新しいECを作るための発想、そしてツール選び
増渕(日本マイクロソフト) これまでの話を踏まえて、ECに話を戻すと、これからのECは、フレームワークをいかに破壊的に越えていけるかだと思うんですよね。先ほど挙げたPizza Hutさんの例や、富士フイルムさんのフォトブックなど、モノの外部価値をストーリーテリングで高めて、ご商売を伸ばしていくという。
小畑(UNCOVER TRUTH) ビックリマンチョコ作戦ですね。チョコを売るつもりが、消費者は皆、シールに熱狂した。
増渕 それも単純にシールを入れればいいというものではなくて、モノの世界観、関係性に目を向けられると強いんじゃないでしょうか。そのためには、お客様をいろいろな視点から分析すること。既成のマーケティングオートメーションで、お客様を階層分けして、何ヶ月購入がなかったらこういうメールを送りましょうという施策ではなくて、顕在化していない戦略、差別化を見つけようとする取り組みです。
どうやって見つけるかというと、「USERDIVE」のヒートマップだったり、人工知能だったりでインサイトを見つけ出して、新しい発見をして、最後は人間がクリエイティブに考えていく。それが、先進的なEC企業がとるべきスタイルではないでしょうか。
小畑 おっしゃるとおりですね。これは「USERDIVE」を採用してくださっているエキサイト様の受け売りなのですが、同社では「落ちた飛行機理論」というのを実践していらっしゃいます。第一次世界大戦で、イギリス空軍が戦闘力を上げるために、落ちた飛行機を徹底的に分析したという話があります。ウェブサイトのコンバージョンも同様で、ドロップユーザーのうちコンバージョンする可能性のあるユーザーをドロップさせないためには、ドロップユーザーを分析するしかない。そのために、「USERDIVE」を使ってくださっているそうなんです。
増渕 かっこいいなぁ。
小畑 増渕さんがマーケティングオートメーションの話をされましたが、数字だけで分析していくと、コンバージョン率の上下は見られるのですが、ドロップしたユーザーはページのどこまで見てどこからは見ていないのか、なぜ最後まで見ずにドロップしたのか、といったことがわからないんですね。ECサイトで言えば、サイトに訪問してくださっているけれど、まだ買ってくださっていないお客様が、なぜ買ってくださらないのかを分析したいはずなんです。
それを探り出すために、当社では徹底的にギャップ分析を行います。「USERDIVE」の特徴的な機能に、ユーザーがサイト上でどのように動いたのかを動画でリプレイするというのがあります。それを見ると、購入していないユーザーは、一番上の任意のフリースペースに一生懸命入力して途中で挫折していて、購入してくださったユーザーは、任意のスペースは飛ばして必須だけ入力している、といったことがわかります。そこから、必須項目は上に、任意のスペースは下に設置しようといった施策が出てくるわけです。
これくらい深く、マニアックな分析が、ECには必要ですよね。それぞれのページで、ユーザーがどのような体験しているかを理解できなければ、ドロップユーザーにコンバージョンしてもらうための改善策は出てこないと思います。
増渕 世の中にはたくさんのソフトウェア、ミドルウェアがありますけれど、9割以上の機能が使われていないんですよね。世の中にたくさんある社内業務ソフトウェアも同様で、知ってしまえば便利な機能はたくさんあるのですが、多くの人が使いかたを知らない。やっぱり高度なツールを使いこなすには、ベアプログラミングじゃないですけど、お兄さん先生のようなアドバイザーが必要なんです。
「USERDIVE」の動画機能にしても、リリース当初はインパクトがあるでしょうが、実際に使いこなせるかどうかは、先ほどのような実例がないと難しい。だからツールだけで判断せず、ビジネスパートナーとして、しっかり信頼できるところを選ぶのがいいと思うんです。そういう会話をするには、採用する側にも熱量が必要です。お互いのカロリーの消費は、似ているほうがワークしますよね。
小畑 はい、そして、熱量の表現方法は十人十色です。先ほどの「落ちた飛行機理論」の片山様は、とてもロジカルな方で、エキサイト様の人材育成方針もかかわってくるのですが、チームにノウハウを貯めるべく、「USERDIVE」を使いこなすための仕組みを細かく整備されています。一方で、ガリバーインターナショナル様は、営業の最前線の方を、ウェブマーケティングチームに引っ張りこまれました。技術のプロではなく、ユーザーのインサイトを知り抜いている方に、UXツールを使わせようというわけです。
増渕 どちらも共通しているのは、ツールをフレームワークのように使っているというところですね。ツールから、ツール以上のパワーを引き出すために、人間のモチベーションで補完しているんでしょう。すごい熱量でもって、ツール以上のパワーを引き出すことで、顕在化していないインサイト、戦略、戦術が見えてくると思います。
チャネルが多様化して、商品を売るから売れるのではなく、ストーリーを売っていたらたまたま商品が売れたという現象が今後も続くとすると、不連続なものをよしとするというか、組織や作業に持ち込むような、マネージャーの大胆さは非常に重要だと思います。
◆「売上に貢献する」サイト分析・改善のフローとは? インタビューでは紹介しきれなかった、富士フイルム事例の詳細、「USERDIVE」のノウハウを大公開! 全31ページにわたるホワイトペーパーのダウンロードはこちら