映画監督 Spike Leeからの1本の電話がブランドを変えた
New Eraが「SAP Commerce Cloud」を導入してBtoB、BtoCのプラットフォームを構築した背景には、同社のビジネスの変化がある。
New Eraは1920年にニューヨーク州で創業、野球帽を作るようになったのはその12年後からだ。それ以来、メジャーリーグベースボール(MLB)の各チーム向けのキャップメーカーというポジションを確立している。
同社が単なるキャップメーカーからファッション性の高いヘッドウェア、ストリートファッションの必須アイテムへと変化したきっかけは、1996年10月のある人からの電話だ。CEO、Chris Koch氏あてにかかってきたその電話は、映画監督のSpike Lee氏から。自分専用の赤いNew York Yankeesの59FIFTY(New Eraの野球帽の型)が欲しいというもので、「冗談と思ってChrisは30秒で電話を切った」とGan氏。だがその後Lee氏より再び依頼があり、本物だったとわかる。
Chris氏はLee監督の要望に応じて、赤いYankeesの59FIFTYを作った。すると問い合わせの電話が殺到したーー「ヘッドウェアが自己表現の一部に、自分の創造性を表現するファッションの要素になった」とGan氏は変化を形容する。その後も、ミュージシャンのJustin Bieber氏らセレブが好んでNew Eraのキャップを被るようになる。このような変化は、それまで野球選手を中心に販売してきたNew Eraにとって大きな意味を持った。
それまで米国では、最初に野球観戦に行く時に買ってもらう野球帽でNew Eraに触れる消費者が多かった。だが、ファッションアイテムとして拡大したことで、野球選手や野球ファン以外の人がNew Eraの顧客になった。
同時に、日本を含むアジアでは、最初から「アメリカンファッションのブランド」として受け入れられた。これらの変化を受け、New Eraは「ライフスタイルカンパニー」と自社を位置づけるようになった。