MammaBaby(ママベビー)について
70年の歴史を持つ医療機関向け製薬会社から生まれたオーガニック&ヴィーガンブランド。日本では、2017年5月より提供。独自サイト「MammaBaby」はShopifyで構築した。
2021年11月、「毎月お届けプラン」という新しい定期購入の仕組みをリリース。毎月1回、今月ユーザーが必要な「製品とお届け日」を選ぶ仕組み。勝手に送りつけずに、事前にLINEでヒアリングを行う。マイページでユーザーが、「休止や解約」をワンクリックで行えるのが特徴。
今回の取材は、株式会社プチフィロゾフ 代表取締役社長 杉原良さんに協力いただいた。2010年に「子どもたちと、子どもたちが生きる地球の未来のために」プチフィロゾフを設立。以後、さまざまななブランドやサービスの展開に従事。同思想を遍く伝え、実現することを目的に活動している。
ハックルベリーについて
Shopifyに公式認定されたShopify Experts。Shopifyアプリ「集客ブースター」「定期購買」などを開発・運営している。「毎月お届けプラン」は、Shopifyアプリ「定期購買」の「やさしいサブスク」機能群を使って実装された。今回の取材には、同社の代表取締役社長 安藤祐輔さんが登場。
ユーザーにも地球にもやさしい、新しい定期購入の仕組み
MammaBaby 2021年11月、「毎月お届けプラン」という新しい定期購入の仕組みをリリースしました。定期購入の仕組みは、本来お客様にとって便利なものであるはずですが、ビジネス側の都合により、購入回数に制約があったり、申し込みは容易なのに解約・休止手続きはわかりづらいものが多かったりと、課題があると考えていました。
「毎月お届けプラン」が実装されたサイトの画面
MammaBabyが子どもたちが生きていく未来に対して、どのように責任を果たしていくかの視点からも、定期購入の仕組みについて考えました。たとえば、最初はシャンプーから使い始めて、気に入っていただいて定期購入にお申し込みいただけたとします。次はコンディショナー、その次はボディソープという順番で、それぞれ別々にお申し込みいただいた場合、3つの定期購入がバラバラに進行していくことになります。
お客様にとっては、受け取りが最低でも3回、再配達があればさらに増えます。ブランドにとっては、配送料や資材、出荷にまつわる業務のコストが3倍になり、地球にとっては、配送等で排出されるCO2やゴミが3倍になります。非常にもったいないことですよね。お客様、ブランド、地球にとってやさしい定期購入の仕組みを考えたいと思いました。
都度購入せずとも自動的に商品を送ってもらえるのは便利ですが、さらに「今月はどうしますか?」と、三河屋さんのように事前に聞いてもらえたらどうでしょう。「今月はレフィル(詰め替え用)に変更しよう」「暑くなってきたから日焼け止めを追加しよう」「まだ余っているからスキップ」といったその時々の事情に合わせた対応を行うことができるため、無駄がないですよね。今月必要なものを、必要な分だけで送ってもらえる仕組みがあれば、月の半ばで足りなくなって追加で注文したり、未使用のものがたまって結果解約したりといった不毛なことも防げるのではないかと考えました。
これらは、当たり前と言えば当たり前のことです。それほど特別なシステムでもないだろうと、Shopifyアプリはじめ既存の仕組みがないか探してみたのですが、適切なものが見つかりませんでした。ならば自分たちで作ろうかとも思ったのですが、MammaBabyというブランドが単独で新たな定期購入の仕組みを作ったとしても、地球規模では、それほど大きなインパクトは生まれない。多くのブランドが同じような取り組みを行うことで、お客様や地球のためになる。多くのブランドが利用できるよう、開発パートナーに依頼することにし、ご縁あってハックルベリーさんをご紹介いただいたという流れです。
For Baby & Mamma & Earth
既存のシステムがなければつくるという発想
安藤(ハックルベリー) 当初は、機能要件としてはそれほど特別なものではないため、Shopifyアプリ「定期購買」をカスタマイズしたらできるかなと思いました。しかし、お話いただいたようなコンセプトから設計すると、ログイン機能とマイページを中心に、UIの変更が大きいことに気づきました。大手のサブスクリプション型ECであれば個別開発で作っていますが、D2Cブランドさんたち向けのサービスとしてはなかなかない。MammaBabyさんがおっしゃったような「コンセプトの啓蒙」と「ものづくり」をセットでやりたいなと思いました。
MammaBaby これから生まれてくる新しいD2Cブランドからすると、そこまで開発にお金をかけられない、システムの要件が詰められないという事情はあると思います。人間だけの視点で見れば、従来の定期購入の仕組みを使うという選択肢もあるでしょう。しかし新しいD2Cブランドは、地球のためにという発想を持っていますし、他にも、社会的な課題となっている配送周りの問題についても考えていきたいと思っているでしょう。このような背景から、新しい定期購入のシステムを、ひとつのブランドの優位性にしたくないと思ったのです。
良いものをシェアして、世の中の買い物自体がストレスなく、楽しくできるようにしていきたい。競争から生まれるものもあれば、シェアしたほうが良いものもある。定期購入のシステムは、道路のようなインフラにあたりますよね。インフラはみんなでシェアして、ブランドがもっと他の部分に目を向けられるようになったほうが良いでしょう。負のイメージもついてしまっている定期購入の価値観を変え、買い物を軽やかに楽しくしたいという気持ちが大きかった。日本のEC、買い物を変えていきたいと思ったのです。