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マネジメント層の理解度で二分するGA4活用の温度感
2023年7月1日にGoogleアナリティクスの旧バージョン「ユニバーサルアナリティクス(UA)」のデータ収集が停止し、Googleアナリティクス4(GA4)の本格運用が始まってまもなく1年。片岡氏に現況を聞いたところ、「リテラシーの二極化」が課題として挙げられた。
「GA4への移行が決まり、直ちにデータの蓄積を始めた企業は移行期間分のデータも含めた前年比の分析などもできる状態なので、『このデータをどう施策に生かしたら良いか』といった具体的な相談をいただくケースが増えていいます。
しかし、UAの停止が決まってからデータを蓄積し始めた、停止期間間際にGA4へ移行した企業からは、『何をどう見たら良いのか』というハウツー部分の質問をいただくことが多いです。問い合わせの内容も大きく二分していると感じます」
どうしてここまで差が出てしまうのか。片岡氏は、「企業ごとのデジタルマーケティングに対するスタンスやリソース配分の違い」を原因の一つとして挙げた。
もちろん事業規模も関係するが、少数精鋭の組織でも「分析担当者」と呼ばれる人材がいたり、デジタルマーケティングを推進し、数字を見て施策検討などを進めたりする風土が定着している企業では、GA4活用はいわば「命綱」ともいえる。そのため、優先度を上げてでもGA4への移行や新たな分析環境構築への対応を実施するが、分析を行う専門人材がいない場合や、日々の業務の中で数字を見る習慣がそこまで根付いていない企業の場合は、なかなか推進が難しいようだ。
「Googleアナリティクス360(有償版UA:2024年7月1日に終了予定)を活用する企業の中には、『まだ計測期限が切れていないから』という理由でGA4の本格運用が始まってからも運用を変更せず、2024年に入ってから移行の相談をされるケースもありました。現場クラスでは対応しなければと思っていても『上司や経営層の理解が得られず、移行に向けたリソース確保が思うようにできない』といった悩みも寄せられています」
こうした企業では、なんとか移行までこぎつけても、セッションからイベントへと計測の概念が変わったことで生まれる数値のズレや、新たな分析指標を設ける必要がある点への理解を得るのが難しく、「新たな分析の概念をどう説明すべきか」といった相談もプリンシプルには寄せられているという。
「『新分析指標に対する啓発活動をどうすべきか』という課題意識は当社の中にもあり、セミナーや情報発信を強化しています。
ただし、経営層は当然ながらコストパフォーマンスを重視します。限られたリソースの中で最大限の価値を出すには、現場担当者が『GA4を使うとどれだけコスト効率化や削減ができるか』を理解し、実践することも必要です。
たとえば『分析をして広告の費用対効果が見えれば、予算の最適化ができます』と移行前に説明ができるか。移行後に『SNSでこれだけ集客できているから、月○万円の予算の何%をSNS広告に配分すればこれだけ売上が上がるはずだ(だからやってみませんか?)』といった提案ができるか。こうした担当者の働きかけも移行や活用の推進には欠かせません」