矢野経済研究所は、国内アパレル市場を調査し、品目別や販売チャネル別の動向、アパレルメーカーや小売業などのアパレル産業の現況を明らかにした。調査結果は次のとおり。
市場概況
2023年の国内アパレル総小売市場規模(紳士服・洋品、婦人服・洋品、ベビー・子供服・洋品計)は前年比103.7%の8兆3,564億円で、3年連続で前年を上回った。
販売チャネル別では、百貨店や専門店における実店舗の回復が顕著であった。イベントなどの再開にともない入学式や成人式などのオケージョン需要が回復したことで、買い替えや新調の需要が増加し、実店舗利用も増加。なお、eコマースはコロナ禍中に急成長した分、その反動が見られ、成長率は鈍化傾向にある。
2023年アパレル業界の全体動向
大手アパレルの2023年業績動向を見ると、コロナ禍で受けたダメージから回復し攻めに転じる企業と、ダメージから回復せず構造改革を進めている企業に二分されている。
前者は新ブランドや新業態を開発・投入。新ブランドは従来ブランドよりも上の価格帯のブランドが多くなっている。コロナ禍で停滞していた上質なファッション需要を掘り起こしていると推察される。一方の後者は、経営効率の向上や不採算ブランドの撤退などを中心とした構造改革を進めている。
顧客への価格訴求力のあるアパレルテナントに押されて、構造改革を進めている企業はショッピングセンターを中心に出店意欲が減退。攻めに転じる企業は、従来よりも価格帯が上の新ブランドや新業態のテナント出店の好機とみて、出店を強化していく構図ができている。
将来展望
国内アパレル総小売市場規模(紳士服・洋品、婦人服・洋品、ベビー・子供服・洋品計)は、2025年頃まではコロナ禍前の市場規模の水準に向けて、回復基調で推移する見通し。
アパレル市場は、長期的には少子高齢化・人口減少の影響を受けて穏やかに減少するが、目下の原材料費の高騰や物流費の増加、人件費の上昇によって販売単価が上昇基調にあるため、落ち込み幅は当面抑えられる見込み。さらに上振れする可能性としては、労働賃金の上昇トレンドが継続し、一人当たり衣料品支出金額の減少に歯止めがかかることで、家計の衣料品支出額が増加するケースが想定される。
調査概要
- 調査期間:2024年7月~9月
- 調査対象:アパレルメーカー(総合アパレル、メンズアパレル、レディスアパレル、ベビー・子供アパレルほか)、小売業(百貨店、量販店、専門店、そのほか)、業界団体など
- 調査方法:同社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、郵送によるアンケート調査、ならびに文献調査併用