衛生環境のプロフェッショナル・ダスキンが描く、デジタルとリアルの「顧客接点創出」の融合
━━ダスキンといえばモップのレンタルなどの訪問販売で非常に強い顧客基盤をお持ちですが、まずはEC事業の歩みから教えてください。
冨田:ダスキンは2023年11月に創業60周年を迎えました。社名の由来はほこりの英語である「ダスト」の「ダス」と「雑巾(ぞうきん)」の「きん」を組み合わせた造語です。水で濡らした雑巾で拭き掃除していた時代に、お掃除を少しでも楽にしたいという創業者の思いから化学雑巾のレンタル事業としてスタートしました。
ECサイトを立ち上げたのは今から11年前です。それまでの、弊社のWebサイトは商品やサービスをカタログ的に見ていただく場所でしたが、自社でスクラッチ開発したカート機能を導入し、本格的なECの活用へと舵を切りました。
━━訪問販売という強力なリアルチャネルがある中で、なぜECに注力されたのでしょうか。
冨田:背景にはお客様のライフスタイルの変化があります。以前は直接お会いしての交換が当たり前でしたが、共働き世帯の増加により、現在は「ポスト投函・ポスト返却」といった非対面でのレンタルが都市部を中心に増えています。そうなると、デジタル上での接点が重要になるのです。
現在、ダスキンモップなどのご家庭向けレンタルの契約お客様は約400万軒になりますが、Web会員サイト「DDuet(ディーデュエット)」の会員数は2025年12月に200万人を突破しました。データで見ると、リアルとデジタルの両方で接点があるお客様は、LTV(顧客生涯価値)が高く、解約率も低いという明確な結果が出ています。
デジタルを加盟店の活動を支える「デジタルアシスト」と位置づけ、両方の接点を持ってもらえる体験設計を大切にしています。

━━若年層へのアプローチという側面もありそうですね。
冨田:おっしゃる通りです。今の大学生や新卒世代の中には、残念ながらダスキンを知らない層も増えています。結婚や出産といったライフステージの変化に合わせてダスキンを選んでいただくためには、今の時代、デジタルでの接点を持つことが不可欠です。実際に0120「100番100番」でお馴染みのダスキンコンタクトセンターへの電話注文とWeb注文の数は7年ほど前に逆転し、現在ではWebからの注文が電話の6倍以上にまで増えています。
レンタル事業を核に、AI時代のSEOと「見積もり導線」を最適化する
━━EC運営におけるKPIや、現在注力されている施策についてお聞かせください。
冨田:最重要のKPIは「受注数」です。レンタル商品、エアコンクリーニングなどの役務サービス、スポンジや洗剤など販売商品の3カテゴリそれぞれで追っていますが、特に根幹となるのはレンタル商品です。お客様とレンタル交換による定期的な接点を持つことで、お客様が日々の生活で求められていることをくみ取ることができ、ダスキンのさまざまな事業で総合的に解決提案をすることができます。
━━具体的な集客や改善の施策はいかがでしょうか。
冨田:集客の柱として広告とSEOを運用しており、特に検索ユーザーとの接点を大切にするためSEOには注力してまいりましたが、昨今、AIの普及に伴う自然流入の減少が課題となっていますが、従来のコラム更新に加え、AI検索時代に適応した最新の施策をいち早く取り入れ、多角的なアプローチに注力してまいります。
サイト内の改善では「カゴ落ち対策」や、サイト内の導線の見直しに加え、エアコンクリーニングなどの役務サービスは基準の料金があっても、お掃除機能付きかどうかなど、お客様先の状況を確認しながらの見積もりとなるため通常のECでの買い物とは異なります。そこをいかにご理解いただきながら最終的に注文していただけるか、という点が重要です。
━━確かに、金額が確定しないまま申し込むのは少し勇気がいりますね。
冨田:「とりあえず見積もりしてほしい」というニーズと、「細かくシミュレーションしたい」というニーズの二つに応えられるようにしています。エアコンのメーカー型番やオプション、浴室のサイズなどを入力いただくことで、より正確な見積もりを提示できるWebシミュレーション機能を備えたページを構築し、納得感を高める工夫をしています。
EC-CUBEへのリプレイスを決断した、ダスキン特有の課題とは?
━━今回、ECプラットフォームにEC-CUBEを採用されました。数ある選択肢の中から選ばれた「決め手」は何だったのでしょうか。
冨田:最大の理由は、当社の複雑なビジネスモデルに対応できる「カスタマイズの自由度」と、異なるカテゴリの商品を一括決済できる「統合力」で、開発・導入にあたっては、数多くの実績をお持ちのEC-CUBE認定制作会社によるサポートも大きかったです。以前のシステムでは、レンタル商品、役務サービス、販売商品をまとめて注文したい場合、それぞれの項目で決済を分ける必要がありました。

━━それはユーザーの手間になりますね。
冨田:はい。EC-CUBEを導入したことでこれらを1つのカートに統合でき、さらに別のサイトで運営しているベビー用品などのレンタルを手掛けるレントオール事業の「かしてネッと!」サイトのカートも統合することができました。
ソースコードを自由に触れるため、独自の業務フローや複雑な仕組みにも柔軟に対応できました。また、大規模ECを支えるツールとしての信頼感も大きかったですね。
━━具体的に、統合によってどのようなシナジーが生まれましたか?
冨田:例えば、レントオールの「かしてネッと!」サイトからベビーベッドをレンタルされたお客様に、お部屋を清潔に保つための掃除グッズを提案するといったクロスセルの仕組みが構築しやすくなりました。会員組織も統合したため、ベッドの貸出日に合わせて「組み立てはうまくいきましたか?」というフォローメールを送りつつ、後追いで別の商品・サービスを訴求するといったタイムリーなアプローチも可能になっています。
また、EC-CUBEは運用側の画面も見やすく、スタッフの負担軽減にも繋がっています。
リプレイスでCVRが2%向上!UI改善とクロスセルがもたらした成果
━━EC-CUBEへのリプレイスによって、数値的な成果は現れていますか。
冨田:顕著なのは、カート内でのコンバージョン率(CVR)が2%向上したことです。以前のカートに比べてデザイン性やUIのカスタマイズ性が高まり、お客様にとって分かりやすい構成にできたことが大きいと考えています。
━━決済の統合も、数字に寄与しているのでしょうか。
冨田:もちろんです。まとめて決済できる仕組みを構築したことで、クロスセル率も向上しています。例えば、役務サービスであるエアコンクリーニングを申し込みされたお客様に、モップなどのレンタル商品の無料お試しを提案するといった導線がスムーズになりました。
以前のスクラッチ開発では、少しの変更でも膨大な要件定義が必要でしたが、現在は引き続き初期構築をお願いした制作会社による保守でスピーディーに改善を実施できています。スタッフ側でも、以前は手作業で情報を突合する必要がありましたが、現在はその手間が確実に減り、運用効率が向上しました。
「一見さん」をプレミアム会員へ。加盟店をデジタルで支える思想
━━ダスキン様がEC運営において、最も大切にされていることは何ですか。
冨田:私たちは「リアルな接点があること」を独自の価値と考えています。理想は、会員様お一人おひとりのリアルでの取引状況を読み込んだ上で提案をすることです。今は、Webから注文した会員様の中にも、リアルな取引情報が紐付いていない「一般会員」の方が一定数いらっしゃいます。これをいかにシームレスに繋げていくかが、今後の鍵になります。

━━具体的に、どのような改善をされたのでしょうか。
冨田:これまでは、Webでプレミアム会員になるには「担当店コード」や「お客様コード」を自ら入力する必要がありました。これはお客様にとっても加盟店にとっても非常に煩雑な作業でした。
そこで導入したのが、加盟店が契約結果を管理画面に入力するだけで、自動的にWeb側でもプレミアム会員にランクアップする仕組みです。
━━加盟店の手間も大幅に減りますね。
冨田:はい。加盟店に「デジタルは自分たちの仕事を増やすものではなく、電動アシスト自転車のように助けてくれるもの(デジタルアシスト)だ」と実感してもらうことが重要です。リアルとデジタルの両方の接点で、よりお客様に寄り添った提案ができる体制を整えてまいります。
Webがメインになる時代を見据え、200万会員との関係を強化
━━最後に、今後の展望についてお聞かせください。
冨田:現在、新規のお客様の場合、Web注文とリアル(電話・対面)注文の割合はまさに過渡期にあります。いずれはWebの受注がリアルの新規受注を超えて行くことも鑑み、その時に向けて、会員数をさらに伸ばし、その精度を高めていくことが重要です。
新規のお客様には100%会員登録をしていただき、既存のお客様とともに、継続的な関係性をデジタルとリアルの両輪で築いていきたいと考えています。5年、10年後を見据えて、ダスキン訪販グループ全事業のプラットフォームとなるよう、お客様に寄り添ったデジタル体験を追求してまいります。
━━ダスキンの「デジタルの進化」から、今後も目が離せません。本日はありがとうございました。
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