中古時計の現品販売を行い、価格・回転率で勝負するCLOSER
名古屋のメンズブランド専門リサイクルショップ「CLOSER」。中古ブランド時計、バッグ、宝石の卸業から始め、BtoCでもビジネスをしようと、2010年からヤフオク!で中古ブランド時計の販売を開始したのがEC事業の始まりだ。
当初は個人アカウントだったが、オークション形式での販売が好評で法人アカウントに切り替えた。2012年には、楽天市場にも出店。ふたつのモールでつかんだのは、売上アップに貢献するのは「在庫量」と「販売価格」だということ。
「当初、楽天市場に1,000点、ヤフオク!に4,000点という比率で出品していました。在庫連携ツールを採用したことで、実質、楽天市場に5,000点、ヤフオク!にも5,000点出品できている状態になった。楽天市場の在庫量が5倍になると、売上は2倍になり、売上が在庫量に比例することを実感しました」
競争力のある販売価格は、CLOSERの特徴である“現品販売”で実現。多くのリユース事業者が、職人が修理を施してより良い状態とし、その分を価格に上乗せして販売するスタイルをとっているのに対し、CLOSERは仕入れたそのままの状態で、その分オトクな価格で売る。結果として、回転率を高く保てるわけだ。
国内より高く売れることも!英語が苦手ながらeBayに出品
ヤフオク!、楽天市場と、日本のインターネットショッピングモールで成功をおさめると、次の市場として海外が視野に入った。
「業界自体もグローバル化が進んでいく中で、海外に進出する同業者の方が増えてきました。ブランド、モデルによっては、国内よりも高く売れるという情報も耳に入り、当社でも挑戦してみようということになりました」
知名度、ユーザー数を判断基準に、出品先は迷うことなくeBayに決定。手続きなど準備期間に2ヶ月ほどかけ、2013年12月から販売を開始した。
「オープンまでのサイト構築は私が担当したのですが、英語がそれほど堪能なわけではありません。eBayは管理画面などもすべて英語で書かれているので、そこは苦労しました。でも、わからないことはイーベイ・ジャパンさんにお尋ねすればすべて答えてくれたので、英語に強くなくても、なんとかなるというのが私の感想です」
CLOSERのスタッフは17名。英語で日常会話ができるスタッフは数名いるが、ネイティブのような堪能なメンバーはいないと言う。
eBayで月商1,000万円突破!ユーザーの傾向が見えてきた
出品から1年と4ヶ月、2015年4月の時点で、eBayの月商は1,000万円を突破。為替の影響は受けるが、売れるという手応えを感じている。
「eBayはとにかく、反応がめちゃくちゃ早いです。出品した5分後に、問い合わせや注文が来ます。そこが国内とは違いますね」
現在、eBayの在庫量は400~500個程度と、国内の10分の1程度となっている。
「最初は、高値で売れそうな商品をリサーチして出品していたのですが、なかなか思い通りにはいかない。ですから、決め打ちして出すよりも、いろいろと出品して反応を見てみようという方針でやることにしました」
国内でも人気がある高級ブランドは、eBayでも人気が高い。国内よりもeBayで高値がつくのは、日本の一部のブランド。国内で不人気のブランドは、eBayでもそれほど動かないなど、ある程度の傾向は見えてきた。
圧倒的なユーザー数で反応が早いとはいえ、配送料は割増になる越境EC。その商品をeBayに出すべきか、国内に限定するべきか。CLOSERが重視する回転率から言えば、卸に回すべきか。試行錯誤は続くが、国内ECで得“売上アップに貢献するのは「在庫量」と「販売価格」だという知見は、越境ECでも通用すると考えている。
「在庫連携システムの使い勝手がもう少しよくなったら、eBayも連携する予定です。そうなったら、楽天市場、ヤフオク!、eBayのいずれも同じくらいの売上が立つのではと見ています」
トラブルもうれしい反響も、大きめなのが海外ユーザー
現在、eBay.comに出品していることから、主なターゲットはアメリカで、購入もアメリカからがもっとも多いと言う。しかしながら、アジアや、はじめて名前を目にするような国からも注文が入るのは、eBayならではだ。さまざまな国から注文が入るとなると、越境EC初心者としては、梱包・配送が気になるところである。
「ダンボールの素材は同じですが、サイズを大きくして、その分、梱包材を多めに入れるようにしています。そのまま返品されてくる荷物を見ると、『踏んだのかな』と思うくらいの変化が起きていることがあり、その時は驚きますね。時計は精密機器なので、輸送の振動が影響することもあり、そこは難しいところです」
一方で、海外ユーザーならではのうれしい反応もある。
「こちらが気持ちの良い対応をすると、気持ちの良い反応が素直に返ってきます。たとえば、メールに『超ありがとう!』という意味合いのことが書いてあるとか。やはり、配送が速いことは喜ばれます。アメリカでも、早ければ3日後に届きますから、日本と同様に迅速な対応を心がけているだけなんですが、喜びの表現がストレートなのはうれしいです」
納得しにくい理由で返金を求めてくるようなユーザーもいるが、それは「国内ECでも同じ」と小島さん。リスクを不安視するよりも、可能性に目を向けて先へ進む。それがまだ成功事例の少ない越境ECに臨むにあたって、必要な条件なのかもしれない。
まずは在庫量 ジャンルや地域の次の一手はeBayと相談で
さらに売上を伸ばし、同社の方針である回転率の高さを追究していくため、まずは商品数を増やしていくという方針が見えている。具体的な打ち手としては、在庫連携ツールの使い勝手が良くなったところを待って、eBayとも連携することと明確だ。
イーベイ・ジャパンによれば、時計ジャンルに関しては、日本からの出品数はニーズと比較するとまだまだ足りないそうで、同社が商品数を増やすことは、市場ニーズに応えることを意味している。
「まずは商品数を増やし、中古ブランド時計というジャンルで地位を確立したいと思います。その後、まだ国内でも着手できてはいませんが、ブランドジュエリーもやってみたいね、という話は社内で出ています。アメリカ以外の地域への出品は、イーベイ・ジャパンさんにぜひアドバイスいただきたいところです。eBayでの越境ECには、非常に可能性を感じていますから」
言語の苦労はゼロにはならないが、社内のスタッフも「世界でも通用する喜びは実感している」と小島さん。現品販売で価格勝負し、回転率を高く保つという、明確な方針で国内ECでも成功、海外販売でも実績を作りつつあるCLOSER。越境ECのひとつの成功モデルとなるまで、それほど時間はかからなそうだ。