楽天が配送強化へ本腰 SKUプロジェクトが大前提
2023年1月26日、楽天市場出店店舗向けに楽天グループの方針を示す「楽天新春カンファレンス」が開催。代表取締役会長兼社長 三木谷浩史氏も登壇している。
「報道にも出ていましたが、楽天モバイルへの注力が強調された講演でした。2022年の国内EC流通総額は5兆円を超え、次は10兆円を掲げています。その目標達成に大きく貢献するのが楽天モバイルだとの話でした」
楽天モバイルはポイント失効率が2%と低いのが特徴で、主な利用先が楽天市場である。楽天モバイルが楽天経済圏の活性化に貢献しており、楽天モバイルの成長が楽天市場の成長にもつながるとの理屈だ。1月30日から「楽天モバイル法人プラン」を本格的に提供開始した。
発表されたトピックスで、羽田野さんがもっとも注目しているのは「配送品質向上制度」だ。
「2024年第2四半期には本格的に取り組みたいとのこと。前段として2023年6月には最短の配送指定日を正確に検索できる、商品詳細ページに配送日が表示される機能を提供する予定で、最終的には優良配送を行う店舗に『配送認定ラベル』を付与することを目指すそうです」
楽天市場出店店舗向けに「楽天スーパーロジスティクス」が提供されている。3,980円以上送料無料のいわゆる39ショップの取り組みや、日本郵便とJP楽天ロジスティクス株式会社を設立したほか、ドローンによる配送実験も行うなど配送サービス向上に向けた取り組みはいくつかある。
そもそも楽天市場はさまざまな出店者が独自の店舗を構え、それぞれ配送を行ってきた。発送時期が異なる場合もあり、複数の店舗で購入した消費者は都度受け取りを行うことになっていた。比較対象とされるAmazonのPrime会員は配送サービスから始まっている。「フルフィルメント by Amazon」によって、出品者が異なる場合でも消費者はAmazonからまとめて受け取ることができた。
「楽天市場のサービスとして、商品ごとの配送日の表示や検索機能が提供されるのは画期的だと思います。その仕組みを実現するには『SKUプロジェクト』に対応していることが大前提となります。直近の大きな仕様変更であるSKU管理をきちんと行う必要があります」
2024年には店舗と商品に認定基準が設けられ、それが配送認定ラベルの付与に影響する形だ。認定基準として、出荷件数、納期厳守率、送料込みラインの導入などが検討されている。
「午前の注文については365日いつでも翌日の届け指定、午後なら翌々日届け指定を可能にする条件も基準とする案が出ていました。会社が営業していない土日祝日は出荷しない方針だった中小のEC事業者にとってはハードルが高めの基準です。自社配送が難しければ楽天スーパーロジスティクスを利用するように促す意図もあるのでしょう。楽天市場の方針に従って優良店舗であり続けようとさらなる投資を行うのか、たとえば自社サイトに力を入れるなど別の方向で努力するのか、戦略を問われるきっかけになると思います」