KPIが部分最適になる理由1:「売上の構造」が共通言語になっていない
ここからは、KPIが部分最適指標になってしまう理由を考えます。その最大の理由は、能力不足でも熱量不足でもなく、「売上の構造」がチーム内で共通言語化されていないからです。
冒頭にも出てきた以下の式を思い出してください。
「売上=顧客数×客単価」
・顧客数=新規獲得数+既存顧客数
・客単価=購入単価×購入回数
広告やサイトリニューアル、CRM、配送品質の改善などすべての施策は必ずこの式の「どこか」を動かすために存在しています。
しかし現場では、「自分たちの今の施策が、この式のどこに、どのリードタイムで効くのか」を説明できないまま、目の前のCPAやCVRだけが議論されています。
全体戦略から切り離されたKPIは、ただの「部分目標」です。これが迷走してしまう要因です。
KPIが部分最適になる理由2:「動きやすい数字」が意思決定の邪魔をする
ECには、大きく分けて2種類の数字があります。
1. フローの数字(すぐ動く数字): CPA、CVR、日次売上など
2. ストックの数字(積み上がる数字): F2転換率、LTV、継続率など
人間の心理として、どうしても「1. フローの数字」に意思決定が引っ張られます。変化がすぐに見え、成果を説明しやすいからです。ですが、ここに罠があり、KPIが部分最適になる理由でもあります。
「短期KPI(フロー)の最適化が、中長期の構造(ストック)を破壊する」という事態が往々にして起きてしまいます。
たとえば、CVRを上げるために過度な値引きクーポンを配ったとします。CVRは上がり、その日の売上は立ちます。しかし、その結果集まったのは「安さ」に惹かれた顧客ばかりになり、翌年以降のリピート率は減少してしまいます。
「CVRとCPAは改善したが、事業の寿命は縮んでしまっている」
これに気づくのは下手すれば数年後です。これは判断ミスというより、構造を見ていないことによる必然の事故です。
ちなみに、筆者はそういった一時的なセール施策に対して否定的ではないです。
今月の売上を追いかける上でそういった手段は必要な時もあります。大事なのは「そればかりになってはいけない」ということです。
おわりに/構造から目を逸らさないこと
なぜ、「KPIは改善しているのに事業が伸びない」のか。答えはシンプルで、地図(階段図)を持たずに、日々の施策や短期のKPIだけを評価しているからです。
筆者が考える「守破離の守」とは、「ビジネスの構造を理解し、その構造を崩さないように日々の事業推進を行うこと」です。
売上=顧客数×客単価
この当たり前の式を、単年ではなく、時間軸(階段図)で捉え直すこと。それができて初めて、CPAやLTVといった個別のKPIを議論する資格が得られます。階段図は使いこなせれば強力な武器になります。ぜひ活用してみてください。
次回は、この階段図の視点を持った上で、「LTV」を高める方法についてまとめていきたいと思います。
