円高、税制変更はあるも
インバウンド観光客との接点は持つべき
2016年が後半に向かうに連れ、「爆買い」も沈静化し、一般の興味が薄れていった越境ECとインバウンド観光。その市場でビジネスを行う、事業者目線ではどのように変化していたのだろうか。
「越境ECとインバウンド観光に関する2016年のいちばん大きなトピックスは、円高だと思います。観光庁の調査結果を見ると、中国からの観光客の方の消費額がもっとも多いのですが、金額がダウンしているもののそれは円高の影響で、元ベースではそれほど変わっていない。つまり観光客が、観光で使おうとお財布に入れる金額には、大きな影響はないと見ています」
2016年4月8日には、中国で越境ECに関する税制が変更。通関手続きにおいても、一般貿易と同様の書類提出が義務付けられるなど、引き締め政策かと現場の混乱が見られたが、書類提出についてはいったん、2017年5月まで延期とされ、2016年の年末には再度、2017年の年末まで延期されると発表された。
「越境ECでの購入についても、細かく見ると物品によっては増税、アパレルなどは減税となっており、大きな方向性としては、今後も越境ECに関しては、中国政府はエンジンブレーキをかけつつも、基本は促進策をとると考えるのが穏当。引き続きウォッチして、複数の情報源からその対応を探るべきかと思われます。
別の視点で見ると、実はBtoBのビジネスを伸ばすことにも貢献しています。中国の消費者が日本企業から買うものは、中国で作られていますよね。中国の消費者が越境ECで買えば買うほど、中国の経済が刺激されるわけです。
将来的に、年間5億人の中国人観光客が世界に出ていくと言われています。爆買いブームは過ぎたとはいえ、観光すれば、何らかの消費が生まれます。そこでまず、きちんと接点を作ること。そして一時的に終わらせず、自国に帰ってからも購入し続けてもらう。私はこれを“観光とECのマリアージュ”と名付け、一昨年くらいから訴えています。EC事業者が観光客と接点を持とうとするのはもちろん、観光業の方もECを勉強しようとしています」