TikTokは潜在的な需要を引き込み購買につなげる動画コマースに
ウェビナー第1部は「TikTokのEC活用 入門編」。「EC業界で「TikTok売れ」を実現する方法とは?」と題し、TikTok for Business Japan, Senior Brand Strategist 駒﨑誠一郎氏が登壇した。
TikTokは、グローバルでは30億ダウンロード(Sensor Tower調べ、2021年7月時点)、月間アクティブユーザーは10億人を突破し(2021年9月時点)、他に類を見ないスピードで成長を遂げている。なかでもEC事業者がとくに注目したいのは、「#TikTokMadeMeBuyIt」という現象だ。
「TikTokでその商品を知って購入し、TikTok上で『こんな良いものを見つけたよ』と紹介する動画に付けられるハッシュタグです。セミナー開催時点で、本ハッシュタグが85億回も閲覧されています。TikTok単体はもちろん、他プラットフォームにおいても、これほど閲覧されるハッシュタグは珍しいのではないでしょうか。TikTokで物を買うという行動がユーザーにとって身近になり、総合ECモールでの売上にも影響を与えるようになってきています」
「#TikTokMadeMeBuyIt」の日本版とも言える「#購入品紹介」も、セミナー開催時点で23億回再生となっている。このような状況もあり、「日経トレンディ」による2021年ヒット商品では「TikTok売れ」が1位となった。
なぜTikTok売れが起きるのか。ひとつはユーザー層やコンテンツの変化である。コンテンツジャンルは、現在では、グルメ、美容、ペット、美容、エンタメ、vlog、ニュースや英会話などの教養コンテンツと多岐にわたる。ユーザー層も拡大しており、3人に1人が25歳~44歳、25歳〜44歳女性ユーザーのうち、4人に1人が主婦ユーザーと購買力のあるユーザーの割合も増加している(App Annie調べ)。TikTokのイメージが数年前のまま固定化されているとしたら、それを払拭したいところだ。
もうひとつのTikTok売れの理由は「おすすめ視聴」機能にある。グローバルでは、ユーザーがTikTokで過ごす時間のうち「おすすめ視聴」が8割を占めている。フォローユーザーの動画以外にも、興味関心を持ちそうな動画がレコメンドされるこのフィードでは、ユーザーは新たなコンテンツと出会うことができ、ユーザーはそれを期待して利用している。そのため、広告動画が流れてきてもコンテンツとして自然と受け入れることができる。
「『おすすめ視聴』により、従来のメディアでは出会えなかった新しい情報が、動画+音声のリッチな表現ですっと心に入ってくるから買ってしまうのです。そしてその動画の投稿者のフォロワーが少なかったとしても、爆発的な広がりを起こす場合もあります。これが、TikTok売れのダイナミズムです。また、TikTok はEC領域との相性が良く、 3人に1人がTikTokでの購買経験を持っているという調査結果も出ています(TORIHADA調べ)。TikTokは潜在的な需要を引き込み、購買につなげていく動画コマースとなりつつあります」
TikTokと相性の良い商品とは? 駒﨑氏もよく聞かれるそうだが、調査結果によれば「これ」と限定するのが難しいほど幅広い。TikTok経由で購買経験のあるユーザーはどのような動画を見ているかというと、「購入品紹介」「コーディネート」そして「(総合ECモールの固有名詞)」などのハッシュタグだ。購入した商品により、自身の生活がどうなるかイメージしやすい動画が閲覧されていることがわかる。
TikTok売れの成功事例として、駒﨑氏は「KATE リップモンスター」を紹介した。商品をTikTok上で疑似体験できるエフェクトを作成、クリエイターに試してもらい、その動画を投稿してもらった。その動画を真似したユーザー動画が多数アップされ、発売から約10ヵ月で累計出荷数240万本を超える大ヒット商品となった。
@01310mu どれも色合いが良くって可愛い!!どの色がタイプ??✨ #リップモンスター ♬ リップモンスター - KATE
クリエイターやユーザーによるオーガニック動画をネイティブ広告として配信できる広告プロダクト「Spark Ads」が2021年7月にリリースされているほか、「ブランド広告」「パフォーマンス広告」ともにさまざまなラインナップがある。広告効果測定は、ECサイトに「ピクセル」という独自のタグを埋め込むことで可能だ。
最後に、EC向けの新しいソリューションとして、「コレクション広告」「ダイナミックショーケース広告」などを紹介した。
「コレクション広告」は、発見と興味・関心を促すために設計されたインフィード広告。瞬時にギャラリーページを表示することで、アプリから離れることなく、複数の商品やキャンペーンの内容を閲覧できる。「ダイナミックショーケース広告」はSKUの多い事業者向け、商品カタログを活用し自動化された広告である。精度の高いパーソナライズで、アプリダウンロード促進や購買意欲を高める。
Nateeが伝授!TikTok売れを起こす3つのポイント
第2部では実践編として、TikTok広告活用を行う、株式会社Natee 取締役COO 朝戸太將氏、株式会社HADO 代表取締役社長 田中大雅氏が登壇した。
Nateeが担当した事例を紹介するとともに、Nateeが考えるTikTok売れを起こすためのポイントを解説した。Nateeでは、「アテンション」「イマジネーション」「クリエイターらしさ」のトリプル訴求を織り交ぜ、勝ちパターンのクリエイティブを転用していくことが重要だと考えている。
「TikTokは、すべての投稿が自動的に再生される仕組みになっています。最初の2秒間で視聴者の親指を止められるか勝負の分かれ目になる。これが『アテンション』です。次に、動画の視聴者が「その商品を利用した後、自分がどのような体験を得ることができるか」を想像していただける、それが『イマジネーション』です。そのために、視聴者が自分ごと化しやすいクリエイティブで興味・関心を引くことが重要だと考えているので、その広告に親和性の高いクリエイターを起用し、実際に商品を利用してもらいながら動画クリエイティブを制作するようにしています。 そして最後に、TikTokにおいては『クリエイターらしさ』が欠かせない領域になっています。そのクリエイターの過去の投稿動画を10〜20本ご覧いただき、支持されている理由やその人らしさをしっかりインプットしておくことをおすすめしたいですね」
これらを踏まえれば、TikTokは高価格帯の商品であっても「バズる」「売れる」の両方を実現できるメディアであると朝戸氏は言う。気になる効果測定については、朝戸氏は実践しているふたつの方法を紹介した。
「ひとつは広告に紐付けるというわかりやすい方法。もうひとつは、クリエイターさんの投稿動画の再生数と、ECサイトのPVや購入数をデイリーで1週間ほど追うというものです。動画の再生数とECサイトのPV、購入数に相関があれば、ただバズるだけではない、ECの購入に効く施策が打てたのかの振り返りができる。PDCAを回していくことができます」
朝戸氏は、TikTokをはじめて活用する広告主に、施策のKPIをどこに設定すべきかよく聞かれると言う。「再生数」「購入意向」「コメント率」の3つを挙げた。
「まずは動画の再生数から始め、それがある程度達成できるようになったらブランド別に購入意向などを見ていってください。慣れてきたら、動画別に『商品を購入したい』との意味合いのコメントの割合を測っていくと、購入に結びつくものとそうでないもののクリエイティブの差分がわかってくるのではないかと思います」
HADOが実践!便益脳内再生TikTok動画+記事LPでCVR8倍に
続いて株式会社HADO 代表取締役社長 田中大雅氏が登壇。「TVCMにTikTokを掛け合わせ広告効果が大幅UP!」と題し、パーソナライズヘアケア「MEDULLA(メデュラ)」の事例を紹介。CPCが通常約60円から12円ほどにダウン、CVRが通常で0.55%のものを4.44%まで引き上げることに成功した。
クライアントからはTVCM放映期間中、認知が広まるタイミングに合わせてTikTok広告で刈り取りを行いたいとの要望が寄せられた。それに対しHADOでは、「自分ごと化しやすいクリエイティブで興味喚起・共感を作る」方向性でアプローチし、クリエイターのタイアップ動画に「Spark Ads」を、HADO社が制作した動画に運用方広告を用いて拡散を狙った。
@ayami__room #ad とぅるとぅるの髪を維持するためのおすすめヘアケア、よく聞かれるのでまとめてみたよん!🌟 #ad #MEDULLA #ヘアケア #2022 #シャンプー #美容 #見ちゃう動画 ♬ オリジナル楽曲 - あやみるーむ 🌙
自分ごと化しやすいクリエイティブについて、まずは商品の特徴として「7種類から香りが選択できる」ことから、「香水シャンプー」の切り口でクリエイターに動画を投稿してもらった。
「クリエイタータイアップ動画の役割は認知となります。その中から、再生回数やコメントなど、ユーザーエンゲージメントが高い投稿に『Spark Ads』をかけることによって、認知に加え獲得を狙うことができるため、二度美味しいわけです」
その際、クリエイターの動画と商品購入ページの間に、記事風のLP(ランディングページ)を挟むことで、CVRが8倍にもなった。この取り組みからは、田中氏も大きな気づきを得たと言う。
「クリエイターさんはエンターテイメントのプロフェッショナルであって、『私のおすすめですよ』と商品をおもしろく紹介し、視聴者の方の興味を引いていただく専門家です。しかし、それだけでは購入にはつながりにくい。そこで、商品にはどのような権威性があり、どんなベネフィットをもたらすのか、ロジックを整理して説明するという間の役割を、広告代理店として記事LPを作成することで担いました。この役割分担により、CVR8倍という成果につながったと思います」
HADOは業界内でも、獲得効率の高い広告クリエイティブを制作することで知られている。その秘訣はどこにあるのか。それは「ベネフィットを“シーン”で切り取る」ことだと田中氏は言う。
「TikTokは動画媒体で表現の幅が広いからこそ、何を表現するのか迷いがちです。TikTokはエンタメのプラットフォームですから、広告クリエイティブもエンタメ風の表現をすることでマッチする。そして最大60秒と尺の制限もあるため、動画クリエイティブには成功イメージを焼き付けるという役割に徹してもらったほうが良い。だからベネフィットを“シーン”で切り取るのです。たとえば今回のMEDULLAであれば、香水シャンプーがきっかけで恋人との距離がさらに縮まるという、ベネフィットをシーンで切り取った動画となりました」
動画からいかに購入に結びつけることができるか。田中氏はシンプルに、「いかに便益を脳内再生させるか」だと言う。
「動画を視聴された方が、実際にその商品を使った自分の未来を、つい脳内で再生してしまうかどうかが判断基準になると考えています。良い未来を再生できれば、その未来が欲しくなるのが人間ですよね。広告主の方は、自社の商品を利用したことでお客様がどのような未来を描けるかを、動画を見ることで脳内再生させて差し上げるということを一貫してやれば、TikTok売れを起こせるのではないでしょうか」
そして、最後には、TikTok for Business Japan 古賀聖也氏より、TikTokが独自に実施しているイベントに協賛できる「TikTokスポンサーシップ」について紹介されウェビナーは締め括られた。