矢野経済研究所は、国内のゴルフ用品市場を調査し、製品セグメント別の動向、参入企業動向、新型コロナウイルスの影響を加味した将来展望を明らかにした。
2020年の国内ゴルフ用品市場規模(メーカー売上高ベース)は、前年比87.5%の2,321億2,000万円となった。マイナス要因は新型コロナウイルス感染拡大。2020年4月に第1回の緊急事態宣言が発出された中、3月から5月にかけてほとんどのゴルフ用品小売店が過去に経験のない大幅な売上減に直面した。幸いにして7月以降は急速に需要は回復したが、3月から5月にかけての売上減少分を補うには至らなかった。
調査元によれば、他のスポーツやレジャーとの比較では健闘と表現して差し支えのないレベルの減少にとどまったとのこと。その要因は次のとおり。
- ゴルフが、所謂「三密」にあたらない屋外型のアクティビティとして認知された
- それにより、コロナ禍で一時期ゴルフを自粛していたゴルファーの多くが比較的早いタイミングでゴルフを再開した
- 他のスポーツ・レジャーが物理的に実施不可能な中で、ゴルフに「白羽の矢」が立つ格好となり、若年齢層を中心とした「新規参入ゴルファー」が増加した
- 暫くの間、ゴルフを止めていた「休眠層」のゴルファーがゴルフを再開した
- 特別定額給付金が2020年に支給され、一部がゴルフ用品の購入に使われた
本調査で、2020年唯一プラス成長を果たしたカテゴリーが、その他ゴルフ用品(ティー・マーカー類、練習器具、コンペ商品・ギフト、携帯型飛距離測定器、その他)である。 成長のけん引役となったのが、携帯型飛距離測定器市場で、2020年も前年比115.8%の66億円と引き続きプラス成長を果たした。
成長要因としてゴルフ用品小売店からは、ゴルファーの中での携帯型飛距離測定器の「立ち位置の変化」を指摘する声が上がっている。これまでは、「自分の腕前では飛距離が分かっていてもその通り打てない」であるとか、「正確な飛距離を図った後にミスショットをしたら恥ずかしい」などという一種のプライドが、普及の阻害要因になっているというのが業界関係者の統一した意見であったが、徐々に「飛距離測定器を使ってゴルフをすることが “当たり前” 」という雰囲気が醸成されつつあるとのこと。そうした環境の変化に連動するように、これまではどちらかと言うとこれらデジタル機器の販売に対して苦手意識を持っていた小売店サイドも、積極的なMD展開及びセールストークを習得することによって、販売に対する苦手意識の克服に成功しているようであり、そうした心理面の変化も市場拡大の一因となっていると考察している。
2021年のゴルフ用品市場規模(メーカー売上高ベース)は、前年比117.6%の2,730億8,000万円と予測。これは、2018年以降で最も高い数値となっている。この市場規模予測はゴルフ用品メーカー各社からの売上高見込を最大の算出根拠としているが、メーカー各社とも2021年は「コロナ前の水準+αを目指す」という姿勢が明確になっている、ということから。
調査概要
- 調査期間: 2021月5月~8月
- 調査対象: ゴルフ関連企業(メーカー、卸売業、小売業、ゴルフ場、ゴルフ練習場、ゴルフ関連団体)
- 調査方法: 同社専門研究員による直接面談(オンライン含)、ならびにe-maiおよび郵送によるアンケート調査併用