TikTok Shopの成長を象徴 セレーナ・ゴメス氏によるブランドの成功事例
D2Cで重要な要素として、ECサイトのアップデート、ライブコマース、ソーシャルコマース、クリエイターエコノミーの活用も取り上げられていました。特に、これらをすべて統合したプラットフォームとして注目を集めたのが「TikTok Shop」です。
日本ではまだサービスが提供されていないTikTok Shopですが、TikTok内で動画やライブ配信を見ながら商品を直接購入できるECプラットフォームとして、急速に成長しています。視聴者は気になる商品をその場でカートに追加し、アプリ内でシームレスに決済が可能です。企業やクリエイターは、エンタメ性の高いコンテンツを通じて商品をプロモーションできます。口コミや流行がそのまま売上に直結する点が特徴的です。
その活用法を解説したセッションが「Forecasting the Future: Consumer Trends for 2025 and Fireside Chat with Rare Beauty」です。セッション内では、世界のZ世代の約60%が毎日TikTokを利用しており、ユーザーの半数がTikTok Shopで買い物をした経験があるというデータが紹介されました。


セレーナ・ゴメス氏が2020年に立ち上げ、瞬く間に世界的な人気コスメブランドの一つとなった「Rare Beauty」の成功事例も、TikTok Shopの成長を象徴しているといえるでしょう。Z世代の消費者は、商品がどのように使えるのかを「視覚的」に確認する傾向があります。そのため、Rare BeautyはTikTok Shopのコンテンツを「デモンストレーション型」にし、使用感を伝えて購入率を向上させました。ソーシャルコマースの特徴「バズると一晩で数千から数万個の商品が売れる」という従来の販売方法では考えられない規模の売上を実現しています。

また、ライブコマースの適用範囲が広がっているのも注目しておきたいポイントです。これまでは、主にコスメやファッションカテゴリーで事例が多く見られました。ところが、North American grocery Retail Trends for 2025で紹介された調査によると、世界の消費者の45%がライブストリーミング経由で食料品を購入した経験があるとわかっています。より幅広い商品カテゴリーへ、ライブコマースが浸透していると示されました。
このように、小売とブランドの融合が進み、テクノロジーの活用によって新たな販売モデルが生まれている現状が明確になった2025年のNRF。ブランドは小売に頼らずD2Cを拡大し、小売はPB強化や独自のブランド戦略を推進するなど、従来の役割が大きく変化しています。
さらに、AI活用による販売の最適化やソーシャルコマース・ライブコマースの進化が、消費者の購買体験をよりスムーズにしました。結果的に、D2C市場の成長を後押ししています。近い将来、日本でもTikTok Shopのような新たなチャネルが登場する可能性は高いでしょう。今のうちから、小売とブランドそれぞれがチャネル戦略を最適化する必要があります。
明日公開予定のレポート後編では、小売業界におけるAI活用とリテールメディアを軸に注目のセッションを紹介します。