旅が好きでネットの世界へ
ECの売上を爆発的に成長させ続ける
西井さんのキャリアは、大学在学中からの無類の旅行好きという趣味に遡る。
「土木建設関係の学科だったんですが、大学が休みになるたびに旅に出ていました。大学院に進んだのも、旅行したいがためでした。就職してもやめられず、1年と経たずに退職してまた旅に出たりしていましたね」
その様子を、自らホームページを制作して情報発信。2003年当時は、まだ目立ったブログサービスもなく、西井さんのウェブ旅行記はポータルサイトのニュースとして取り上げられることもあった。「インターネットっておもしろいなと思いました」
そして、海外の商材を扱っていることに魅力を感じ、化粧品・医薬品の輸入販売を行う通販会社に就職。ここでECに出会う。
「今日ソースを変えたら明日、検索順位が上がっている時代でした。AdWordsやアフィリエイトなど新しい手法が次々登場し、勉強して実行するとすぐに効果につながる。もっともっと勉強したくなりました」
インターネット黎明期の恩恵を受けた人は少なくないが、その中でも西井さんは頭角を現し、ドクターシーラボのトップから、ECをもっと伸ばしたいから入社しないか、と声がかかる。
「どこを評価していただいたのかはいまだにわからないのですが、トップ自身も、創業して自らやってこられた方だったので、僕が自分で手を動かしてSEOやリスティングなどをやったりしていたのが気に入ってもらえたのかもしれません」
西井さんは、在籍した6年間でドクターシーラボのEC売上を5倍にまで伸ばす。そして2013年末に退社。西井さんはまた旅に出る。起業は、ドクターシーラボに入社する以前から意識していた。どんなビジネスで起業しようかと考えながら半年間ほど南米やアフリカを旅していると、20社もの企業からCMOなどデジタルマーケティングの責任者として迎えたいと声がかかる。
「『化粧品会社やるの?』と聞かれたりもしましたが、デジタルマーケティングのプロフェッショナルとして生きていきたいという思いがありました。前職を退社して旅をしていたら、さまざまな人が自社のマーケティングで課題を持っていることがわかった。ですから、マーケティングをサポートする会社を始めることにしたんです」
現在、CMOとして働くオイシックスも、声がかかったうちのひとつだった。
「オイシックスからは契約をいただいて、移動しながらSkypeでコンサルティングをしていたんです。南米とかアフリカから(笑)。帰国後に、兼業でもいいので働かないか?と言われ、僕自身も常にEC事業者として最先端でマーケティングをしている必要性を感じていたので、入社させていただくことになりました」
オイシックスは西井さんの入社をきっかけに兼業制度を導入し、今や、西井さんが代表を勤める会社・シンクロのオフィスは、オイシックスと同じビルのフロア内にある。旅をし、コンサルをする西井さんにとっては、オフィスが同じ場所にあることで社長とCMOを両立することができているのだ。