矢野経済研究所は、国内のファッションアイテムのリユース(中古)市場を調査し、アパレル業界におけるリユース事業のビジネス形態別(BtoC、BtoCなど)動向、アイテム別動向、市場規模、今後の見通しなどを明らかにした。調査結果は、下記のとおり。
市場概況
同社は2019年の国内ファッションリユース(中古)市場を小売金額ベースで、前年比116.1%の7,200億円と推計した。
フリマアプリなど各種CtoCサービスの普及により、取引の利便性や認知度が高まり、個人が自身の所有物の売買取引を直接行う個人間(CtoC)取引が拡大。BtoCを中心とする流通小売業にとっては、特に中古買取における需要減などの影響を受けている。
そのほか、若年層を中心にフリマアプリを通じて、通常では中古買取のできない化粧品などの消耗品類も売買される習慣も根付きつつあり、また海外からの個人輸入品を売買するといったことも行われている。
こうした状況により、ファッション関連アイテムにおいても、これまで商品の独占販売など独自性を強みにしてきた問屋や中古小売業者といった商流から外れた商品取引が拡大してきている。
注⽬トピック
国内の流通⼩売市場、百貨店や⾼級ブランド品を主に扱う専⾨店などにとって、2019年も引き続き訪⽇外国⼈客によるインバウンド需要の動向が、売上の拡⼤・縮⼩にあたり重要な要素となっていた。観光庁「訪⽇外国⼈消費動向調査」では2019年の訪⽇外国⼈旅⾏消費額のうち買い物代は、前年⽐105.9%の1兆6,690億円だった。⽇本政府観光客局(JNTO)によると2019年の訪⽇外国⼈客数は同102.2%の3,188万⼈で伸び率が落ち込みつつも増加が続いたことで、買い物代の⾦額⾃体は2018年から増加に転じている。
しかし、訪⽇外国⼈客の消費全体に占める買い物代の⽐率は縮⼩が続いている。主要旅⾏客層である中国などからの旅⾏者は、団体旅⾏に代わり個⼈旅⾏へと旅のスタイルが移⾏しており、従来のような旅⾏会社の誘導する店舗での⼤量購買といった買い物の仕⽅から離れ、特にリピーター客などは体験を求める層が増えていると考えられる。また、中国における⼤量の⼟産物持込に対する規制強化など、外部要因でここ数年商品購⼊に対するニーズは⼤きく変わりつつあり、以前のような買い物を主な⽬的とした訪⽇外国⼈客層が新たに⽣じてくるとは考えがたい。
また、新型コロナウイルス感染の影響が⽇本国内で拡⼤しており、訪⽇外国⼈客数減少・臨時休業などによりインバウンド需要の恩恵を受ける百貨店などの⼩売業の売上⾼が⼤幅減となる⾒込み。観光消費回復への⽀援策や事業を打ち出した補正予算など政府の対応が注⽬されるが、⼩売業や旅⾏業などは影響が⾊濃く残る⾒通し。
将来展望
ファッション関連アイテムの中古商品の利⽤者数が今後も増えることや、メルカリなどCtoCサービス運営企業各社が⼆次流通における新たな施策を講じていくと⾒込まれることから、ファッションリユース市場は今後も伸びていく余地があると推察。ただし、2021年以降は2次流通の活性化にともない中古商品供給が増えるものの、伸⻑率は10%前後まで落ち着き、2022年の国内ファッションリユース市場を⼩売⾦額ベースで、9,900億円になると予測する。
調査概要
- 調査期間:2019年12⽉〜2020年2⽉
- 調査対象:ファッション関連アイテムおよび中古商品を事業として取り扱う企業、CtoCサービス運営企業
- 調査⽅法:同社専⾨研究員による直接⾯談、郵送アンケート調査、ならびに⽂献調査併⽤