矢野経済研究所は、国内の化粧品市場を調査し、製品カテゴリー別や流通経路別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
1.市場概況
2020年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響でインバウンド(訪日外国人客)需要がほぼ消失したことに加え、テレワークの拡大や外出自粛などで国内需要が落ち込んだことにより、2020年度の国内化粧品市場規模(メーカー出荷金額ベース)は、前年度比84.4%の2兆2,350億円となった。
2020年度の化粧品市場をカテゴリー別にみると、スキンケア市場が構成比47.9%(1兆700億円)と最も高く、メイクアップ市場が同17.9%(3,990億円)、ヘアケア市場は同19.5%(4,350億円)、男性用化粧品市場は同5.4%(1,210億円)、フレグランス化粧品市場が同1.2%(260億円)と続いた。
2.注目トピック
アフターコロナ、ウィズコロナ時代の化粧品市場の展望
2020年度の化粧品市場は、緊急事態宣言発出の影響によって国内需要が減少したことに加え、インバウンド需要がほぼ消失したため、市場規模は大きく縮小した。
過去の経済危機、1997年のアジア通貨危機と2008年のリーマン・ショックという経済危機後の化粧品業界の変遷を見てみると、「市場構造の変革」と「新市場の創出」が起こった点がいずれも共通している。
1998年~1999年にはドクターズコスメの台頭やM&Aの活発化、大手化粧品メーカーを中心に海外戦略が進展した。また、通信販売などネットビジネスが台頭し、卸の大型合併なども起こった。
2009年~2010年では異業種からの市場参入が活発化し、エシカルな消費ブームの高まりで自然派・オーガニック化粧品が本格的に市場を拡大したほか、テレビ通販の台頭や業界全体での中国市場への進出が加速した。今回も経済危機を契機として「市場構造の変革」や「新市場の創出」など化粧品産業に大きな変革が起きるものと予測する。
3.将来展望
2021年度後半よりコロナ禍が徐々に沈静化するとともに、国内の化粧品需要も徐々に回復し始めており、2021年度の化粧品市場規模を前年度比101.6%の2兆2,700億円と予測。 また、数年遅れる形で訪日外国人客も徐々に増加することが見込まれ、インバウンド需要もゆるやかに回復していくとみている。
調査要綱
- 調査期間: 2021年6月~9月
- 調査対象: 化粧品ブランドメーカー、受託製造・OEM企業、輸入商社、化粧品原料メーカー・商社
- 調査方法: 同社専門研究員による直接面談(オンライン含)、ならびに電話調査併用