近年、多くのECにおいてポイントサービスが導入されています。リピーターやファンの獲得に有効なポイントサービスですが、一方で導入にあたっては注意すべき点も多く、安易に導入すると自社の収益性に悪影響を及ぼしてしまう可能性もあります。 この記事では、ECにおけるポイントサービスの概要や注意点、独自ポイントと共通ポイントの違いなどについて解説します。
ポイントサービスとは
ポイントサービスとは、自社で利用できるポイントを発行し、顧客に利用してもらう仕組みのことで、お店や商品、サービスのファンを増やして成果につなげることをおもな目的としています。 また、ポイントを発行することで顧客との良好な関係を作りつつ、ポイント利用履歴データを活用することも可能です。
ポイントサービスのメリット
ポイントサービスの実施にはどのようなメリットがあるのでしょうか。 3つのおもなメリットを紹介します。
リピーターの獲得
商品の購入に対してポイントを付与することで、ポイントを消費するために顧客のリピート率が高まる効果が期待できます。
また、ポイント期限切れなどの案内メールにより、ECサイトへの来訪を促すこともできるでしょう。さらに、会員ランク制度を導入し、特に購入量が多い顧客に対してポイントの倍率を高めるといった優遇を行うことで、ロイヤルカスタマー化につながる可能性もあります。
ほかのショップとの差別化
ポイントサービスを実施することで、ポイント付与サービスを実施していないショップとの差別化が可能です。商品やサービスが競合と同じ販売価格の場合、ユーザーはポイントが付与されるショップを選ぶ傾向にあります。
「日本人はポイント好き」といわれていることからも、ポイントサービスでお得感を演出することで、自社の魅力度を向上させることができるでしょう。
会員登録によるマーケティングキャンペーンの実施
ポイントを獲得するために顧客に会員登録を促すことで、マーケティングに必要な情報の収集や、取得したメールアドレスをもとにした販促キャンペーンの案内などを実施できます。
一般的にハードルが高いとされる会員登録作業ですが、ポイント獲得のメリットがあれば、顧客に会員登録してもらえる可能性が高くなります。
会員登録時にボーナスポイントを付与するような取り組みを実施すれば、さらに効果的に会員を獲得できるでしょう。
ポイントサービスのデメリット
多くのメリットがあるポイントサービスですが、次のようなデメリットがあることに留意しなければなりません。
収益性の悪化
ポイントは「将来の値引き」にあたるものです。そのため、計画性のないポイントサービスを行った場合、自社の収益性を悪化させることになります。たとえポイント発行時は業績が良かったとしても、積みあがったポイントの負債により将来的に赤字化するリスクもゼロではありません。
とはいえ、ポイントは必ずしもすべて利用されるわけではなく、一部のポイントは失効します。ポイントの付与率を検討する際は、過去実績などから失効率を加味したうえで、トータルで赤字にならないように設定するとよいでしょう。
使い勝手の悪いポイントによる客離れ
ポイントの利用期限があまりにも短かったり、用途が限定的だったりすると、使い勝手が悪いサービスと見なされ、客離れにつながることがあります。そのため、ポイント付与時はお得感があったものの、実際には使い道がない、といったサービス内容になっていないか、顧客目線で確認することが肝要です。
ポイントサービスの魅力を高めるためにも、実用的な内容になるよう設計しましょう。
会計処理の増加
ポイントを使用した支払いでは、会計上「ポイント引当金」として処理する必要があり、会計処理において手間が発生します。 ポイント会計はやや難解ですので、税理士と相談しながら適切に会計処理を実施しましょう。
共通ポイントと独自ポイント
ポイントサービスは、大きく「共通ポイント」と「独自ポイント」の2つに分かれています。
共通ポイントとは、楽天ポイントやTポイント、dポイント、ポンタポイントなどのさまざまな店舗サイトで利用できる大手ポイントサービスのことです。また、ECショッピングモールでは、そのモール内で共通利用できるポイントを設定しているケースもあります。 対して独自ポイントは、自社で独自に設定するポイントのことです。
両者のメリット・デメリットを考慮して、どちらを採用すべきか検討しましょう。
共通ポイントのメリット・デメリット
次に、共通ポイントにはどのようなメリット・デメリットがあるのか見ていきましょう。
メリット
共通ポイントの場合、ほかの共通ポイントの加盟店からの来客も期待できます。近年では「ポイ活」として共通ポイントを効率的に集めていく活動が広まっており、ポイント経済圏とも呼ばれる共通ポイント利用の動きが盛んです。そのため、他業種からの顧客流入も見込めます。
また、ポイントサービスのブランド力を活用できる点もメリットです。
顧客目線で考えた場合、ポイントの使い勝手が良い点は共通ポイントの魅力といえるでしょう。
デメリット
共通ポイントを導入・利用する場合、運営元に利用手数料を支払わなければなりません。また、せっかくポイントを付与したとしても、自サイトで利用してもらえず、他店舗に顧客が流れてしまうというデメリットもあります。
独自ポイントのメリット・デメリット
一方、独自ポイントには次のようなメリット・デメリットがあります。
メリット
自社の都合に合わせて自由にポイントサービスを設計できる点は、独自ポイントの最大のメリットです。運営店から求められる制約もなく、キャンペーン施策も自由に実施できます。また、発行した独自ポイントは必ず自社で消費されるため、自サイトのリピートにつながりやすい点もメリットといえるでしょう。
デメリット
顧客目線で考えた場合、ポイントの利用範囲が限られており、使い勝手が悪いイメージがある点はデメリットと考えられます。 ユーザーとしては、店舗や業種を問わずに利用できる共通ポイントのほうが使い勝手が良いため、同じポイント付与率でも独自ポイントはあまりお得に感じないという顧客もいるでしょう。
ポイントサービスの導入における注意点
ポイントサービス導入の際に注意すべき点について、以下にまとめました。
ポイントの付与タイミングの検討
ポイントサービスを導入する際は、ポイントを付与するタイミングを慎重に検討しましょう。
たとえば注文時にポイントを付与した場合、返品キャンセルがあった時にポイント取り消し作業が発生します。一方、出荷時にポイントを付与する場合、ポイント付与までに時間がかかるため、顧客がポイントを獲得した実感を得にくく、リピートにつながらない可能性があります。
どちらにもメリット・デメリットが存在することを理解したうえで、商品の注文完了時、出荷時など、ポイント付与のタイミングを決めましょう。
ポイントの管理方法
期間限定の特別ポイントなどを付与する場合は、通常ポイントとは別に管理を行う必要があります。
限定ポイントや用途別ポイントなど、複雑なポイント制度は顧客への販促効果も高いですが、一方で管理が難しくなるため、バランスを見て検討しましょう。
ECサイトの出店先による制限
ECサイトの出店先によっては、利用できるポイントサービスに制限があります。例えば大手モールでは、必ず共通ポイントを利用しなければならず、独自ポイントは利用できない、といったケースもあります。
出店当初はポイントサービスを利用する予定がない場合でも、どのようなポイントサービスを利用できるのかあらかじめ確認しておくとよいでしょう。
一度開始したポイントサービスは終了しにくい
ポイントサービスを途中で終了すると、サービスが低下したイメージにつながる可能性があるため、ポイントサービスの廃止は困難といえます。
ポイントを廃止しなくてはならない場合は、一定の猶予期間を設けたり代替サービスを用意したりするとよいでしょう。
おもなポイントサービス
ここでは、代表的なポイントサービスとその特徴について見ていきましょう。
ネクストポイントサービス
「ネクストポイントサービス」は、株式会社ネクストポイントサービスが提供するクラウド型のポイントカードシステムです。 ネクストポイントサービスのシステムを用いることで、期間限定ポイントやキャンペーンの実施も標準機能で対応できます。
CROSS POINT
「CROSS POINT(クロスポイント)」は、株式会社アイルが提供するポイントサービスシステムです。実店舗とECサイトでポイントを共通利用できるため、両者を併用している場合に有効でしょう。実店舗利用者とECサイト利用者の顧客情報を一元管理したり、ポイントを合算して管理したりすることができます。
クレアンスメアード
株式会社クレアンスメアードが提供する「クレアンスメアード」では、顧客管理機能やポイントの相互交換などにも対応した高度なポイントシステムを構築することが可能です。 機能ごとにSaaS型のサービスとして利用できるため、最小限の構成でも導入できます。
エムズコミュニケイト
株式会社エムズコミュニケイトは、DNPのグループ会社として発足し、2018年にMBOを実施した企業です。 ポイントサービスの導入にあたって設計から導入まで対応するサービスを提供しており、一元的なサポートを受けることができます。
まとめ
ECにおけるポイントサービスの概要や独自ポイント・共通ポイントの違い、注意点などについて解説しました。 ポイントサービスは有効な販売促進・マーケティング手段のひとつですが、安易に導入すると自社の収益性を悪化させるおそれもあります。メリット・デメリットを考慮したうえで、導入を検討することが大切です。