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大手と中小の間に存在する大きな格差
前回、大手メーカーがD2C市場活性化の鍵を握るとお伝えしました。今回は、一転して中小メーカーのD2Cがテーマです。
膨大に存在するライバル データで現状を把握しよう
稼ぐ力の強い大手メーカーが既存の流通構造へ積極的に関与することで、D2C市場全体の活性化が期待できます。では、中小メーカーにはまったく出番がないかというと、そうではありません。中小メーカーには、中小メーカーなりの戦法があります。
ただし、すべての中小メーカーがD2Cで成功できるわけではありません。競合となるブランドや企業の数が非常に多いからです。
データで状況を可視化してみましょう。ZOZOは、2023年3月時点での「ZOZOTOWN」の取り扱いブランド数を8,455と公表しています。これは、ZOZOTOWN限定であり、アパレルブランドの総数は軽く1万を超えるはずです。また、化粧品・美容の総合情報サイト「@COSME」では、掲載ブランド・メーカー数は7万2,655件と表示されています(※2024年5月16日調査時点)。
つまり、消費者は大量のブランドの中から購入の選択を行っているわけです。当然、埋もれているブランドも多数存在します。その上、ここに「SHEIN」や「Temu」といった新興プレーヤーまで飛びこんできました。商品購入の選択肢は広がり続けています。
果てしないロングテールの世界で戦っている
「BASE」を利用したネットショップ開設数は、2023年12月時点の累計で210万を超えました。ほかにも「Shopify」や「STORES」を利用した開設数を加えれば、膨大な数の企業がD2C事業を展開しているとわかります。
二重カウントや個人・自治体を除いて法人に限定すると、D2C事業を展開する中小メーカー数は40万社程度でしょう。日本の人口が1億2,000万だと考えれば、40万社分のネットショップは非常に多いといえるのではないでしょうか。
ECの売上高にも目を向けてみましょう。各社の決算発表や公開済みの売上高リストなど、複数のリソースを参考に独自でランキングを作成しました。
トップ10には「ユニクロ」「ヨドバシカメラ」など、1,000億円超のメガプレーヤーがならびます。一方、100位になると売上高150億円、500位で10億円と売上規模が大幅に縮小します。
ECおよびD2C事業を展開する全企業総数を50万社と仮置きし、500位以降の平均推定売上高をEC市場規模に基づいて試算すると、1社あたり約1,500万円です(500位までの総計が約8兆円、かつEC市場規模全体が約14兆円という数値に基づく試算)。年間売上高が数千~数百万円規模の企業は、あふれるほど存在しているでしょう。
縦軸を売上高として、売上高の大きい順に左から棒グラフを作図すると、果てしないロングテールの形状となります。売上が少ない中小規模のEC・D2C事業が膨大に存在している、かつ消費者に見つからずに埋もれている様子がうかがえます。