サブスクが儲からないのは本当か?
本格的にサブスクに新規参入する事業者が増えている一方で、儲からない・撤退するなどという不安な事例も見聞きしたことがあるという方もいるでしょう。実際のところ、サブスクは本当に儲からないサービス設計なのでしょうか?
サブスクはやり方次第で儲かる
サブスクは、儲かる手法による商品設計づくりがされているという条件さえ満たせば成功する可能性があると言えます。儲かる商品設計づくりをするためには、ユーザー・ファンにとってお得かつ便利で、今ある悩みが解決されている設計であることが大切です。
一方で、その本質を誤って解釈してしまい、「サブスクは儲からない」と撤退する事業者がいるという事実もあります。また、最近では音楽配信などの無形エンターテインメントのサブスクサービスにおいても儲からないサービスだと嘆く事例が登場するほどです。
サブスク頼みのミュージシャンも痛手を受ける
音楽のサブスクと言えば、「AppleMusic」や「Spotify」が知られています。インターネットに接続することにより音楽を楽しめるというもので、無料から購入制まで多岐にわたります。CDなど音楽メディアを購入せずとも音楽を楽しめることから、ユーザーにとってはありがたいサービスです。
その一方で、 アーティストにとっては儲からないものであることがイギリスのBBCニュースの報道により明らかとなりました。
イギリスBBCニュースによれば、ストリーミングサービスにおいて100円稼ぐためにおおよそ1万回の再生が必要とのこと。音楽ストリーミングサービスにおける1万回再生は知名度が高いアーティストでも難しいとされているだけでなく、1万回再生の利益がレーベルや発売元に分割されてしまうことで、アーティストたちの手元に入る金額が100円ほどと少ないものになるようです。
1万回以上再生されるアーティストたちが嘆くほどなのですから、知名度の低いアーティストへの支払い額がさらに少ないことは明らかです。
サブスクについて簡単におさらい
「サブスク」という単語はわかるけれども、サービス概要を深く知らないという方もいるのではないでしょうか。改めてもう一度、簡単におさらいしましょう。
サブスクとは?
サブスクとは、雑誌などの定期購読や年間購読など購読サービスを意味した「サブスクリプション」の略語です。日本は2016年ごろから、音楽サービスなどの無形サービスだけでなく、飲食の定期購買やモノ・知識のシェアリングエコノミーサービスなど幅広い業態で採用されています。
事業者がサブスクを導入するメリット
事業者側がサブスクを導入する最大のメリットは、次のとおりです。
- サービス計画が立てやすい
- 売れ残りや売り上げなど経営陣がストレスを抱えにくい
- 企業の業績のアップダウンが緩やかな傾向にある
事業が拡大するにつれ、消費者はサービス・商品内容が当たり前となってしまう特性から、企業は売上や利益率に冷や冷やしながら経営をしなければなりません。
サブスクという商品設計を新たに導入することで企業側は登録者の数だけ定期的な収入が入りやすくなり、事業投資も計画的にしやすくなります。
また、サブスクに興味を持ったユーザーは定期的にサービスを利用してくれるだけでなく、ファンを構築しやすいなど企業側にも多くのメリットがあるのです。
なぜサブスクが儲からないと感じるのか?5つの失敗例から紐解く
サブスクは企業側も消費者側もウィンウィンの関係を築けるように見えますが、サブスクを導入する側はなぜ失敗してしまうのでしょうか。
サブスクの定義を理解しきれていない
サブスクには、リピーターであるお客様に向けて「自社商品・製品を定期的に使ってください」という定義があります。リピーターのお客様は、事業者のサービス設計や従業員・商品などが好きで「使い続けたい」「利用し続けたい」と考えている熱烈なファンです。
しかし、その定義を理解せずに誰に対しても展開しまうと、どうしても違う方向に走ってしまいがち。
- 定期的な利用があるものか
- アンケートや反響などユーザーの気持ちをデータ化し、活用できているか
というサブスクの定義をきちんと見定めながら導入することで、失敗を防げるでしょう。
ユーザーをおいてきぼりにする商品設計
ユーザーをおいてきぼりにする商品設計は失敗しやすいと言えます。サブスクは、サービスを利用する消費者がお得で便利かどうかだけでなく、抱えている悩みや不便さを解決しなければ成功は難しいでしょう。サブスクの商品・サービス設計は、常にユーザー目線で考えなければなりません。
価格設定が適切でない
価格が安いだけのサブスクも失敗しやすいでしょう。サブスクを導入するにあたり、定義を把握していない事業者はクーポンや食べ放題・使い放題などと言った「消費者へのお得感だけ」を前面に押し出したサブスクを導入しがちです。
サブスクの定義である「お得」という部分を満たしているものの、ただ安いことだけにお客様が満足してしまう状況は避けたいものです。
間違ったサブスク戦略
既存のリピーターやヘビーユーザーといったメインのユーザー層を無視し、サブスクで新規顧客を獲得するという戦略は失敗しやすいと言えます。
リリース後、わずか半年でサブスク市場から撤退した「紳士服 AOKI」のスーツレンタルサービスや、利用者の獲得に苦戦している「TOYOTA」の新車サブスク「KINTO」が例として挙げられます。
サブスクは、既存の顧客やファンに対して最大級のサービスを提供することで成功しやすくなるものです。しかし、新規顧客にも同じような割引価格を提示してしまうと既存顧客やリピーターへのサービスの差別化ができなくなるでしょう。
自分にだけ都合の良いサブスク設計
サブスクの定義を無視した一番ひどい商品設計や考え方が、自社にだけ都合の良いサービスのサブスクです。例えば、大手携帯電話会社のように、簡単に解約できないように「縛り期間」を設けるという事例が当てはまるでしょう。
「縛り」があることで、企業はユーザーのサービス離れを回避できるだけでなく、縛り期間に応じた利用料金が発生するため収益が中期的に安定します。
しかし、「縛り」というサブスクは、サブスクが本来持つ「利用者と一緒にサービスを作る」という良さが崩壊しているだけでなく、残念ながらサブスクの定義から逸脱していると言えます。
まとめ
サブスクは、事業者と利用者がウィンウィンの関係にあってこそ、成立するサービスです。「サブスクをやれば儲かるんじゃないか」「サブスクをやれば人が集まってくるんじゃないか」など、サブスクの本質を無視し、安易な感覚だけでスタートさせてしまうと、成功どころか利益もほど遠いでしょう。
サブスクは、商品やサービスを使い続けたいと考える消費者の気持ちを大切にした設計が大切です。
今回ご紹介のサブスクの本質や失敗例を参考に、ユーザーと一緒に作り上げるサブスクを設計してみてください。