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物流業界のDXに求められるのは「競争」と「協業」 TSUNAGUTEが見たコロナ禍の変化と実情を語る


 EC需要増による荷量の増加、労働人口の減少、進む高齢化。さまざまな観点から、物流業界は早急なDX化が求められている。物流倉庫のトラック受入を管理するバース予約や伝票の電子化といったサービス提供を通して、業界各社のデジタル推進に貢献する株式会社TSUNAGUTE 代表取締役 春木屋悠人さんに、この1年の物流現場の変化とこれからについて聞いた。

企業と企業をつなぎ物流業界の改善を目指すTSUNAGUTE

 SIer勤務を経て、2015年に日本パレットレンタル(JPR)へ転職し、物流業界に足を踏み入れた春木屋さん。パレットの共同利用・共同回収を推進し、業務効率化を図る同社で働く中で、物流現場のアナログな現状を目の当たりにし、「ITの力で物流を変えたい」という思いで、2018年にTSUNAGUTEを創業したと言う。

「当社では、入出荷予約受付サービス『telesa-reserve』と、伝票運用効率化サービス『telesa-delivery』というふたつのサービスを提供しています。いずれも主にメーカーから卸、メーカーから小売と言った、BtoBの川上と呼ばれる部分のものの流れをデジタル化することで、業務効率化、労働環境の改善に貢献したいと考え、開発したサービスです」

株式会社TSUNAGUTE 代表取締役 春木屋悠人さん

 物流は、書いて字のごとく「もの」を「流す」ことで成立するビジネスである。ドローンやロボティクスによるデジタル化が進みながらも、物流ビジネスはまだまだ人の手を使ったオペレーションが前提となっているのが現状だ。人と人が対面して荷物を手渡しするのみならず、荷物の中身や送付先などを示す伝票も、紙を使ったやり取りが主流となっている。

「いまだに紙と紙のバトンリレーを行っているのが、物流業界の現状です。コロナ禍においては、接触におけるリスクも存在しますし、人が介在することでもちろんコストも発生しています。たとえば、エンドユーザーのもとに届けるまでの工程が現状は8つ存在しているが、デジタル化が進めば4工程に減らすことができる。すると、人と人との接触を減らしながら効率化が可能となります。伝票の電子化は、こうした作業工程の見直しに大きく作用すると考えています」

 近年、物流需要が増加するとともに、ドライバーや物流倉庫で働く人々の長時間労働も業界全体の大きな課題となっている。現場に目を向けると、物流センターの周辺には荷おろしを待つトラックが長蛇の列を作り、待機時間が多く発生していたり、荷物と同時に届いた紙の伝票を確認した上で倉庫スタッフがその日の業務量を把握したり作業工程を決めたりと、現代においては非効率的と言える業務フローが多数存在しているのが現実だ。

「これでは労働効率を上げることは難しいですし、地球環境問題やSDGsの視点からもふさわしいやりかたとは言えません。すでにBtoC-ECの領域では、請求書や納品書の電子化が進んでいますが、BtoB-ECで扱う伝票に関しては、メーカー、3PL、運送会社の中でも一次請け、二次請け、三次請け……とさまざまな企業が介在することもあり、共通のシステム導入・フロー整備に大きな課題が存在しています。企業をまたいでデータを共有し、情報を分断させない。ゆくゆくは、複数企業が関与する物流フローにおいても、荷物の在り処や配送状況をリアルタイムで把握できるようにし、精緻な情報把握を実現することを目指しています」

 自社で管理する倉庫内のフロー整備や効率改善は、個社単位で行うことが可能だが、企業という枠を越えた途端に手を伸ばすことができない領域として分断されてしまう。こうした企業と企業の隙間にTSUNAGUTEが入り込むことで、全体最適を実現する。それが、同社の目指す理想図だ。

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この記事の著者

ECzine編集部 木原 静香(キハラシズカ)

立教大学現代心理学部映像身体学科卒業後、広告制作会社、不動産情報サイトのコンテンツ編集、人材企業のオウンドメディア編集を経験し、2019年に翔泳社に入社。コマースビジネスに携わる方向けのウェブメディア「ECzine」の編集・企画・運営に携わる。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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