広告主やメディアパートナーと新たな未来を「ともに拓く」
2018年3月9日、東京・六本木のザ・リッツ・カールトン東京において「バリューコマースサミット 2018」が開催された。同イベントは、バリューコマースのサービスを利用する広告主(EC事業者など)やメディアパートナー(アフィリエイトサイト運営者など)に向けて、同社の主力事業の状況や今後の戦略について発表する場となっている。
まず、代表取締役社長 最高経営責任者の香川仁氏が登壇し、同社が来年でサービス提供開始20周年を迎えること、それに先立ち今年から「ともに拓く」を新たなブランドコンセプトとして掲げることなどを報告。「プラットフォーマーとして引き続き、広告主様のマーケティング成果とメディアパートナー様の成功報酬、それぞれの最大化に尽力していきます」と明言した。
続いて、執行役員 最高戦略責任者の長谷川拓氏が、バリューコマース全体としての2017年度の実績について説明。同社では集客、接客、リテンションそれぞれをサポートするソリューションを用意しているが、いずれも堅調に伸びているという。とくに接客・リテンションのツールとしてYahoo!ショッピング出店ストア向けに提供している「STORE's R∞(ストアーズ・アールエイト)」は好調であり、提供開始から1年で利用ストア数が4,000店を超えたそうだ。
また、2018年度も引き続き「流通拡大のポジティブスパイラル」に取り組んでいくことを強調。新規顧客を獲得し、顧客育成でLTV向上を図る。それによりメディアへの報酬アップを実現し、結果としてメディアでの露出が拡大することで、さらに新たな顧客獲得へとつなげていく──ポジティブスパイラルについて、長谷川氏はそう補足した。
その実現に向けて、バリューコマースではこれまでの機能別のサービス提供から、チャネル別にソリューションを提供する体制へと変更。「Yahoo!ショッピング」の出店ストア向けチャネルと「独自ドメイン」のECサイト向けチャネル、ふたつのチャネルにおいてそれぞれ集客からリテンションまで連携し、トータルにサポートできるソリューションを提供していくという。
アフィリエイト事業では「技術による課題解決」にも注力
アフィリエイト事業における昨年度の取り組みや今年度の注力施策については、アフィリエイト事業統括 本部長の伊藤孝司氏が説明した。
伊藤氏らが昨年とくに重点的に取り組んできたのは、「報酬単価、CVR(コンバージョンレート)の最大化」「動的配信によるCTR(クリック率)向上」「運用効率の改善」「レポートデータのオープン化」「提携マッチングの改善」の5つ。これらを実現するために、新たなツールや既存ツールの新機能開発に注力してきた。
そのひとつが、運用効率改善に大きく貢献する「LinkSwitch(リンクスイッチ)」だ。このツールにより、メディア/アフィリエイターは記事内で広告主への直接リンクを貼るだけで、自動的にアフィリエイトリンクへと変換される仕組みとなっている。航空券予約サイトの「スカイチケット」では、LinkSwitch導入直後にアクティブメディア数が133.2%に増加。一般的なリンクに比べて非常に高いCVRを実現しているという。
「これまでバリューコマースの事業展開は、どちらかといえば営業中心でした。今後は、このような『技術による課題解決』にも注力していきます」(伊藤氏)
2018年度の重点課題として伊藤氏が挙げたのは、「提携マッチングの改善」「トラッキング精度の向上」「レポートの改善」「ヤフー・ジャパンとの連携」の4点。これらについても、さまざまなテクノロジーを駆使して解決を図っていく方針だ。
すでに実装・提供開始されているものとしては、Cookieの利用に制限がかかる場合にもトラッキングを可能にする「デバイス推定技術」、クリック時と注文時で使用されたブラウザーやアプリが異なる場合にも計測・把握できる「ブラウザー・アプリ別レポート」などがある。ほかにも、新たなツールや機能のリリースを予定しているという。
集客とリテンションの両サービスを利用するストアは売上が4倍に
続いて、ECソリューション事業統括 本部長の岩永直也氏が登壇。Yahoo!ショッピングのストア向けに同社が提供しているソリューションの概要と、それらの利用状況や実績などを紹介した。
まずは、接客・リテンションを支援するSTORE's R∞について。同サービスでは、Yahoo!ショッピングのユーザーを属性や行動履歴、購買履歴でセグメントし、狙ったユーザーに対してクーポンを主体とする適切な内容のコンテンツを配信するという「コンテンツの出しわけ」が可能だ。
昨年からはYahoo!ショッピングの検索結果画面にもクーポンの有無が表示されるようになり、ストアへの集客にも有効なサービスとなった。もちろん、ターゲットを狙い打ちしたクーポンの出し分けは、CVRの向上に効果的だ。さらに、「○○円以上購入」などの条件により、注文単価アップも期待できる。
「実際に数百のストアのサンプリング分析をした結果、ご利用いただいているストアさまの売上は、平均して、サービス利用前の141%にまで増加しており、そのうちSTORE's R∞経由の売上比率も一定数あることがわかりました」(岩永氏)
一方、Yahoo!ショッピング出店ストアの集客を支援するのが、CPC(クリック保証型)広告サービスの「StoreMatch(ストアマッチ)」だ。こちらは、Yahoo!ショッピング内の検索結果画面の目立つ位置に「ストアのイチオシ!」という広告などを表示できるのが特徴。2017年の実績で平均ROAS(広告費用対効果)700%以上と、非常に高い効果を発揮している。
岩永氏によれば、STORE's R∞とStoreMatchの両方を利用しているYahoo!ショッピング内のストアは、すでに2,000店以上。それらのストアは、どちらも使っていないストアと比較して約4倍の売上実績をあげているそうだ。
「ふるなび」とLinkSwitchとの相性は抜群
後半の講演では、ふるさと納税サイト「ふるなび」を運営する株式会社アイモバイル 執行役員 事業企画本部 本部長の加藤秀樹氏、事業企画本部 マネージャーの柳井了氏を迎えて、パネルディスカッションを実施。広告主の立場から、LinkSwitchをはじめとしたアフィリエイトサービスの導入効果について語った。モデレーターは、バリューコマース アフィリエイト本部 コンサルティング3部部長の神谷真輔氏が担当。
神谷(バリューコマース) まず、ふるなびを紹介しているメディア様やその記事の内容について、どう感じていらっしゃいますか?
加藤(アイモバイル) 特産品や観光地など、ふるさと納税のトピックをいつもよく調べていただいていて、ありがたいです。旬な情報をどんどん取り上げてくださる方が多くて、それがCV獲得にもつながっているのだと思います。
神谷(バリューコマース) そういう意味では、アフィリエイトとの相性が良いのではないでしょうか。
加藤(アイモバイル) ふるさと納税サイトの中でも、ふるなびは玄人的な方たちに好まれているように思います。返礼品のカテゴリが豊富で、「ふるなびにしかないもの」も少なくありません。アフィリエイターの方にとって打ってつけの話題ではないでしょうか。
柳井(アイモバイル) 次々と記事を書いて公開していただく「スピード」も重要なポイントだと思います。ふるさと納税の申し込みは全体の半分が12月に集中することもあり、10~11月は自治体の返礼品入れ替えが非常に多くなりますが、メディア様にはその都度、迅速に記事に反映していただけました。
神谷(バリューコマース) メディア様のスピーディな対応は、LinkSwitch導入による効果も大きいと思います。実際に、12月はLinkSwitch経由の注文件数が40%以上を占めていますね。
柳井(アイモバイル) はい、アフィリエイト業界にとって革命的なツールだと感じました。やはり、アフィリエイターの方の気持ちが高まって、勢いに乗って書いたものが面白い記事になると思うのですが、アフィリエイトリンクを1つひとつ設置していく作業でその勢いが削がれてしまうこともあるのではないでしょうか。それが必要なくなるのは素晴らしいことだと思います。
より高い効果を生む、ASPとのリレーション構築のコツ
神谷(バリューコマース) メディア様の記事の質やスピードのほかに、アフィリエイトで最大の効果を得るためには何が必要だとお考えですか?
加藤(アイモバイル) 2015年に他のASPでアフィリエイトを運用していたのですが
神谷(バリューコマース) 身にあまるお言葉、ありがとうございます。我々ASPとしても、お客様と同じベクトルを持って意思疎通をスムーズに行うこと、そして、言いたいことが言い合える関係性を築くことが非常に重要だと考えています。
柳井(アイモバイル) 当社には自治体に直接うかがってお話を聞いてくる営業も何名かいるのですが、そのような現場で生まれた情報もできるだけタイムリーに神谷さんにお伝えできるようにと意識しています。とくに最需要期の12月付近はいろいろと変更事項も多いので、神谷さんとの密な連携が欠かせません。
加藤(アイモバイル) 興味を持ってもらえるような新鮮な話題をいち早く神谷さんに伝えて、一気にアフィリエイターの方に展開してもらう。そして、ふるなびで公開した瞬間にどんどんその紹介記事があがってくる。そんな状況が一番望ましいと思っていますので、我々としてもこれまで以上にコミュニケーションを強化していきたいですね。
神谷(バリューコマース) やはりアフィリエイトの効果を最大化するためには、同じ思いを共有し、常にスムーズかつスピーディーに連携できるような関係性の構築が不可欠ということですね。本日はありがとうございました。
【まとめ】
●来年でサービス提供開始20周年を迎えるバリューコマースの今年の新たなブランドコンセプトは「ともに拓く」。
●2017年度は、Yahoo!ショッピング出店ストア向けサービス「STORE's R∞」が好調。同出店ストアの集客を支援するCPC広告サービスの「StoreMatch」と「STORE's R∞」の両方を利用しているストアの売上は、どちらも使っていないストアの4倍に。
●記事内で広告主への直接リンクを貼るだけで、自動的にアフィリエイトリンクへと変換される「LinkSwitch」を導入したスカイチケットは、その直後にアクティブメディア数が133.2%に増加。
●アフィリエイトで最大の効果を得るためには、同じ思いを共有し、スムーズかつスピーディーに連携できるASPとのリレーション構築が不可欠。