正しい理解を妨げる認知バイアスをなくそう
1997年から2009年の間に生まれたZ世代をターゲットに、商品やサービスを展開する企業は少なくない。『新消費をつくるα世代 答えありきで考える「メタ認知力」』(日経BP/小々馬敦 著)によると、2034年にZ世代の人口は約1,500万人となる。これは、同年の生産年齢人口の約23%だ。人口が縮小傾向にある中、今後の日本経済を支える存在となるZ世代に注目が集まるのもうなずける。
ここで見逃してはならないのが、Z世代よりも後に生まれたα世代の存在だ。その人口は、2034年に約700万人になると考えられている。彼らがZ世代とともに新たな消費の流れをつくっていくことは間違いない。10年後、20年後の事業成長に向けて、Z世代とα世代どちらの特徴も理解しておく必要がある。
しかし、無意識のうちに両世代のイメージを決めつけてしまうケースがある。本書の著者であり、産業能率大学で教授を務める小々馬敦氏は、2014年から開始した「若者研究」の中で、自身や社会が若者にもつ認知バイアスの存在を何度か実感したという。
大学生にアンケート調査を行うと、「エコな商品を選んで購買している」と回答する大学生は、全体の20%程度という結果でした。この数値結果を見て、マーケターは「Z世代にエコ消費はそれほど進んでいない」と解釈するのですが、当該世代の大学生たちは「その解釈は適切でしょうか?」と疑問を呈してくれました。(中略)「エコでない商品を選ばないようにしている人はたくさんいます。なので『エコ消費は進捗していない』と決めつけないほうがよいと思います」と提言してくれました。(P115)
自身とは異なる世代の消費者を正しく理解するのは、容易ではない。Z世代とα世代の特徴を知るプロセスも学ぶ上でも、本書が役に立つだろう。
Z世代もα世代も「ときめき」を求める?
小々馬氏は、Z世代の購買プロセスとして「EIEEB」モデルを挙げる。次のキーワードの頭文字を取ったものだ。
- E(Encounter):思いがけない出合い
- I(Inspired):世界観に共感し自分ごと化する
- E(Encourage):購買の不安を解消し自分の背中を押す
- E(Event):購買はイベント! ときめく買い方で
- B(Boost up):みんなもやってみて! ときめきを高め合う
このプロセスの根底には「購買体験全体を通してときめいていたい(P.205)」という感情が隠されている。では、α世代はどうだろうか。小々馬氏は、ときめきを大切にする考え方はα世代にも受け継がれるとする一方で、Z世代との違いをこう予測している。
AIが日常に浸透することで、EIEEBのプロセスがスマホや、スマホに代わる新たなデバイスの中で自動化されるといった進化が起こると想定しています。(P224-225)
本書では、こうした若者の消費の特徴を詳しく紹介している。これまでの認識とのギャップや、EC事業者が取り組むべきマーケティングのヒントが見つかるはずだ。