこにどんどんベンチャー企業が参入するようになってきましたよね。
――EC事業者にとって、物流面のいちばん大きな課題は何だと思いますか?
小橋 設備投資ができていないことではないでしょうか。物流においてもっとも事業者のかたが優先されるのは、まだまだコスト削減です。いままでの倉庫というと、その大部分は作業する人に依存するものだったので、ベテランのパートさんが100個さばけていたものが、120個になったからよかったね、という世界でしたが、ECの成長や、オムニチャネル化が進むにつれ、物流も複雑になってきました。これからEC 化率が増えていけば増えていくほど、それに比例して物流コストも上がっていくことは間違いありません。だからこそ、物流にしっかり設備投資をして未来に備える必要があるのですが、まだ物流にまで投資ができている企業は少ないと思います。
川添 EC 事業者はいままで物流を単なるコストだと定義していたので、まずは考えかたのイノベーション、すなわち事業として攻めるために物流を戦略的に構築するというような考えかたに転換する必要がありますよね。イー・ロジットの角井亮一さんが「戦略的物流」という言葉を使っていらっしゃいますが、まさにそれをやっているのがビームス。倉庫を見せていただいた時には驚きました。
――どういった点に驚かれたのですか?
川添 いちばんは人が少ないところですね。ECの出荷も店舗への出荷もピッキングは人がやらなければいけません。ですがビームスの倉庫では、それ以外のほとんどすべてが自動化されていました。
小橋 ビームスは、自分たちのブランドに最適化された物流の仕組みを自社で開発しています。膨大なコストがかかっていると思いますが、5年で回収できれば問題ない、という考えかたなのではないでしょうか。先を見越して、そのための先行投資を決断された点がすばらしいと思います。
川添 ECの物流は外に出すという考えかたもあると思いますが、そうされなかったのは、それだとブランドのサービスレベルを担保できないということなんでしょうね。要は、物流も、ブランドや企業の文化にフィットさせているのだと思います。