業務特化型クラウドカンパニーである米Infor(以下、インフォア)は、世界的な大手製パン材料メーカーであるZeelandia Groupが、AI(人工知能)ソリューションである「Infor Coleman」を導入したことを発表した。この新しいAI機能は、商品選択と価格戦略の精度とスピードを向上させ、市場の課題に対処しながらのサステナブルな事業成長を支援する。
同機能は、チェコ共和国にあるZeelandia社の施設ですでに導入されており、まもなくオランダ全土に展開され、その後はグループの全世界の事業へと展開されるとのこと。
Zeelandia社は、2017年からインフォアとともにデジタルトランスフォーメーションに取り組んでおり、ERPを食品・飲料業界向けクラウドERP「Infor CloudSuite Food&Beverage」に移行して、現在チェコ共和国とスロバキアで稼働している。Infor OSでは、Infor ColemanのAI機能の適用を含むイノベーションを通して、より大きな価値を企業にもたらすという。
世界的な大手製パン材料メーカーであるZeelandia Groupは、30ヵ国以上で事業を展開し、100ヵ国で商品を販売するなかで、かつてないほどの市場課題に直面していた。製パン材料の高騰や入手難の影響により、利益目標を達成しつつ長年の顧客との信頼関係も維持するには、新たな販売戦略と価格戦略が求められていた。グループが有する幅広い製品ポートフォリオと大規模な顧客基盤を考慮すると、目標を達成するためには組織のデジタルトランスフォーメーションが必要なのは明らかだった。
Zeelandia社はインフォアとともに、Infor ColemanのAI機能を活用し、人工知能にもとづく製品や価格に関するレコメンデーション生成の可能性を模索。Zeelandia社の営業チームでは、従来、どの商品を提案するか分析するために顧客と面談していたが、販売報告が手作業で行われるため、時間がかかる上にミスが起こりやすいということがわかっていた。また、顧客のニーズに応じた適切な商品を判断することは時として困難なプロセスであり、営業担当者と顧客の双方にとって時間の無駄になっていた。
Zeelandia社はInfor Coleman AIチームと連携して、顧客に提案すべき上位5つの商品を、成功確率の高い順に生成するソリューションであるInfor Product Recommenderを導入。Infor Birstのアナリティクスを使ったウェブ版とモバイル版ダッシュボードを通して閲覧でき、営業担当者が顧客を選択するだけで、おすすめの商品が表示される。営業担当者は1日最大5件の顧客とのミーティングがあるため、Product Recommenderを使うことで事前準備作業の約3分の1を削減することが可能となった。
AIによる商品レコメンデーションを導入したことで、Zeelandia社は次のメリットが得られた。
- 顧客への商品提案の準備にかかる時間が、30分から5分へと83%削減
- インテリジェントで顧客のニーズを捉えた商品提案により、カスタマーエクスペリエンスが向上
- 取引あたりの収益および顧客あたりのウォレット内のシェアが増加
- 新商品や使用期限が迫っている商品に関するコンバージョンが改善
次に、Zeelandia社とインフォアは価格設定の課題を解決した。原価が常に変動し、品物が入手困難だったため、より頻繁に商品価格を調整する必要に迫られていたが、同社は、数千の顧客に対する数千点もの商品の価格設定をスプレッドシートで管理しており、時間がかかる上にミスが起こりやすく、状況に応じた機敏な価格調整ができないという課題を抱えていた。
インフォアの協力で価格設定にもAIレコメンデーションを導入したことにより、Zeelandia社は次のメリットが得られた。
- 適正価格の提示とその経緯の把握により、顧客ロイヤリティが向上
- 最適な価格設定で収益目標を達成
- 人工知能にもとづく価格設定を活用して、時間とコストを削減
Zeelandia社でのイノベーションに関する取り組みは続いており、Infor ColemanのAI機能をCRMデータに適用することで、「顧客」または「機会」のレコメンデーションの提供に活用することを計画している。今後は、さらなる効率化を図るため、インフォアが提供するハイパーオートメーションのアーリーアダプターになる予定となっている。