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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

10年続くブランドになる

Minimalがブランドの想いとビジネスを両立できる理由 必要な施策を正しく取捨選択するコツを公開

 「Minimal -Bean to Bar Chocolate-(ミニマル)」 代表の山下です。業界未経験の素人からチョコレートの企画・製造・販売を手がけるブランドを立ち上げ、2024年12月で10年が経過します。この10年、ずっと「ブランドの想いを理解してもらうことと、売ること(ビジネスの成立)は両立できるのか」を考えてきました。多くのブランドは、認知拡大とともにスケーラビリティに対して様々な決断を求められます。ブランドの想いとビジネスはときにトレードオフの関係となり、葛藤している人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、Minimalがたどり着いた結論を共有します。

ブランドは人の集合体 だから事業成長が必要

 事業成長の程度や目指す規模は、それぞれのブランドが決めれば良いことです。この大前提のもと、お伝えします。

 私は現段階での試行錯誤の結果、大なり小なり事業活動に成長は必要だと思います。企業やブランドは人の集合体だからです。

 Minimalは、創業から2~3年くらいまで順調に事業成長し、創業メンバーの私としては気持ちの良い規模でした。実はそのとき「今後の事業成長は必要なのか」と、社内で真剣に議論しました。

 論点となったのは、事業に関わる人がずっと同じ状態であり続けるとは限らないことでした。創業メンバーも、当時は独身で子どももいませんでしたが、今では結婚したり家族が増えたりと、生活環境が変わっています。スタッフも少しずつ増え、入社動機も多様化しました。お客様もブランドとともに年齢を重ね、ライフスタイルが変化しています。当然、Minimalが取引しているカカオ農家も、必要なクオリティを理解して良いモノを多く生産できるようになっています。

 ブランドがこうした人の集合体である以上、現状維持は不可能だと考えました。

 私は、ブランドの想いを伝えながら経営視点で事業成長を志向し続けるために、「なぜ成長するのか」という目的設定を重視しています。

 事業成長そのものが目的であれば、どんな手段を使ってでも「売上を上げれば成功」といえるでしょう。しかし、Minimalは事業成長=目的を達成する手段と位置づけています。ブランドの想いを大切にしながら、ビジネスとして成立させる。そのために、目的と手段の関係性には非常に気をつけてきました。

 Minimalは、チョコレートの新しいスタイルや体験、おいしさを提供し、お客様の幸せの総量を最大化させることで、ミッションである「チョコレートを新しくする」の実現を目指しています。これを産業構造的に捉えると、次のような川上・川中・川下に分けられます。

  • 川上

 カカオ豆の生産現場では、貧困や強制労働といった現実があります。そんなカカオ農家から、Minimalは100%フェアトーレードで買い付けしています。それにより、少しずつ問題を解決され、救われる人たちが増えるはずです。

  • 川中

 Minimalの職人たちが自らのキャリアを確立し、世界一を目指せる経済的な環境や切磋琢磨できる仕組みを整えています。

  • 川下

 美味しくて新しいチョコレートが多く購入されると、その分、食べて幸せになる人が増えていきます。つまり、売上が共感の総量となります。

 ミッションの実現に事業成長は必要不可欠であり、私は諦めないと決めています。Minimalがチョコレートの品質に真摯に向き合う努力を怠らなければ、事業が成長すると同時に、カカオ農家の収入も、お客様の幸せの総量も増えるでしょう。エコシステム全体が社会に与えるインパクトが大きくなるのです。

 しかし、創業者個人が気持ちの良いくらいの事業規模で安住しようとすると、その総量は増えず、結果的にミッションも達成できません。世界が良い場所にならないのです。

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この記事の著者

Minimal - Bean to Bar Chocolate - 代表 山下貴嗣(ヤマシタ タカツグ)

カカオ豆の選定からチョコレート製造まで一貫して手掛けるクラフトチョコレートブランド「Minimal -Bean to Bar Chocolate-(ミニマル)」を設立。東京都渋谷区富ヶ谷への初出店を機に都内に4業態4店舗を出店。赤道直下のカカオ農園に自ら足を運び、100%フェアトレードでの買付と、毎...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://eczine.jp/article/detail/15484 2024/10/10 07:00

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